表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/23

「距離の測り方」

16わです

朝の空気は、まだ少し冷えていた。


火の残りがくすぶる中、セリアは伸びをする。


「……ねむ」


「起きたなら手を動かせ」


カインが無表情で言う。


「はいはい。あんたはもう終わったの?」


「とっくに」


見ると、荷は綺麗にまとめられていた。

無駄がない。けど——どこか不自然なほど整いすぎている。


「几帳面だね」


「そういう風にやってきただけだ」


会話はそれで切れる。


少しの沈黙。


その空気を割るように、ルクスが立ち上がった。


「出るぞ」


短い一言。


セリアは苦笑する。


「せめて“準備できたか”とかさ」


「見れば分かる」


「はいはい」


カインは何も言わず、先に歩き出す。


その後ろを、ルクスが追う。


——セリアが、最後。


「……なんか、この並び落ち着かないな」


小さく呟いて、足を速めた。



しばらく歩くと、道が二つに分かれていた。


片方は森の中へ、もう片方は開けた街道へ続いている。


ルクスは迷わず、街道側へ足を向けた。


「そっちか」


カインが止まる。


「問題あるか」


「いや、あるかどうかを聞いてる」


ルクスは少しだけ視線を向ける。


「ない」


「根拠は?」


「必要ない」


一瞬、空気が張る。


セリアが間に入った。


「まあまあ、どっちでも行くしかないんだしさ」


「お前はそれでいいのか」


カインが睨む。


「いいよ。だって——」


セリアは軽く肩をすくめる。


「こっちの方が早そうじゃん?」


ルクスがわずかに目を細めた。


「……分かるのか」


「なんとなくね」


「曖昧だな」


「そっちもでしょ」


軽く言い返す。


カインはため息をついた。


「……分かったよ。勝手にしろ」


そう言って歩き出す。


結局、三人とも同じ方向へ進んだ。



道中、低い唸り声が聞こえた。


草むらから飛び出してきたのは、野犬型の魔物が三体。


「来たな」


カインが前に出る。


動きに迷いがない。


一瞬で距離を詰め、最初の一体を叩き伏せる。


そのまま二体目へ——


「待て」


ルクスの声。


カインの動きが一瞬だけ止まる。


「……なんだ」


「囲まれてる」


背後からもう一体、気配。


セリアがすでに弓を構えていた。


「こっちは任せて」


矢が放たれる。


正確に、急所。


魔物が崩れ落ちる。


残った一体が怯んだ。


カインはそれを見て、踏み込む——


直前で、止めた。


「……逃がすのか」


「必要ない」


ルクスが答える。


「数を減らした。十分だ」


カインは舌打ちしたが、追わなかった。


逃げた魔物は森へ消える。


静けさが戻る。



「中途半端だな」


カインが言う。


「全部やればいい」


「無駄だ」


ルクスは短く返す。


「目的は進むことだ。狩ることじゃない」


カインは少しだけ黙る。


「……割り切ってるな」


「そういうものだ」


セリアが間に入る。


「でもさ、さっきの止まり方」


二人を見る。


「ちょっと息合ってたよね」


カインが眉をひそめる。


「は?」


「いや、なんとなく」


ルクスは何も言わない。


ただ、少しだけ歩き出すのが早かった。


「ほら、置いてくぞ」


「おい、待て」


カインが追う。


セリアがその後ろで笑う。


「なんだかんだで、ちゃんと組めてるじゃん」


「気のせいだ」


「そうかなー」


軽口が、少しだけ自然になる。



夕方。


三人は川辺で足を止めた。


「今日はここでいい」


ルクスが言う。


カインが周囲を見る。


「……まあ、悪くない」


セリアは水に手を浸した。


「冷たっ」


その様子を見て、カインがわずかに口元を緩める。


すぐに元に戻るが、確かに変化はあった。


火を起こし、簡単な食事を取る。


会話は少ない。


それでも——


完全な無言ではなかった。



「なあ」


カインがぽつりと言う。


「なんだ」


ルクスが返す。


「お前、いつもそうやって決めてるのか」


少しの間。


「そうだ」


「間違えたらどうする」


「その時考える」


即答だった。


カインは小さく笑う。


「適当だな」


「違う」


ルクスは火を見たまま言う。


「選んでるだけだ」


それ以上は言わない。


カインも、深くは聞かない。



夜。


三人はそれぞれの場所に横になる。


距離はまだ、少しある。


けれど——


離れてはいない。


セリアが小さく呟いた。


「……まあ、悪くないかもね」


誰に向けたわけでもない言葉。


それに答える者はいない。


ただ、火の音だけが静かに続いていた。



少しだけ近づいた距離。


けれどまだ、完全には重ならない。


三人の歩幅は、これから揃っていく。

16話でした〜定期掲載出来なくてすいません

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ