表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/23

「役割の形」

17話です。宜しくお願いします。

朝。


川のせせらぎが、やけに静かに聞こえた。


ルクスはすでに起きていて、火の始末を終えている。

カインは剣の手入れ。無駄のない動き。


セリアだけが、まだぼんやりしていた。


「……おはよ」


「遅い」


カインが即答する。


「まだ日出てすぐじゃん」


「準備は終わってる」


「だから今やるっての」


セリアは立ち上がりながら、軽く伸びをする。


その様子を、ルクスは一度だけ見て、視線を外した。


「出る」


短い合図。


三人は自然に動き出す。


昨日よりも、少しだけスムーズに。



しばらく進むと、小さな荷車が道端で止まっていた。


車輪が外れ、荷が崩れている。


傍らには商人らしき男が、困り果てた顔で座り込んでいた。


「……壊れたか」


カインが呟く。


「みたいだね」


セリアが近づく。


「大丈夫ですか?」


男は顔を上げた。


「ああ、旅人か……見ての通りだ。車輪がやられてな」


ルクスは荷車を一瞥する。


軸が歪み、片側が完全に浮いている。


「直せるか」


カインにだけ聞く。


「無理だな。交換が要る」


即答。


セリアがしゃがみ込む。


「応急処置ならできるかも」


「やめとけ。余計壊す」


「やる前から決めつけないでよ」


セリアは近くの木片を拾い、軸に当ててみる。


「……ほら、これで支えれば——」


バキッ、と音がした。


「あ」


木片が折れ、車輪がさらに傾く。


沈黙。


カインが顔を逸らす。


「言っただろ」


「今のは素材が悪かっただけ!」


「同じことだ」


セリアがむっとする。


「じゃああんたやってみなよ」


「戦闘以外は専門外だ」


「開き直るな」


軽く言い合いになる。


その間に、ルクスは荷物を一つ持ち上げた。


「運ぶ」


二人が同時に振り向く。


「は?」


「街まで距離は大したことない。人手が足りないだけだ」


商人が目を見開く。


「運んでくれるのか?」


「対価は要らない。ついでだ」


カインが眉をひそめる。


「効率悪いだろ」


「道は同じだ」


「……」


反論が詰まる。


セリアがにやりと笑う。


「はい決まり。カイン、重いの担当ね」


「なんで俺が」


「一番力あるでしょ」


「……ちっ」


舌打ちしながらも、荷を持ち上げる。


驚くほど軽々と。


商人が慌てて頭を下げた。


「助かる……本当に」


ルクスは何も言わず、歩き出す。


その後ろを、三人と一人で進む。



道中。


荷を運びながらの移動は、自然と会話を生んだ。


「意外とちゃんとしてるじゃん」


セリアがカインを見る。


「何がだ」


「こういうの、やらないタイプかと思ってた」


「別に……やれと言われたからやってるだけだ」


「でも断らなかったでしょ」


「……」


カインは答えない。


少しだけ視線を逸らす。


ルクスが前から言う。


「重いなら替わる」


「要らん」


即答だった。


「問題ない」


その声は、昨日より少しだけ柔らかい。



やがて、小さな街が見えてきた。


商人は何度も礼を言い、荷を受け取る。


「本当に助かった。これ、少ないが——」


金を差し出す。


ルクスは首を振った。


「不要だ」


「だが——」


「時間の方が価値がある」


それだけ言って、背を向ける。


カインが小さく笑った。


「かっこつけてんな」


「事実だ」


「はいはい」


セリアが横に並ぶ。


「でもさ、ちょっと良かったかもね」


「何がだ」


「こういうの。戦うだけじゃない感じ」


カインは少し考える。


「……効率は悪い」


「それでも?」


「……悪くはない」


小さな声だった。



街の入口で、三人は足を止める。


人の流れ。声。匂い。


日常の空気。


「今日はここで情報集める」


ルクスが言う。


「宿も取るか」


カインが続く。


セリアは少しだけ周囲を見回した。


「……うん、そうだね」


何か言いかけて、やめる。


すぐに表情を戻す。


「じゃあまずは飯!」


「切り替え早いな」


「生きるのに必要でしょ」


カインが呆れたように笑う。


「それは否定しない」


ルクスはすでに歩き出していた。


「行くぞ」


「はいはい」


「待てよ」


三人が並ぶ。


今度は——


誰が前でも、後ろでもなかった。



まだ完全じゃない。


でも確実に、


“役割”は形になり始めていた。

17話でした。段々と三人の距離が近づいてきましたね

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ