「王国オルド」
44話です。またまたセリア視点に戻ります。何度も申し訳ない
視界がぼやける。
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揺れている。
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地面なのか。
世界なのか。
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セリアには分からなかった。
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ただ。
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自分が歩いていることだけは分かる。
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隣には、あの女――リリス。
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後ろからは重い足音。
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ガーゴイル。
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王都への道を、
三人は静かに進んでいた。
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不気味だった。
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途中で何度も王国兵とすれ違った。
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だが誰も剣を向けない。
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止めようともしない。
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まるで。
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最初から許可されているみたいに。
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セリアが小さく呟く。
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「……何故」
「止めないの」
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リリスは柔らかく笑った。
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「だって」
「呼ばれているもの」
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その言葉に、背筋が冷える。
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王都が見えてきた。
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見慣れた城壁。
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懐かしいはずの景色。
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なのに。
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まるで知らない場所へ来たみたいだった。
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門兵達はセリアを見る。
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驚き。
困惑。
恐怖。
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色んな感情が混ざっている。
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だが誰も声をかけない。
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ただ道を開ける。
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セリアは唇を噛む。
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「……何なのよ」
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返事はない。
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王都へ入る。
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街は静かだった。
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静か過ぎた。
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人々は俯き、
決められたみたいに歩いている。
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笑い声がない。
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生きているのに、
どこか止まって見えた。
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セリアの胸がざわつく。
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その時。
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胸の奥が脈打った。
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「っ……!」
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思わず胸を押さえる。
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熱い。
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リリスが横目で見る。
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「近づいてるわね」
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「……何に」
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リリスは答えない。
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ただ静かに前を見る。
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やがて。
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王城へ辿り着く。
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騎士達が並んでいる。
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だが誰も動かない。
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セリアはその異様さに息を呑んだ。
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リリスが歩き出す。
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迷いがない。
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まるで、この城を知り尽くしているみたいに。
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長い廊下。
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階段。
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地下へ。
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降りるほど空気が重くなっていく。
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そして。
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巨大な扉の前で、リリスが止まった。
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「入って」
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セリアは睨む。
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だが身体は震えていた。
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嫌な予感が止まらない。
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ゆっくり扉を押し開く。
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その瞬間。
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眩い光が地下を照らした。
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「……っ」
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セリアが目を見開く。
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そこにあったのは。
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巨大な核だった。
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白銀の結晶。
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脈打つように光を放っている。
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まるで生きているみたいに。
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その周囲には無数の魔導装置。
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光の線。
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王国全体へ繋がる巨大な術式。
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セリアは言葉を失う。
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「……何、これ」
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静かな足音が響く。
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奥の闇から、一人の男が姿を現した。
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レオンハルト。
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王国の頂点。
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彼は疲れた目で核を見上げる。
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「王国を支えるものだ」
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低い声。
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感情を押し殺した声だった。
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セリアが振り向く。
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「……これが?」
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レオンハルトは静かに頷く。
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「人は弱い」
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「恐怖する」
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「だから秩序が必要になる」
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その言葉に、
どこか聞き覚えのある不気味さを感じる。
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セリアは拳を握った。
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「そのために」
「ルクス達を狙ったの?」
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レオンハルトは少しだけ目を伏せる。
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「境界へ近づき過ぎた」
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「放置すれば、王国は崩れる」
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セリアの呼吸が乱れる。
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理解したくなかった。
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王国が。
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自分が信じていた場所が。
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こんなものに依存していたなんて。
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その時だった。
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核が強く脈打つ。
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白い光が地下へ広がる。
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次の瞬間。
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空中へ映像が浮かび上がった。
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ルクス。
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カイン。
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歪んだ空間の中で、魔王と対峙している。
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セリアの目が見開かれる。
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「……見てるの?」
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レオンハルトは静かに答える。
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「観測している」
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「王国を守るためにな」
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その言葉と同時に。
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セリアの胸が強く脈打った。
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「っ……ぁ……!」
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膝が崩れる。
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熱い。
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身体の奥で、
何かが目覚めようとしている。
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リリスが静かに近づいた。
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そして。
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苦しむセリアを優しく抱き支える。
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「ほら」
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耳元で囁く。
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「もう戻れない」
44話でした。




