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最弱テイマーは総てを溶かす  作者: コクトー
揺らぐ世界は誰の為に
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39/52

「炎の対話」

39話です。

轟炎が岩場を飲み込んだ。



熱風。



砕けた岩が宙を舞う。



カインが舌打ちしながら跳ぶ。



「やっぱこうなるかよ!」



ルクスも炎の中を滑るように抜けた。



赤熱した地面。



焦げた空気。



その中心で、イグニスは静かに立っている。



燃える瞳が二人を見据えていた。



「魔王様を知りたいと言ったな」



低い声。



「ならば示せ」



炎が揺らぐ。



「力を」



熱が膨れ上がる。



「その熱を」



空気が軋む。



「炎を」



次の瞬間。



巨大な火柱が空へ噴き上がった。



ルクスは咄嗟に腕を上げる。



熱。



けれど。



以前とは違った。



「……っ」



炎が流れ込んでくる。



暴れるような熱。



怒り。


執念。


誇り。



まるで感情そのものだった。



イグニスが踏み込む。



「何故戦わん」



炎の剣が振り下ろされる。



ルクスは受け止める。



熱が弾けた。



だが。



ルクスは押し返さなかった。



イグニスの目が細くなる。



「……何故返さない」



ルクスは炎を受け止めたまま答える。



「話しに来たから」



一瞬。



イグニスの炎が揺れた。



だが次の瞬間。



爆炎。



ルクスごと炎が飲み込まれる。



カインが氷を叩き込む。



白い氷と赤い炎がぶつかり、蒸気が爆ぜた。



「おいルクス!」



炎の奥。



そこに立っていたルクスは、静かに息を吐いていた。



身体の周囲で、炎が揺れている。



だが。



燃えていない。



まるで熱だけを包み込むみたいに、静かに流れていた。



イグニスが眉をひそめる。



「……鎮めたのか」



ルクス自身も少し驚いた顔をしていた。



「分からない」



「でも」


「怒ってる炎だったから」



その言葉に、カインが目を見開く。



イグニスは黙ったままルクスを見る。



炎が揺れる。



以前のルクスなら。



力を奪った。



飲み込み、利用した。



だが今は違う。



受け止めている。



イグニスが低く言う。



「甘いな」



次の瞬間。



炎が地面を走った。



轟音。



赤い獣みたいな炎がルクスへ喰らいつく。



カインが氷壁を展開する。



だが一瞬で溶けた。



「っ、馬鹿火力が!」



イグニスは止まらない。



「理解を望むなら」


「何故そこまで弱い」



「貴様の炎には覚悟が足りん」



炎が迫る。



ルクスは避けない。



静かに、その炎へ手を伸ばした。



瞬間。



赤い炎が揺らぐ。



燃え盛る熱が、少しだけ静かになる。



イグニスの瞳が僅かに見開かれた。



「……何をした」



「分からない」



ルクスは正直に答える。



「でも」



炎を見つめる。



「お前の炎」


「ずっと苦しそうだった」



空気が止まった。



カインですら黙る。



イグニスの炎が、不安定に揺れた。



「……貴様」



その声には、僅かな苛立ちが混じっていた。



だが。



それだけではなかった。



迷い。



理解できないものへの戸惑い。



イグニスは炎を纏い直す。



「炎とは意思だ」



「迷う炎は脆い」



「燃やし尽くしてこそ完成する」



ルクスは首を傾げた。



「でも」


「燃やしたら無くなるだろ」



「……何?」



「混ざった方が、残る」



その瞬間。



ルクスの炎が揺れた。



赤でもない。


青でもない。



境界みたいな、曖昧な光。



イグニスの目が細くなる。



「……変わったな」



炎がぶつかる。



熱風が世界を揺らす。



だが以前とは違った。



殺意だけじゃない。



そこには確かに、“問い”があった。



イグニスは炎を放ちながら呟く。



「以前の貴様らは」


「ただ生き延びようとしていただけだ」



「今は違う」



ルクスは炎の中で立っている。



イグニスはその姿を見つめた。



「思想の熱がある」



轟炎。



だがその声は、以前より静かだった。



まるで。



確かめるように。

わかりあうための戦い。時には傷つき傷つけてわかり合えることもあると思います。

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