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最弱テイマーは総てを溶かす  作者: コクトー
揺らぐ世界は誰の為に
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42/52

選び取る炎

42話です。またルクスとカインの場面に戻ります

炎が空を裂く。



轟音。



赤熱した大地が砕け、熱風が吹き荒れる。



イグニスは止まらなかった。



巨大な炎が渦を巻き、まるで生き物みたいに牙を剥く。



「ならば見せろ!!」



轟炎。



「その選択の熱を!!」



炎の獣がルクスへ襲いかかる。



だがルクスは逃げなかった。



足を止める。



真正面から、その炎を見る。



「来るぞ!!」



カインが氷を叩き込みながら叫ぶ。



白銀の氷狼が咆哮する。



炎と氷が激突。



蒸気が爆ぜた。



だが。



炎は止まらない。



イグニスの炎は以前より重かった。



ただ燃やすだけじゃない。



“意志”そのものだった。



ルクスの頬を熱風が裂く。



だが。



目は逸らさない。



イグニスが踏み込む。



炎の剣。



ルクスも前へ出た。



赤い炎と、蒼い炎がぶつかる。



轟音。



地面が割れた。



イグニスの目が細くなる。



「まだ迷っているな」



炎が押し込まれる。



ルクスの足元が砕けた。



「お前の炎は」


「優しすぎる」



「それでは世界は変わらん!!」



次の瞬間。



爆炎。



ルクスごと炎が飲み込まれる。



カインが叫ぶ。



「ルクス!!」



炎の中。



ルクスは歯を食いしばっていた。



熱い。



苦しい。



それでも。



消えたくはなかった。



消させたくもなかった。



その時だった。



脳裏に浮かぶ。



森。



スライム達。



セリア。



カイン。



ミリス。



全部、自分で選んできた。



誰かに決められたものじゃない。



胸の奥が熱を持つ。



炎が揺らいだ。



ルクスが顔を上げる。



「……違う」



炎が広がる。



だがそれは、

以前みたいに喰らう炎ではなかった。



赤を拒絶しない。



押し潰さない。



混ざり合いながら、

なお燃え続ける炎。



イグニスの目が見開かれる。



「……その炎は」



ルクスが前へ踏み込む。



炎がぶつかる。



だが。



今度は弾けなかった。



赤と蒼。



二つの炎が混ざり合う。



境界みたいな色へ変わっていく。



イグニスが初めて押された。



大地が軋む。



「馬鹿な……!」



ルクスが叫ぶ。



「変わるのは!!」



炎が揺れる。



「誰かに決められることじゃない!!」



轟炎。



「自分で選ぶんだ!!」



その瞬間。



炎が一気に膨れ上がった。



境界色の炎が、

イグニスの炎を飲み込む。



だが。



燃やし尽くさない。



包み込む。



静かに。



熱を受け止めるみたいに。



イグニスの動きが止まった。



揺れる炎の中で、

ルクスを見つめる。



長い沈黙。



やがて。



イグニスがゆっくり炎の剣を下ろした。



荒れ狂っていた炎が、

静かに消えていく。



カインが息を吐いた。



「……終わったか」



イグニスは答えない。



ただ、ルクスを見ていた。



そして。



ほんの少しだけ笑った。



「以前の貴様なら」



「この炎を喰らっていた」



風が吹く。



赤い炎が静かに揺れる。



「今は違う」



「貴様は、自ら選び燃えている」



ルクスは黙って聞いていた。



イグニスはゆっくり振り返る。



炎の向こう。



空間が歪んでいる。



「進め」



「魔王様は、この先におられる」



カインが眉をひそめる。



「……いいのかよ」



イグニスは空を見上げた。



「貴様らが何を選ぶのか」



「少し興味が湧いた」



その言葉に。



ルクスは少しだけ笑った。



カインも肩を竦める。



「炎野郎にしちゃ上出来だ」



「貴様ほどではない、氷狼」



短いやり取り。



だがそこには、

もう以前みたいな殺意はなかった。



ルクス達は炎の先へ歩き出す。



歪む空間。



その奥にいる存在を感じながら。



背後では。



赤い炎が、静かに燃え続けていた

42話でした。今日は1話だけ掲載して明日からまた2話掲載に戻ります。

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