表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/23

「揺らぐ刃と見えない牙」

第5話です。追手であるセリアとルクスにはどんな関係が…少し分かるかもなお話です。

風が、止んでいた。



 葉が揺れない。



 擦れる音すら、遠い。



 息をするたび、空気だけがやけに重い。



(……しつこいな)



 ルクスは歩みを緩めない。



 気配は消している。



 足跡も、痕跡も残していない。



 それでも。



(振り切ったはずだろ)



 気配が、離れない。



 一定の距離を保ったまま。



 正確に、追ってくる。



(……ただの相手じゃねえ)



 逃げ道をなぞるように、詰めてくる気配。



 迷いがない。



「――そこだ」



 声が落ちる。



 同時に。



 空気が裂けた。



 一直線の斬撃。



 ルクスは散る。



 地面へ流れ、軌道を外す。



 刃が通り過ぎる。



 遅れて、地面が抉れた。



(速え……!)



 即座に戻る。



 形を繋ぎ直し、距離を取る。



 視線の先。



 女が立っている。



 剣を構えたまま。



 セリア。



 隙がない。



 ただ立っているだけで、間合いを支配している。



「逃げるな」



 温度のない声。



「抵抗をやめろ」



「やめたら終わりだろうが」



 吐き捨てる。



 軽く言ったつもりだった。



 だが。



(見えてる)



 分散も、再構成も。



 全部、読まれている。



 セリアが踏み込む。



 無駄がない。



 一直線。



 ルクスは広がる。



 木へ。



 地面へ。



 空気へ。



 逃がす。



「――無駄だ」



 剣が振られる。



 本体だけを、正確に捉える。



(……っ!)



 咄嗟に引く。



 だが、浅く当たる。



 衝撃。



 形が崩れる。



「くっ……!」



 無理やり戻す。



 距離を取る。



(削られてる……)



 じわじわと、確実に。



 長引けば終わる。



「……やはりな」



 セリアが呟く。



「普通ではない」



「そりゃどうも」



 返す。



 だが、余裕はない。



 セリアは動かない。



 剣を構えたまま。



 ただ、見ている。



 観察している。



(……なんだよ、その目)



 違和感。



 敵を見るそれじゃない。



 一歩、踏み出す。



「お前は――」



 言いかける。



 その瞬間。



 ルクスの動きが止まる。



(……なんだ)



 視界の中の女。



 構え。



 立ち方。



(……知ってる)



 引っかかる。



 理由はない。



 だが。



 確かに、“覚えがある”。



 セリアの目が、わずかに揺れる。



「……似ている」



 小さく漏れる。



「は?」



 ルクスが眉をひそめる。



 だが。



 次の瞬間。



 セリアの気配が変わる。



 迷いを、断ち切るように。



「……やはり危険だ」



 結論。



「ここで拘束する」



「だからそれ無理だって――」



 踏み込み。



 さっきより速い。



 剣が迫る。



 避ける。



 間に合わない。



 咄嗟に。



 形を歪める。



 流す。



 刃が、すり抜ける。



「……!」



 セリアの目が見開かれる。



(今のは……)



 自分でも分からない。



 だが。



 避けた。



 確実に。



 その一瞬。



 止まる。



 互いに動かない。



 視線だけが交差する。



「……お前」



 セリアが呟く。



 その時。



 空気が、沈んだ。



 重い。



 息が詰まる。



 背筋が、勝手に強張る。



(……なんだ、これ)



 さっきまでとは違う。



 “圧”がある。



 森が、軋む。



 音はないのに、そう感じる。



 セリアも気づく。



 わずかに視線が逸れる。



 判断。



 速い。



「……撤退だ」



 短く言う。



「は?」



 思わず声が出る。



 だが、セリアはもう構えていない。



 剣を下げる。



「命令だ」



 それだけ。



 感情はない。



 だが。



 一瞬だけ。



 視線が戻る。



 ルクスへ。



「……次は」



 わずかに、間。



「迷わない」



 背を向ける。



 森の奥へ消える。



 気配が遠ざかる。



 やがて、完全に消える。



 残されたのは。



 重い空気だけ。



 ルクスは、その場に立つ。



「……なんだよ、それ」



 理解が追いつかない。



 確実に、殺す気だった。



 それなのに、引いた。



(……それより)



 さっきの圧。



 あれは。



 セリアじゃない。



 もっと重い。



 もっと深い。



 息が浅くなる。



(……まだ終わらないのかよ)



 小さく吐く。



 その時。



 背後に、“いる”。



 気づいた時には、もう遅い。



 振り返る。



 闇の中。



 輪郭だけが、そこにある。



 見えない。



 だが、分かる。



 視線だけが、刺さる。



 獣。



 底のない、何か。



「……逃げないのか」



 低い声が落ちる。



 ルクスは動かない。



 逃げる意味がないと、分かっている。



 息を吐く。



「……逃げても無駄だろ」



 言いながら、構える。



 身体が軋む。



 直感が告げている。



 今までとは、違うと。



 夜は、まだ終わらない。

いや分かんねえのかよ!ってなったよねぇ〜。引っ張っちゃってごめんよぉ〜。もう少しで分かるかもしれませんし分からないかもしれません(計画がどんどんズレていくことに少し焦り)。では第6話で会いましょう

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ