表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱テイマーは総てを溶かす  作者: コクトー
三章 灰と火
PR
27/52

「馴染む炎」

27話です。イグニス戦も大詰めといったところ。

銀狼が、大地を踏みしめた。


静かな咆哮。


吹雪が広がる。



その向こうで、炎狼が牙を剥く。


赤と銀。


二匹の獣が向かい合う。



イグニスは黙っていた。


その視線だけが、カインへ向いている。



「……ありえん」


小さく漏れる。



カインは肩を回す。


背後の銀狼が、それに合わせるように揺れた。



「俺もそう思ってる」



炎狼が飛び出した。



轟音。



銀狼が真正面からぶつかる。


炎と氷。


熱と冷気。



空気が爆ぜる。


森の木々がまとめて吹き飛んだ。



セリアが腕で顔を庇う。


「うわっ……!」



今までと違う。



カインが押されていない。



銀狼は暴れない。


カインの動きに合わせて、自然に動いている。



イグニスが低く言う。



「獣を従わせていない……?」



「だから言ったろ」


カインが笑う。



「押さえつけるの、やめたんだよ」



銀狼が踏み込む。


氷が走る。



炎狼の脚を凍らせる。



イグニスが腕を振る。


爆炎。



氷が砕ける。


だが。



その隙を、ルクスが抜けた。



赤い炎を纏いながら。



イグニスの目が向く。



「また来るか」



巨大な炎が放たれる。


真正面。


避け場がない。



セリアが叫ぶ。


「ルクス!!」



だが。



ルクスは止まらなかった。



炎へ、そのまま突っ込む。



「なっ——」


セリアの声が止まる。



普通なら焼ける。


分かっている。



でも。



ルクスには、“出来る気がした”。



スライムを取り込んだ時と同じ。



境目が曖昧だった。



拒絶する感覚がなかった。



“馴染む”。



ルクスの炎が崩れる。



液体みたいに広がる。


赤いスライムのように。



イグニスの炎へ絡みつく。



包み込む。



「自殺か」


イグニスが言う。



次の瞬間。



炎が流れた。



逸れる。



崩れる。



巨大な炎が、ルクスを避けるように左右へ流れていく。



熱だけが通り過ぎる。



静寂。



イグニスの目が見開かれる。



ルクス自身も、一瞬だけ止まった。



手を見る。



炎が、自分の周囲を巡っている。



「……出来た」



小さな声。



カインが目を見開く。



「お前、今のできるって思ってたのか?」



「いや」


ルクスが即答する。



セリアが叫ぶ。



「いや怖すぎるでしょ!!」



その声に、一瞬だけ空気が緩む。



だが。



イグニスだけは笑っていなかった。



「……何をした」


低い声。



ルクスは炎を見る。


まだ完全には理解していない。



それでも言う。



「流しただけだ」



炎がルクスの周囲を巡る。


形を失い、揺れ、混ざる。



イグニスの炎なのに、


もうイグニスのものじゃない。



「馬鹿な……!」



初めてだった。


イグニスの声が揺れる。



「なぜ焼けない!」



ルクスは淡々としている。



「お前、押し付けるだけだからだ」



炎が揺れる。



「強いほど、馴染む」



その瞬間。



ルクスの炎が返る。



イグニスの炎を取り込み、


形を変え、


逆流するように放たれる。



イグニスが腕で防ぐ。


爆炎。



初めて。



イグニスが後ろへ下がった。



セリアが目を見開く。



「押した……!」



カインが笑う。



「やるじゃねえか」



ルクスは答えない。


まだ少しだけ、自分の手を見ていた。



“出来た”。



でも、なぜ出来たのかは分からない。



イグニスの表情が変わっていく。



理解できない。


そんな顔。



「炎は支配するものだ」



「制御するものだ」



ルクスが返す。



「決めつけてるだけだ」



銀狼が飛び出す。



炎狼へ噛みつく。



同時に。



ルクスの炎が銀狼へ流れ込む。



セリアが息を呑む。



「え……?」



炎と氷。


普通なら反発する。



でも違う。



ルクスの炎が、銀狼へ“馴染んで”いた。



銀の毛並みに赤い熱が走る。



炎狼が押し返される。



イグニスが目を見開く。



「ありえん……!」



カインが前へ出る。



「お前、制御しか知らねえんだな」



銀狼が吠える。



「一緒にいるって選択肢もあるんだよ」



炎狼が揺れる。



イグニスの炎が乱れ始める。



初めてだった。



“完成された炎”が、揺らいだ。



セリアが叫ぶ。



「右!」



ルクスが動く。


カインが合わせる。



初めてだった。



三人の動きが噛み合う。



イグニスが炎を放つ。



ルクスが受け流す。



カインが凍らせる。



セリアが隙を作る。



押している。



確実に。



イグニスが歯を食いしばる。



「貴様ら……!」



炎が膨れ上がる。



空が赤く染まる。



炎狼が巨大化する。



獣の形が崩れ始める。



制御が乱れている。



「なら——」



イグニスの瞳が獣みたいに細くなる。



「全て焼き尽くす!!」



轟音。



巨大な炎が天を覆う。



セリアの顔が青ざめる。



「まずい……!」



だが。



ルクスは前を見る。


カインも下がらない。



銀狼が静かに牙を剥いた。



決着が近づいていた。

27話でした。ここでルクスも炎の使い方を学んでいきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ