「秩序と本能」
第6話になります。ようやくなんか楽しくなってきた感じです。
闇の奥深く。
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地面に影が落ちている。
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月は出ているはずだった。
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それでも。
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光は、届かない。
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その中心に。
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“それ”はいた。
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黒い巨躯。
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伏せたまま、動かない。
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だが。
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金の瞳だけが、開いている。
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「……面白い」
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低く、漏れる。
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視線の先。
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森の外。
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遠く。
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そこに、“何か”を見ている。
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風が、わずかに流れる。
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その瞬間。
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気配が増えた。
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音はない。
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だが。
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そこに現れている。
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灰色の巨体。
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翼を持つ、人型。
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ガーゴイル。
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「……報告にない存在だ」
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低く、重い声。
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感情はない。
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ただ、事実を置く。
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フェンリルは、視線だけを向ける。
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「見ていたのか」
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「観測していた」
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短い返答。
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間。
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「排除対象だ」
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結論。
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迷いはない。
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フェンリルは、わずかに笑う。
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「早いな」
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「基準に照らせば明白だ」
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「既存の枠に収まらない」
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「ならば、消す」
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淡々とした論理。
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揺れはない。
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フェンリルは、鼻で笑う。
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「つまらん」
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一言。
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空気が、わずかに軋む。
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「価値がある」
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続ける。
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「あれは歪んでいる」
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「だから面白い」
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ガーゴイルは沈黙する。
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数瞬。
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「……不要だ」
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変わらない。
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「不確定要素は排除する」
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「それが秩序だ」
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フェンリルは、ゆっくりと立ち上がる。
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地面が、わずかに沈む。
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「秩序、ねえ」
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興味なさげに呟く。
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そして。
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わずかに口角を上げる。
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「強いかどうかだ」
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間。
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金の瞳が、鋭く細まる。
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「それ以外は――全部どうでもいい」
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空気が、軋む。
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その一言で。
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価値観が、断ち切られる。
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ガーゴイルの視線が、鋭くなる。
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「貴様は逸脱している」
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「自覚はある」
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フェンリルは笑う。
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「だからいい」
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その瞬間。
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空気が落ちた。
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重い。
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深い。
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押し潰すような圧。
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二体の動きが止まる。
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見上げない。
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だが、感じている。
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「……騒ぐな」
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声。
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どこからともなく。
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響く。
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低く。
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底のない音。
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ガーゴイルが、即座に膝をつく。
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「……失礼しました」
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頭を垂れる。
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フェンリルは、動かない。
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ただ、目を細める。
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「興が削がれるな」
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小さく呟く。
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返答はない。
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ただ、圧だけがある。
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やがて。
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それは、消えた。
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何もなかったかのように。
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静かに。
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ガーゴイルが立ち上がる。
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「……命は変わらない」
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低く言う。
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「排除対象だ」
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フェンリルは、視線を外す。
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森の奥。
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遠くを見る。
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「好きにしろ」
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興味なさげに言う。
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だが。
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次の言葉は、違った。
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「……あれは俺が見る」
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静かに。
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確かに。
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意思を込めて。
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ガーゴイルが動く。
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「許可は――」
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「いらん」
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被せる。
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金の瞳が細くなる。
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「先に殺した方が勝ちだ」
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笑う。
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獣のそれ。
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ガーゴイルは沈黙する。
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やがて。
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「……逸脱だな」
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小さく呟く。
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フェンリルは、もう見ていない。
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すでに、歩き出している。
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森の奥へ。
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あの“妙な存在”へ。
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静かに。
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だが、確実に。
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距離を詰める。
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そして。
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わずかに、笑った。
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「逃げるなよ」
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誰にともなく。
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だが、確かに向けられた言葉。
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次の瞬間。
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気配が消える。
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残ったのは、沈んだ空気だけ。
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――狩る側が、動いた。
まだ終わらないのか…
ルクス君の好きな食べ物は焼き魚です。意外と和風…




