「契約」
ポケモンチャンピオンズ楽しくて書きながらずっとやってました。ドリュウズちゃんメガシンカしてもちっちゃくて可愛いね。
洞窟の奥は、静かだった。
いや――静かすぎた。
外では、あれだけの破壊音が響いていたというのに、ここには風の音すら届かない。
ルクスは壁に手をつき、荒い呼吸を繰り返していた。
⸻
「……はぁ……っ、は……」
⸻
肺が焼けるように痛い。
足も、腕も、まともに動かない。
それでも。
⸻
(逃げきった……のか……?)
⸻
振り返る。
暗闇。
追ってくる気配は、ない。
⸻
だが――
⸻
(……ノア)
⸻
胸の奥が、軋んだ。
思い出す。
笑っていたスライム。
いつも一番近くにいた、小さな青。
その名前を、最後に呼んだとき。
――返事はなかった。
⸻
「……くそ」
⸻
拳を握る。
力が入らない。
⸻
「……っ」
⸻
悔しさが、遅れてやってくる。
あの勇者。
あのパーティ。
笑っていた。
踏み潰した。
あっさりと。
⸻
(守れなかった)
⸻
歯を食いしばる。
⸻
(俺は……弱い)
⸻
最低ランク。
その言葉が、頭の中で何度も反響する。
⸻
その時だった。
⸻
「……違うな」
⸻
声。
⸻
ルクスは反射的に顔を上げた。
⸻
「誰だ……!」
⸻
奥の闇。
何もないはずの場所に――
“それ”はいた。
⸻
水のように、揺れている。
だが、水ではない。
形を持ちながら、定まらない。
⸻
巨大なスライム。
⸻
その中心に、ひとつの“意志”があった。
⸻
「弱い、か」
⸻
声は静かだった。
だが、確かに“響く”。
⸻
「それは結果だ」
⸻
「原因ではない」
⸻
ルクスは、言葉を失った。
⸻
「……なんだよ、お前」
⸻
問いかける。
喉が乾いている。
⸻
「私は、スライムの女王」
⸻
わずかに、間を置く。
⸻
「――ノクスだ」
⸻
その名が、洞窟の中で揺れた。
⸻
ルクスは息を呑む。
⸻
(スライムの……女王……?)
⸻
ありえない。
そんな存在、聞いたこともない。
⸻
「お前は、面白い」
⸻
ノクスが言う。
⸻
「最低ランクとされながら」
⸻
「スライムと“繋がっている”」
⸻
⸻
ルクスの心臓が跳ねた。
⸻
「……何が言いたい」
⸻
⸻
「選択だ」
⸻
ノクスの体が、わずかに広がる。
⸻
「死ぬか」
⸻
一拍。
⸻
「繋がるか」
⸻
⸻
空気が、張り詰める。
⸻
ルクスは黙った。
⸻
(繋がる……?)
⸻
その言葉に、違和感がある。
だが。
⸻
(……死ぬのは、簡単だ)
⸻
さっきまでの戦いを思い出す。
何もできなかった。
守れなかった。
⸻
このまま戻っても。
⸻
(また同じだ)
⸻
⸻
ノクスが、静かに続ける。
⸻
「お前は異常だ」
⸻
「本来、テイマーは“従える”」
⸻
「だが、お前は違う」
⸻
「“共有している”」
⸻
⸻
ルクスの指先が、わずかに震える。
⸻
「……だからなんだ」
⸻
⸻
「だから、可能性がある」
⸻
ノクスの声は、変わらない。
⸻
「私と、お前」
⸻
「繋がれば――」
⸻
一瞬。
⸻
「“上”に届く」
⸻
⸻
その言葉に。
ルクスの中で、何かが引っかかった。
⸻
(上……?)
⸻
だが、それ以上に。
⸻
(……守れるのか)
⸻
思い浮かぶのは、ノア。
そして、これから出会うかもしれない存在。
⸻
「……強く、なれるのか」
⸻
絞り出すように言う。
⸻
ノクスは、少しだけ間を置いた。
⸻
「保証はしない」
⸻
⸻
「だが」
⸻
⸻
「変わることはできる」
⸻
⸻
静かな答えだった。
⸻
嘘はない。
だが、優しさもない。
⸻
⸻
ルクスは、目を閉じる。
⸻
(変わる……か)
⸻
今のままじゃ、何も守れない。
それは、もう分かっている。
⸻
だったら。
⸻
(……やるしかねぇだろ)
⸻
⸻
目を開く。
⸻
「乗る」
⸻
⸻
短く言った。
⸻
⸻
ノクスの体が、わずかに揺れる。
⸻
「いいだろう」
⸻
⸻
「契約を結ぶ」
⸻
⸻
その瞬間。
⸻
空気が変わった。
⸻
ノクスの一部が、ゆっくりとルクスへと伸びる。
⸻
「動くな」
⸻
⸻
触れる。
⸻
冷たい。
だが、嫌ではない。
⸻
⸻
次の瞬間。
⸻
流れ込んできた。
⸻
「――っ!?」
⸻
⸻
視界が揺れる。
⸻
感覚が、増える。
⸻
水。
振動。
空気。
⸻
“自分ではないもの”が、自分の中に入ってくる。
⸻
「……ぐっ……!」
⸻
⸻
「拒否するな」
⸻
ノクスの声。
⸻
「受け入れろ」
⸻
⸻
歯を食いしばる。
⸻
(これが……繋がるってことか……!)
⸻
⸻
やがて。
⸻
すべてが、静まる。
⸻
⸻
ルクスは、ゆっくりと目を開けた。
⸻
世界が、違って見えた。
⸻
足元。
小さなスライムが、いる。
⸻
(……分かる)
⸻
動き。
感情。
位置。
⸻
まるで、自分の一部のように。
⸻
⸻
「成功だ」
⸻
ノクスが言う。
⸻
⸻
ルクスは、拳を握る。
⸻
さっきまでとは違う。
力が、通る。
⸻
⸻
「……これが」
⸻
⸻
「“繋がる”だ」
⸻
⸻
静かに、息を吐く。
⸻
⸻
その時。
⸻
洞窟の外から、音がした。
⸻
足音。
⸻
複数。
⸻
⸻
「……来たな」
⸻
ノクスの声。
⸻
⸻
ルクスの目が細くなる。
⸻
(あいつらか)
⸻
⸻
逃げるか?
⸻
違う。
⸻
⸻
ゆっくりと、立ち上がる。
⸻
⸻
「試すぞ」
⸻
⸻
ノクスの声と同時に。
⸻
スライムたちが、わずかに動いた。
⸻
⸻
ルクスは、一歩踏み出す。
⸻
⸻
「……今度は」
⸻
⸻
目に、わずかな光。
⸻
⸻
「守る」
⸻
⸻
洞窟の出口へ。
⸻
新しい“繋がり”と共に。
という事で第二話です。次回も楽しみにしてね〜♪
一番好きなポケモンはバンギラスです




