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最弱テイマーは総てを溶かす  作者: コクトー
揺らぐ世界は誰の為に
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50/52

受け入れた先

50話です。これを見た貴方が幸せになれますように

境界色の光が狭間を染める。



セリアの力は増していた。



感情が揺れるほどに。



迷いが深くなるほどに。



境界は応える。



剣を握る手が震える。



怒り。



悲しみ。



不安。



全部が力になっていた。



「ぁぁああっ!!」



セリアが踏み込む。



剣が振るわれる。



これまでで最も速く。



最も重い一撃。



カインは受ける。



氷が砕ける。



腕が痺れる。



だが。



退かない。



セリアが叫ぶ。



「どうして!」



再び剣が振るわれる。



「どうしてそんな顔してられるのよ!」



「どうして前に進めるのよ!」



「どうして……!」



その叫びは。



カインへ向けたものじゃない。



自分自身へ向けたものだった。



何故自分は進めないのか。



何故立ち止まっているのか。



その答えが見つからなかった。



カインは静かに息を吐く。



そして。



笑った。



「知らねぇよ」



セリアの動きが止まる。



カインは肩を竦めた。



「そんなもん俺だって分かんねぇ」



氷が広がる。



狼の牙が覗く。



銀色の光が身体を包む。



「今でも怖ぇし」



「今でも後悔してる」



「今でも自分が嫌になる」



それは嘘のない言葉だった。



だが。



カインは続ける。



「でもな」



氷狼の力が膨れ上がる。



かつて暴走した力。



人を傷付けた力。



失敗作の証。



その全てを。



カインは拒絶しなかった。



銀色の毛並みが腕を覆う。



爪が伸びる。



瞳が獣の色へ変わる。



それでも。



そこにいるのはカインだった。



「俺は俺だ」



静かな言葉。



だが。



何よりも強かった。



「失敗作だろうが」



「怪物だろうが」



「全部ひっくるめて俺なんだよ」



セリアの目が見開かれる。



目の前にいるのは。



人間ではない。



だが。



誰よりも人間らしかった。



カインは構える。



銀狼の力を纏いながら。



真っ直ぐセリアを見る。



「だから来い」



「お前の全部をぶつけてみろ」



セリアの胸が揺れる。



王国に捨てられた自分。



騎士になれなかった自分。



境界に侵された自分。



全部。



嫌いだった。



認めたくなかった。



だが。



目の前の男は。



それを受け入れて立っている。



なら。



自分は。



どうしたい。



セリアは剣を握る。



強く。



迷いごと握り締めるように。



「……行くわよ」



境界色の光が溢れる。



狭間が震える。



空間が歪む。



セリアの力が限界まで高まる。



カインも踏み込む。



氷。



銀狼。



全てを纏い。



前へ。



そして。



二人の一撃が激突した。



轟音は無かった。



ただ。



世界が静かに揺れた。



境界色の光。



銀色の光。



二つがぶつかり合う。



押し合う。



競り合う。



そして。



僅かに。



銀色の光が前へ出た。



セリアの剣が弾かれる。



手から離れる。



くるくると回りながら。



狭間へ落ちていく。



セリアの身体も崩れた。



膝をつく。



呼吸が乱れる。



力が抜けていく。



負けた。



分かっていた。



だけど。



不思議と悔しくなかった。



セリアは俯く。



そして小さく笑った。



涙を零しながら。



「……ずるい」



カインが眉をひそめる。



「何がだ」



セリアは顔を上げる。



涙で滲んだ視界のまま。



笑った。



「そんなの見せられたら」



「言い訳出来なくなるじゃない」



沈黙。



セリアは拳を握る。



今度は逃げないように。



離さないように。



そして。



震える声で呟いた。



「私も」



「帰りたい」



その言葉に。



カインはようやく笑った。



「だったら帰ればいい」



あまりにも簡単に。



当たり前のように。



だからこそ。



セリアは泣いてしまった。



狭間の世界で。



ようやく一つ。



答えを見つけたのだった。

50話でした。帰れる場所があるって幸せな事ですね。

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