「揺らぐ帰路」
40話です。今回はセリア視点から始まります
森を抜ける風が、セリアの髪を揺らした。
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王都への道。
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懐かしいはずの景色だった。
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だが。
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足は妙に重かった。
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遠くに見える王国旗。
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以前なら、それだけで安心できた。
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けれど今は違う。
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セリアは無意識に視線を逸らす。
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「……何やってるのよ、私」
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小さく自嘲する。
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王国騎士。
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それが自分だったはずなのに。
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今は、王国へ近づくほど胸の奥がざわついていた。
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その時。
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道の先から複数の足音が響く。
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セリアの目が鋭くなる。
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反射的に木陰へ身を隠しかけて――止まった。
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「……違うでしょ」
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小さく息を吐く。
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逃げる必要なんてない。
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そう言い聞かせるように、道へ戻る。
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やがて現れたのは、王国騎士団だった。
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鎧。
王国紋章。
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見慣れた姿。
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だが向こうは、セリアを見るなり足を止めた。
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「……隊長?」
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若い騎士が呆然と呟く。
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「生きて……」
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別の騎士が慌てて駆け寄った。
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「セリア隊長!」
「ご無事だったんですね!」
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敵意はない。
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純粋な安堵。
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その顔を見て、セリアの胸が少しだけ痛む。
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「ええ」
「なんとかね」
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騎士達が安堵したように息を吐く。
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だがその直後。
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一人の騎士が周囲を見回した。
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「……隊長」
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「ご一緒だった二人は?」
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空気が少し止まる。
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セリアは答えない。
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その沈黙だけで、騎士達の表情が変わった。
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警戒。
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だがまだ、剣は抜かない。
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その時だった。
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騎士の一人が腰の魔導端末を押さえる。
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淡い光。
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通信。
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次の瞬間。
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騎士の顔色が変わった。
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「……は?」
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周囲の騎士達も息を呑む。
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「どうしたの?」
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セリアが問いかける。
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騎士は困惑したまま、震える声で答えた。
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「王都からです」
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「命令が来ました」
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嫌な予感。
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セリアの背筋が冷える。
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騎士はゆっくり読み上げた。
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「セリア・アルヴェインを保護後」
「同行危険対象二名の確保を最優先とせよ」
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沈黙。
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森の音が遠くなる。
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騎士達が顔を見合わせた。
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「……待て」
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「まだ報告してないぞ」
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「何故分かった……?」
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困惑。
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理解できていない。
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それはセリアも同じだった。
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何故。
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どうして王国は知っている。
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ルクス達が一緒だったことを。
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まだ誰も報告していない。
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なのに。
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まるで“見ていた”みたいに。
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セリアの指先が小さく震える。
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王国が分からなくなる。
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自分が信じてきた場所が、
急に知らないものへ変わっていく。
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その時だった。
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森の奥から、重い音が響いた。
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騎士達が一斉に振り向く。
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「何だ……?」
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木々の影。
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そこに。
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巨大な黒い影が立っていた。
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石みたいな身体。
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赤く光る瞳。
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「……ガーゴイル」
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誰かが震える声で呟く。
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騎士達が一斉に剣を抜いた。
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だが。
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その肩へ、細い指がそっと触れる。
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闇の奥から、一人の女が姿を現した。
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淡い桃色の髪。
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柔らかな笑み。
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だが、その瞳だけは妙に冷たかった。
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女は静かにセリアを見つめる。
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その瞬間。
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セリアの胸の奥で、何かが脈打った。
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「見つけたわ」
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優しい声。
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なのに。
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焚き火へ水を落とされたみたいに、
背筋が冷えた
40話でした。現れるガーゴイルと謎の少女。果たして目的は




