「境界がほどけるとき」
メガフラエッテ強過ぎる…
というわけで第3話です。
洞窟の外に出た瞬間、空気が変わった。
湿った土の匂いに、わずかに鉄が混じる。
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「いたぞ!」
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声が走る。
距離は近い。
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ルクスは息を整えた。
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(……来たか)
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足元に気配がある。
小さく、散っている。
それが、意識の中で繋がっていく。
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点が増える。
重なり、広がる。
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自分の外側に、感覚が生まれる。
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「試す」
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短く呟き、光の中へ出た。
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三人。
剣士、弓、魔法。
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「……ガキか」
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剣士が言う。
構えは崩れない。
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「ただのガキじゃねぇな」
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弓がすでに狙っている。
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「いいから焼けよ!」
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魔法が詠唱に入る。
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矢が放たれる。
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「っ――」
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体を捻る。
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「ぐっ……」
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肩をかすめる。
熱が残る。
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「動きは悪くない」
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剣士が踏み込む。
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「だが――一人だ」
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(……違う)
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地面の振動。
草の揺れ。
視界の外。
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繋がる。
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(いる)
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「一人じゃない」
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剣が振り下ろされる。
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「右、三歩」
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体が先に動く。
刃が空を切る。
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剣士の目がわずかに動く。
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距離が詰まる。
速い。
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(守る)
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思考より先に、体が動く。
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スライムが前に出る。
集まる。
盾の形になる。
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――既視感。
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「焼けろ!」
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火球。
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一瞬で。
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消えた。
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「……っ」
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感覚が抜ける。
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空白。
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(違う)
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遅れて理解する。
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(まとめるな)
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散らす。
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広げる。
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繋げる。
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(見える)
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位置。
動き。
次。
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「連携してる……?」
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弓が呟く。
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「足元を狙え」
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剣士が即座に返す。
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(早い)
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スライムが削られる。
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感覚が欠ける。
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「っ……」
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穴が増える。
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「終わりだ!」
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熱が膨らむ。
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火球。
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(間に合わない)
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「――ミズ」
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水が広がる。
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火が触れる。
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白が弾ける。
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「なっ……!?」
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視界が消える。
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(分かる)
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足音。
呼吸。
位置。
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全部、ある。
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一人じゃない。
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水を広げる。
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その上に、薄く重ねる。
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踏む。
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滑る。
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「なっ――」
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崩れる。
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絡む。
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一瞬、止まる。
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踏み込む。
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拳に感触。
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吸って、弾く。
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「っ……!」
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一撃。
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剣士が崩れる。
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「まだだ!」
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弓。
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見えている。
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だが。
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足が滑る。
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「っ……!」
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間に合わない。
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前に出る影。
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音はない。
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感覚だけが消える。
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――重なる。
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(……違う)
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それでも。
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(繋ぐ)
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考えない。
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動く。
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蒸気の中を踏み込む。
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音はほとんどない。
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ただ。
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鈍い衝突音が、短く続いた。
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――三度。
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やがて、静かになる。
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風が戻る。
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白がほどける。
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三人は、地に伏していた。
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もう、立ち上がる気配はない。
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ルクスは、立っている。
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「……はぁ……」
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息を整える。
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足元が揺れる。
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少しだけ、目を伏せる。
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「……ありがとな」
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誰にともなく。
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顔を上げる。
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さっきまでとは違う視界。
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「……次は、もっと上手くやる」
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歩き出す。
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個であり。
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群である。
第3話でした。次回は視点が変わります。お話のもう一人の中心人物が現れます。ご期待ください♪




