「似た通り」
19話です。なんだかんだ書かない日もあるけどちゃんと貯めておいてます。すいませんすぐに上げられなくて
昼下がりの街は、思ったより賑やかだった。
屋台の煙、呼び込みの声、人の流れ。
どこにでもあるような光景。
「いい匂い……」
セリアが立ち止まる。
串焼きの屋台。香ばしい匂いが漂っていた。
「さっきも似たようなの見ただろ」
カインが言う。
「“似たような”でしょ。これはこれ」
「全部同じだ」
「全然違うって」
軽く言い合いながら、セリアは店主に声をかける。
「これ三本ください」
「はいよ」
焼けた肉が差し出される。
セリアは一本をその場でかじった。
「……うま」
「単純だな」
カインが呆れる。
「食べる?」
「要らん」
「遠慮しなくていいのに」
「遠慮じゃない」
そんなやり取りを横目に、ルクスは周囲を見ていた。
人の流れ。道の幅。建物の並び。
一度だけ、視線が止まる。
だが、すぐに外した。
「行くぞ」
短く言う。
「はいはい」
セリアは残りを口に詰め込み、歩き出す。
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通りを抜ける。
角を一つ曲がると、人通りが少し減った。
「さっきより静かだな」
カインが言う。
「裏通りみたいなもんでしょ」
セリアが答える。
似たような店が並ぶ。
似たような看板。
似たような人影。
どこにでもある街の風景。
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少し進んだところで、セリアが足を止めた。
「……あれ」
「どうした」
カインが振り向く。
セリアは前を指さした。
「さっきの店」
そこにあったのは——
串焼きの屋台。
煙。匂い。並び。
見覚えのある光景。
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「……気のせいだろ」
カインが言う。
「いや、でも」
セリアは近づく。
店主が顔を上げた。
「いらっしゃい」
初めて見る客への声。
「……さっき、来ましたよね?」
セリアが聞く。
店主は首をかしげた。
「いや? 初めてだが」
「でも——」
言いかけて、止まる。
看板を見る。
文字は同じ。
値段も同じ。
でも——
串の並び方が、少しだけ違う。
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カインが横に立つ。
「どうだ」
「……分かんない」
セリアが小さく言う。
「同じ、っぽいけど」
「違うのか」
「……たぶん」
曖昧な答え。
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ルクスは少し離れた場所から、その様子を見ていた。
何も言わない。
ただ、一瞬だけ——
目を細める。
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「もういいだろ」
ルクスが言う。
「行くぞ」
「でもさ——」
セリアが振り返る。
「気にするな」
被せるように言う。
短く、はっきりと。
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カインが舌打ちする。
「……確かに、変だが」
「だろ?」
セリアが乗る。
「でも分からん」
カインは続ける。
「同じとも違うとも言い切れん」
ルクスはそれを聞いて、歩き出した。
「今はそれでいい」
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少しの沈黙。
セリアはもう一度だけ屋台を見る。
煙が上がる。
普通の光景。
何もおかしくない。
……はずなのに。
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「……まあ、いっか」
小さく呟く。
完全には納得していない。
でも、追わない。
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「置いてくぞ」
前からルクスの声。
「待ってよ」
セリアが走る。
カインも続く。
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三人は再び並んで歩き出す。
さっきと同じようで、少しだけ違う通りを。
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その後ろで、
串焼きの屋台は、静かに煙を上げていた。
まるで——
最初からそこにあったかのように。
19話でした。この違和感はなんでしょう。




