「選ばれなかった者達」
47話です。ちょっとお休みしていましたが今日からまた上げていきたいと思います
魔王が開いた裂け目は、静かに揺れていた。
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白でもない。
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黒でもない。
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世界そのものが剥がれ落ちたような空間。
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ルクスはその先を見つめる。
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「……行くのか」
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隣でカインが鼻を鳴らした。
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「ここまで来て帰る気か?」
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ルクスは小さく笑う。
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その背後では、少女の姿をした魔王が静かに二人を見ていた。
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相変わらず感情の読めない瞳。
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だが。
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ほんの少しだけ。
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何かを期待しているようにも見えた。
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「見てきなさい」
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魔王が静かに言う。
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「あなた達が選んだ世界を」
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ルクスはその言葉を胸に刻む。
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そして。
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一歩を踏み出した。
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カインも続く。
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境界の向こうへ。
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その瞬間。
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空気が変わった。
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呼吸は出来る。
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身体も動く。
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だが。
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息苦しい。
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胸の奥へ何かが沈んでいくような感覚。
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カインが顔をしかめた。
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「……気持ち悪ぃ場所だな」
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境界の先は、どこまでも曖昧だった。
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空もない。
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地面もない。
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あるはずなのに輪郭がぼやけている。
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歩いている感覚はある。
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だが本当に進んでいるのか分からない。
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ルクスは周囲を見渡した。
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不思議な場所だった。
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知らないはずなのに。
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どこか懐かしい。
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その時。
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前方の空間が揺らぐ。
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桃色の髪。
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柔らかな笑み。
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そして。
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その隣に立つ巨大な影。
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ガーゴイル。
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少女は微笑んだ。
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「初めまして」
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ルクスが構える。
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カインも警戒を強めた。
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少女は続ける。
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「ノクスに選ばれた人」
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その言葉に。
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ルクスの眉が僅かに動く。
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優しい声だった。
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だが。
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そこには確かな棘があった。
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「……誰だ」
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ルクスが問う。
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少女は静かに一礼する。
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「私はリリス」
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ガーゴイルが低く唸る。
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しかしリリスはその腕へ優しく触れた。
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「大丈夫」
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「この子達はまだ聞いてくれる」
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まるで家族へ話しかけるみたいだった。
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ルクスは違和感を覚える。
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この巨大な魔物を。
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彼女はまるで一人の人間のように扱っていた。
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リリスは周囲へ視線を向けた。
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「ここは狭間」
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「選ばれなかったもの達が流れ着く場所」
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その瞬間。
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空間が微かに揺れる。
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誰かの泣き声。
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誰かの怒鳴り声。
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誰かの後悔。
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一瞬だけ。
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確かに聞こえた。
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カインが顔をしかめる。
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「……だからか」
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「何がだ」
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ルクスが聞く。
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カインは辺りを睨みながら答えた。
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「ここ、嫌いなんだよ」
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珍しく重い声だった。
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リリスが静かに笑う。
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「当然よ」
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「ここには選ばれなかった者達の想いが残っているもの」
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「失敗作」
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「不要な存在」
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「忘れられた存在」
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その言葉に。
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カインは何も返さなかった。
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ただ拳を握る。
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リリスはガーゴイルへ触れながら続けた。
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「私は助けたかった」
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「だから一つにしたの」
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ガーゴイルの瞳が揺れる。
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悲しそうに。
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苦しそうに。
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ルクスはその姿を見つめる。
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助けた。
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本当にそうなのだろうか。
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ガーゴイルから感じるのは。
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怒り。
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悲しみ。
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苦しみ。
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そんな感情ばかりだった。
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「それで」
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ルクスが口を開く。
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「救われたのか」
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リリスの笑顔が止まる。
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ほんの一瞬。
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本当に僅かな沈黙。
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だが。
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彼女は再び微笑んだ。
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「もちろん」
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その答えは。
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どこか空っぽに聞こえた。
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その時だった。
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空間の奥から足音が響く。
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一歩。
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また一歩。
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誰かが近づいてくる。
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カインの表情が変わる。
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「……おい」
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ルクスも振り返る。
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そして。
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息を呑んだ。
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そこにいたのは。
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セリアだった。
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だが。
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以前とは違う。
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銀色だった髪の一部が淡く色づいている。
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瞳の奥には境界色の光。
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身体の周囲を不安定な粒子が漂っていた。
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それでも。
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間違いなくセリアだった。
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「セリア……!」
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ルクスが思わず声を上げる。
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セリアは立ち止まる。
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そして。
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少しだけ寂しそうに笑った。
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「来たのね」
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その声は確かにセリアのものだった。
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だからこそ苦しい。
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ルクスが前へ出ようとする。
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だが。
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肩を掴まれる。
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カインだった。
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「待て」
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低い声。
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ルクスが振り返る。
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カインはセリアを見つめていた。
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かつての自分を見るような目で。
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「ルクス」
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静かに言う。
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「こっちは俺がやる」
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ルクスの目が揺れる。
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カインは小さく笑った。
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「昔の借りだ」
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「今度は俺の番だろ」
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セリアが剣を抜く。
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境界色の光が刃を包む。
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カインの周囲へ氷が広がる。
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二人が向かい合う。
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その一方で。
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重い足音が響いた。
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ガーゴイル。
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巨大な身体が前へ出る。
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空間全体が震える。
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リリスが静かに微笑んだ。
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その視線はルクスへ向いている。
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「さあ」
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優しい声。
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だがどこか狂気を孕んでいた。
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「選ばれなかった者達の声を聞いて」
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次の瞬間。
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ガーゴイルが咆哮する。
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怨嗟。
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悲鳴。
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怒り。
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無数の魂の叫びを乗せながら。
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ルクスは拳を握った。
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そして。
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二つの戦いが幕を開けた。
47話でした。この作品ももう少しで終わりになりますのでもう少しだけお付き合いください




