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最弱テイマーは総てを溶かす  作者: コクトー
第四章 境界の外
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34/52

「ミリスの里」

34話です。最近暑くなってきましたね。

風が止んでいた。



レイス達との戦闘からしばらく。


三人は霧の前で足を止めていた。



誰もすぐには口を開かなかった。



セリアは俯いたまま、自分の手を見ている。



後輩へ向けて剣を振った感触が、まだ残っていた。



その沈黙を破ったのはカインだった。



「……普通じゃねえな」



セリアが顔を上げる。



「何が」



カインは霧の奥を睨んでいた。



「王国の連中がここまで来れたことだ」



「追跡されたんじゃないの?」



セリアの声には迷いが混じる。



だがカインは首を振った。



「あいつらも迷ってた」



「……え?」



「気づかなかったか?」


「周囲確認しながら動いてた」



確かに。



レイス達は一直線に来たわけじゃない。



何かを探すように周囲を警戒していた。



カインが低く続ける。



「境界が薄くなってる」



セリアが眉をひそめた。



「境界……」



ルクスが霧を見ながら呟く。



「……近づいてる」



「何が?」



「分からない」



いつもの返答。



だが今回は、少しだけ違った。



ルクス自身、本当に“何か”を感じているようだった。



カインがちらりと見る。



「お前、最近変だぞ」



ルクス:


「前からだろ」



「そういう意味じゃねえ」



短く返す。



空気が少し重くなる。



その時。



ぷるん。



小さな音。



透明なスライムが霧の前へ現れる。



昨日の個体。



スライムは一度ルクスを見ると、霧の中へ跳ねた。



振り返る。



まるで、“来い”と言うみたいに。



ルクスは迷わず進もうとする。



セリアが慌てて止めた。



「待ちなさい!」


「普通もっと警戒するでしょ!」



「してる」



「してるように見えないのよ!」



カインが小さく笑う。



「諦めろ」


「こいつはこういうやつだ」



「なんでそんな慣れてるのよ……」



だが。



カインも止めなかった。



むしろ静かに周囲を警戒している。



三人は霧の中へ足を踏み入れた。



空気が変わる。



冷たいわけじゃない。



温かいわけでもない。



妙に“柔らかい”。



霧の中では音が遠かった。



足音。


呼吸。



全部ぼやける。



セリアが思わず呟く。



「……何ここ」



答える者はいない。



どれくらい歩いただろうか。



突然。



霧が晴れた。



そこには。



静かな里が広がっていた。



木々の間に小さな家々。



透き通った水。



そして。



無数のスライム達。



セリアが息を呑む。



「……っ」



スライム達は敵意を向けない。



ただ静かにこちらを見ている。



まるで歓迎しているみたいに。



ルクスは辺りを見回した。



「落ち着くな」



「私は落ち着かないんだけど……」



カインは目を細める。



「妙な場所だ」



その時。



視線を感じた。



三人が同時に振り向く。



そこに、一人の少年が立っていた。



年齢はルクスと同じくらい。



だが。



その身体は少し透けている。



腕の輪郭が揺れていた。



スライムみたいに。



少年はルクスを見る。



口を開く。



「る……く……す」



言葉が崩れる。



セリアの背筋が震えた。



少年は嬉しそうに近づこうとする。



だが足元が崩れた。



液体みたいに。



カインの目が細くなる。



「……実験体か」



その言葉に。



セリアの顔色が変わる。



さらに奥。



大きな影が揺れた。



それは巨大なスライムだった。



だが。



どこか“人”の気配がある。



巨大スライムはルクスを見る。



そして。



少しだけ嬉しそうに揺れた。



ルクスが小さく呟く。



「……俺と同じだ」



その瞬間。



静かな声が響いた。



「違う」



三人が振り向く。



白い少女が、そこに立っていた。

34話でした。こっから書くのが更に楽しくなってます

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