表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱テイマーは総てを溶かす  作者: コクトー
三章 灰と火
PR
25/52

「氷狼」

25話です。罪の精算。

爆炎が森を裂いていた。


熱で視界が歪む。


地面は溶け、木々は炭になり、空気すら燃えている。



その中心で、イグニスは立っていた。


炎狼を従えて。



「終わりか?」


淡々とした声。



ルクスが炎を纏ったまま立ち上がる。


腕は焼けている。


それでも前を見る。



「まだだ」


短い返答。



イグニスの口元がわずかに動く。



「その炎だけは評価してやる」



炎狼が唸る。


次の瞬間。



爆炎。



ルクスが横へ飛ぶ。


直後、地面が消し飛んだ。



「っ……!」


セリアが息を呑む。


規模が違う。


まともに受ければ終わる。



「セリア!」


カインが叫ぶ。



セリアが矢を放つ。


三本。


同時。



イグニスの死角へ。



だが。



炎狼が動いた。



巨大な顎が炎を噛み砕く。


矢が燃え尽きる。



「邪魔だ」


イグニスが腕を振る。


炎が走る。



カインが前へ出た。


剣で受け流す。


だが熱が重い。



「ぐっ……!」



押される。



イグニスが見下ろす。



「なぜ使わん」



カインの動きが止まる。



「貴様の氷は、そんなものではなかったはずだ」



セリアが振り向く。



「……氷?」



イグニスは続ける。



「全てを凍らせる狼」



「それがフェンリルだった」



その言葉。



カインの脳裏に、過去が蘇る。



吹雪。


悲鳴。


凍る地面。



白い狼。



自分の周囲で、人も魔物も関係なく凍りついていく。



その中心で。



“フェンリル”が言う。



「何者も服従させる圧倒的な力」


「それが俺にはある」


「故に、貴様達は負けるのだ」



冷たい声。


感情のない声。



セリアの声で、現実へ戻る。



「……それ、本当にあんた?」



カインは答えられない。



イグニスが言う。



「誇るべき力だった」



「弱者は震え」


「強者は従う」



「それが正しい」



炎狼が低く唸る。



「強さとは支配だ」



「だから俺達は選ばれた」



ルクスが前へ出る。



炎を纏ったまま。



「なら、お前は弱いな」



空気が止まる。



イグニスの目が向く。



「……何?」



ルクスは変わらない。



「お前、自分で決めてない」



一瞬。



炎が揺れた。



セリアが目を見開く。



イグニスの炎狼が、わずかに形を崩す。



「強さに従ってるだけだ」



ルクスは続ける。



「お前自身じゃない」



次の瞬間。



轟音。



炎が爆発した。



「黙れ!!」



初めてだった。


イグニスの声に感情が乗る。



炎狼が巨大化する。


熱量が跳ね上がる。



地面が耐えきれず崩れる。



セリアが叫ぶ。


「まずい——!」



ルクスが炎を展開する。


だが押される。



その時。



カインが前へ出た。



「……っ」



拳を握る。



冷気が漏れる。



地面が凍る。



イグニスの目が細くなる。



「それだ」



「思い出せ、フェンリル」



氷が広がる。



だが。



止まらない。



「っ……!」



冷気が暴走する。



地面。


木。


空気。



全部が無差別に凍り始める。



セリアの足元まで白く染まる。



「カイン!」



ルクスが振り向く。



カインの呼吸が荒い。


目が揺れている。



“フェンリル”だった頃の感覚。



従わせる。


押し潰す。


凍らせる。



全部戻ってくる。



「違……っ」



止められない。



炎狼と氷狼。


二つの獣が空気を歪める。



イグニスが笑う。



「それでいい」



「獣を抑え込め」



「力で従わせろ」



氷がさらに暴れる。



セリアが動けなくなる。



「っ……寒……」



ルクスが前へ出る。



赤い炎が氷を押し返す。



「カイン」



短く呼ぶ。



カインの目が揺れる。



「俺は……」



呼吸が乱れる。



「また、ああなる……!」



初めてだった。


カインが、恐怖を口にした。



イグニスが言う。



「それがお前だ」



「受け入れろ」



氷狼の影が、カインの背後に揺れる。


巨大で、冷たく、暴力的な狼。



ルクスはそれを見る。



そして言った。



「で、どうする」



カインが顔を上げる。



ルクスは続けない。


命令もしない。



ただ待っている。



選ばせるように。



イグニスの炎が膨れ上がる。



氷が暴れる。



二つの獣がぶつかる寸前。



カインの呼吸だけが、乱れていた

25話でした。カイン頑張れ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ