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最弱テイマーは総てを溶かす  作者: コクトー
三章 灰と火
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24/52

「炎狼」

えー、大変お待たせしました。仕事の関係で更新出来ませんでした。とはいえ書き溜めていたものを今日沢山掲載してきますのでそちらでお許しを。

という訳で24話です。

炎の熱が、大地を揺らしていた。


赤く焼けた空気の向こう。


そこに立つ存在を、セリアは“人”と呼ぶのを少しためらった。



燃えている。


全身が。



それでも形を保っている。


いや——違う。


保っているんじゃない。


制御している。



炎が、その存在に従っていた。



「弱いな」


低い声が響く。



その瞬間。


背後で爆炎が弾けた。



「っ!?」


セリアが振り向く。


遅れて熱風が襲う。



木々が一瞬で炭になって崩れた。



「避けろ」


カインがセリアを引く。


爆風が横を通り抜ける。



イグニスは動いていない。


立っているだけ。


それだけで周囲が焼けていく。



「化け物……」


セリアが呟く。



イグニスの視線が向く。


赤い瞳。


その奥に、獣みたいな光が揺れる。



「その程度で化け物扱いか」



炎が、背後で形を変えた。



狼。



巨大な炎の狼が、イグニスの背後に浮かび上がる。


遠吠えのような轟音。


空気が震える。



セリアが息を呑む。



「……狼?」



カインの表情が変わる。


ほんの少しだけ。



イグニスは淡々と言う。



「制御できぬ力に意味はない」



炎狼が唸る。



「獣も炎も同じだ」



「従わせろ」



その言葉に、カインの目が揺れた。



「……相変わらずだな」


低い声。



イグニスが見る。



「フェンリル」



その呼び方。


カインの眉が歪む。



「やめろ」



「事実だ」



イグニスの背後で、炎狼が牙を剥く。



「何者も服従させる圧倒的な力」



静かな声。


まるで当然の真理を語るように。



「それが俺達にはある」



「故に、弱者は従う」



一瞬。


カインの呼吸が止まる。



セリアが見る。


その顔を。



“知っている顔”だった。



フェンリルとして戦っていた時の、


冷たく、閉じた顔。



イグニスが続ける。



「貴様もそうだった」



「力で踏み潰し」


「力で従わせ」


「力で生きていた」



炎狼が前へ出る。



地面が焼ける。



「違うか?」



カインは答えない。



その沈黙が、肯定みたいだった。



ルクスが前へ出る。



「知らないな」



イグニスの視線が移る。



ルクスの右腕に、赤い液体が絡みつく。


スライム。



それが炎へ変わる。



セリアが目を見開く。



フェンリル戦で見た炎。


だが今は、もっと濃い。



揺れている。


形を変えている。



イグニスの目が細くなる。



「……その火」



ルクスが踏み込む。


炎が槍のように伸びる。



イグニスは避けない。


炎狼が前へ出た。



轟音。



炎と炎がぶつかる。



熱が爆ぜる。



ルクスの炎が変形する。


裂け、伸び、絡みつく。



イグニスの炎と違う。


定まらない。



「未完成だな」


イグニスが言う。



「だから弱い」



次の瞬間。


炎狼が吠えた。



爆炎。



地面が吹き飛ぶ。


ルクスが後ろへ弾かれる。



「ルクス!」


セリアが叫ぶ。



イグニスは動かない。



「力は制御してこそ意味を持つ」



「揺れる火では届かん」



ルクスが立ち上がる。


腕が焼けている。


それでも炎は消えていない。



イグニスの目がわずかに細まる。



「消えないか」



カインが前へ出る。



「……ちっ」



拳を握る。


冷気を出そうとする。



だが。



何も起きない。



イグニスが見下ろす。



「まだ獣を抑えられんか」



炎狼が揺れる。



「貴様は失敗した」



「人にも獣にもなれなかった」



カインの目が揺れる。



氷が出ない。



出そうとするほど、


昔の感覚が蘇る。



踏み潰す感覚。


従わせる感覚。



フェンリルだった頃の自分。



「っ……!」



イグニスが腕を上げる。



巨大な炎が頭上に生まれる。



太陽みたいな熱量。



セリアの顔が青ざめる。


「嘘でしょ……!」



ルクスが炎を纏う。


迎え撃つ。



だが足りない。


押し返せない。



「終わりだ」



炎が落ちる。



轟音。



ルクスの炎が潰される。


地面が砕ける。



その瞬間。



ルクスの炎が形を変えた。



鋭く。


獣みたいに。



赤い牙のような炎が、イグニスの肩を掠める。



沈黙。



イグニスが肩へ触れる。


浅い傷。



初めて。


ほんの少しだけ。


表情が変わった。



「……なるほど」



ルクスを見る。



「獣を飼っているわけではないか」



炎狼が低く唸る。



「面白い」



空気が震える。


熱量がさらに増す。



セリアが息を呑む。



カインは前へ出る。


氷はまだ出ない。



それでも、下がらない。



炎狼が牙を剥く。



戦いは、まだ始まったばかりだった。

24話でした。イグニスの圧倒的な強さに3人は勝てるのでしょうか

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