「それぞれの火」
38話です。よろしくお願いします
朝のミリスの里は穏やかにスライムが行き交いしていた。
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霧は薄く、湖面には淡い光が揺れている。
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セリアは荷物を背負い直し、小さく息を吐いた。
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里の入口。
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そこにはルクスとカインが立っていた。
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誰も、気の利いた言葉は言わない。
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けれど。
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それが今の三人には、ちょうどよかった。
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セリアが二人を見る。
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「じゃあ、本当に行くわよ」
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「おう」
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「ん」
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短い返事。
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でも、それだけで十分だった。
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少しの沈黙。
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やがてセリアが苦笑する。
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「なんか最後くらいもっとこう……」
「あるでしょ」
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カインが鼻で笑った。
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「今さら何言ってんだ」
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「それもそうね」
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セリアは小さく肩を竦める。
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だが。
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別れようとした瞬間。
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ふと、その手が止まった。
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王国騎士の紋章。
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それを握る指先が、僅かに震えている。
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カインは気づいていた。
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「……まだ怖いか」
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セリアは少しだけ黙る。
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そして観念したみたいに笑った。
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「当たり前でしょ」
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「王国に戻れば」
「昔の仲間達と戦うかもしれない」
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「全部、敵になるかもしれない」
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風が吹く。
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セリアは視線を落とした。
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「正直、今すぐ逃げたいくらいよ」
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その声は、弱かった。
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けれど。
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逃げなかった。
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カインは少しだけ目を細める。
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「安心した」
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「……またそれ?」
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「震えなくなってたら」
「お前じゃねえ」
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セリアは小さく笑う。
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「何それ」
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「怖がってるってことは」
「ちゃんと考えてるってことだ」
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「前のお前なら」
「多分、自分を誤魔化してた」
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セリアは少し黙る。
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そして、小さく頷いた。
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「……そうかもね」
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ルクスが静かに言う。
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「でも、お前は行くんだろ」
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セリアは顔を上げる。
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真っ直ぐな目。
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迷いはある。
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でも、その奥にはちゃんと覚悟があった。
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「ええ」
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「確かめてくる」
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王国を。
自分を。
信じてきたものを。
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カインが肩を竦める。
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「じゃあ死ぬなよ」
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「そっちこそ」
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セリアはルクスを見る。
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「イグニスに会いに行くとか、本当に馬鹿なんだから」
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「知りたいからな」
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「だからってもっと他に方法あるでしょ……」
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カインが苦笑する。
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「俺もそう言った」
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少しだけ笑い声。
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けれど。
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それはほんの一瞬だった。
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セリアはゆっくり二人を見る。
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「じゃあね」
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その言葉と共に、歩き出す。
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霧の向こうへ。
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二人はその背を黙って見送った。
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やがて姿が見えなくなる。
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しばらくして。
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カインが小さく息を吐いた。
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「……行ったな」
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「ん」
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静かな返事。
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カインは空を見る。
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「さて」
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「俺達も動くか」
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「イグニス探し?」
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「他にねえだろ」
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二人はミリスの里を後にした。
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一方。
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セリアは一人、森を進んでいた。
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静かだった。
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静かすぎた。
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足音しか聞こえない。
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今までなら。
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隣でルクスが変なことを言って、
カインが呆れていた。
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でも今は違う。
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誰もいない。
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セリアは無意識に振り返る。
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当然、そこには誰もいなかった。
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「……寂しいわね」
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小さく漏れた声は、森へ溶けた。
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その夜。
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セリアは森の中で野営をしていた。
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焚き火が小さく揺れている。
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慣れているはずだった。
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騎士として、野営経験なんていくらでもある。
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けれど。
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火を見つめていると、不思議と落ち着かなかった。
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木の枝をくべる。
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火が少し強くなる。
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そこでふと気づく。
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「……あいつ、毎回これやってたのね」
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カインの顔が浮かぶ。
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セリアは少しだけ笑った。
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その時。
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遠くで魔物の遠吠えが響く。
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反射的に剣へ手が伸びる。
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だが。
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誰も起こしてくれない。
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誰も「大丈夫だ」とは言わない。
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全部、一人だった。
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セリアは焚き火を見つめる。
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小さく揺れる炎。
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まるで今の自分みたいだった。
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消えそうで。
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でも、まだ燃えている。
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一方その頃。
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荒れ果てた岩場。
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そこには黒く焼けた跡が残っていた。
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ルクスが足を止める。
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「炎」
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カインも辺りを見る。
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以前より静かだった。
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燃やし尽くすような荒さがない。
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まるで、“待っている”みたいな炎。
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カインが目を細める。
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「……来るの分かってたのか?」
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その瞬間。
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熱風が吹き抜けた。
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赤い炎が空を裂く。
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そして。
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炎の中から、一人の男が現れる。
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イグニス。
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燃えるような赤い瞳が、二人を見下ろしていた。
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「来たか」
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低い声。
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ルクスは真っ直ぐ見返す。
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「会いに来た」
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イグニスは少しだけ目を細める。
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「魔王様の命だ」
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「ここで待てと仰った」
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カインが眉をひそめる。
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「……それだけじゃねえだろ」
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炎が、小さく揺れた。
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イグニスはしばらく黙る。
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やがて低く呟いた。
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「貴様らは不純だ」
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「なのに、燃え尽きない」
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その声には、僅かな迷いが混じっていた。
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ルクスが一歩前へ出る。
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「魔王のことを知りたい」
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イグニスの炎が揺らぐ。
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だが次の瞬間。
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轟炎。
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巨大な炎が二人へ襲いかかった。
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カインが舌打ちする。
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「やっぱこうなるかよ!」
38話でした。大体トイレの中でアイディアが浮かんでそれを取り入れようとするとまた話が変な方向に行くので取り入れるのは少しだけにしています。




