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最弱テイマーは総てを溶かす  作者: コクトー
三章 灰と火
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30/52

「違和感の正体」

30話です

雨は止んでいた。


空気だけが少し冷たい。



焼けた森を抜けながら、三人は静かに歩いていた。



いつもなら、誰かが適当に喋る。



でも今日は違った。



理由は分かっている。



魔王。



あの白い少女の姿が、まだ頭から離れない。



セリアが小さく息を吐く。



「……魔王って、何なの」



ぽつりと落ちた言葉。



カインが前を向いたまま答える。



「分かんねえ」



即答だった。



セリアが眉をひそめる。



「え?」



「俺達幹部ですら、よく分かってねえんだよ」



風が吹く。


焼けた木々が揺れる。



カインは少し考えてから続けた。



「イグニスは強い」



「でも、あれは違う」



少し間。



「“そういう存在”なんだ」



セリアは黙る。



説明になっていない。


なのに、少しだけ分かってしまう。



あれは強いとか弱いじゃなかった。



“いる”。



ただそれだけで、空気が変わる。



セリアがぽつりと言う。



「……怒ってる感じじゃなかった」



カインが苦く笑う。



「だから怖えんだよ」



敵意がない。


殺気もない。



なのに、本能だけが警鐘を鳴らしていた。



ルクスが歩きながら言う。



「でも、悪いやつには見えなかった」



沈黙。



セリアが止まる。



「は?」



カインが振り返る。



「お前マジで言ってる?」



「言ってる」



即答。



セリアが頭を抱える。



「いや、あれ魔王よ!?」



「知ってる」



「知っててその感想なの!?」



ルクスは少し考える。



「気になってるだけに見えた」



カインが呆れた顔をする。



「そこなんだよな、お前怖えの」



セリアも頷く。



「分かる」



ルクスは納得していない顔をしていた。



しばらく歩く。



その後、カインがぽつりと口を開く。



「昔の俺らは、魔王に従うのが当然だった」



セリアが見る。



カインは前を向いたまま続ける。



「逆らうとか、考えたこともねえ」



「イグニスなんか特にな」



あの畏敬の目。



セリアは思い出す。



“完成している”。



イグニスは確かにそう言った。



セリアが小さく呟く。



「でも、王国は魔王を倒そうとしてる」



その瞬間。



カインが少しだけ黙った。



空気が変わる。



「……本当にそうか?」



セリアの足が止まる。



「え?」



カインはそれ以上すぐには喋らなかった。



焼けた地面を踏みながら、低く言う。



「王国の連中、何か隠してる」



「昔から違和感はあった」



セリアが眉をひそめる。



「違和感?」



「実験体」



短い返答。



「俺だけじゃない」



「他にもいた」



風が吹く。



「失敗したやつもな」



セリアの顔色が変わる。



王国は、人を守る場所だ。



そう教わってきた。



でも。



フェンリル。



カイン。



目の前に、その“違和感”がいる。



ルクスがぽつりと言う。



「だから逃げたのか」



カインが少し笑う。



「半分正解」



「もう半分は、お前だ」



ルクスが首を傾げる。



「俺?」



「ああ」



カインは空を見る。



「お前、王国の連中と違ったからな」



「力を見ても、“使える”とか“危険”とか言わなかった」



少し間。



「変なやつだよ、お前」



ルクスは少し考える。



「そうか?」



セリアとカインが同時に言う。



「そう」



少しだけ空気が緩む。



でも。



セリアの胸の中には、小さな棘が残っていた。



王国は、本当に正しいのか。



魔王は、本当に倒すべき存在なのか。



そして。



ルクスは、何なのか。



その夜。



焚き火の前。



ルクスだけが起きていた。



指先に、小さな炎を出す。



ゆらゆら揺れる。



そこへ。



小さなスライムが現れた。



透明。


静か。



ルクスが小さく呟く。



「……ノクス」



スライムが少しだけ揺れる。



返事はない。



でも。



どこか、魔王と似た空気を感じた。



ルクスは少しだけ目を細める。



炎とスライムが、静かに揺れていた。

30話でした〜

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