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7. 針

「、、、あなた、戦闘経験は?」

「ねーよ、、、親父に殴られたことなら何回もあるが」

自嘲みたいに吐き出した言葉だった

誇れる経験じゃない

自慢できる過去でもない

剣の握り方は知らない

戦い方も分からない

でも耐え続けることなら

抗い続けることなら俺にもできる

「、、、そうですか、ではまいりましょう」

次に目を開いたときには澱は俺の懐に潜り込んでいた

受けをとる間もなく腹を貫かれる

だが直接的な痛みはなく澱はそのまま俺から離れた

意味が分からず動揺してしまう

でも攻めるなら今だ

そう思った次の瞬間、俺の頭はクソ親父の言葉で埋め尽くされた


/


「この点数はなんだ」

小学校のテストだった

95点、クラスの中でも1番だった

「なぜ100点じゃないんだ」

逆になんで100点じゃないといけないの?

僕は頑張った、それで一位を取った

それじゃダメなの?

「お前は失敗作だ」


/


ッ!

急に意識が現実に戻される

「お前、、、何したんだ?」

「貴方の過去の記憶を刺しただけですよ、そしてそれが一気に貴方の頭の中を巡った、というところでしょうか」

体が重い

あれからだったか、親父が俺に厳しい態度をとるようになったのは

あいつらは完璧を求めてた

でも俺がそれにひびを入れてしまった

あいつらが俺への興味をなくすのにはそれで十分だったんだろう

「現実時間にして1秒にも満たない、しかし心の内から削られていくのはあなたにとって厳しいのではないですか?」

確かにきつい

だが

「効かねえよこんなの、こんなんじゃ倒れられねえんだよ」

あいつのためにも倒れるわけにはいかない

「素晴らしいですね」

澱が踏み込んだのを見て俺は痛みを堪え刀を構えなおそうとした

でもそれ以上に早く澱は近づき俺を刺した

一回じゃない 何十回も

「これでも貴方は耐えれるのでしょうか」

そのすべてを聞き取る前に俺の頭は埋め尽くされた


/


、、、なんだつまんない

雫も結局は他のやつらと同じだったのかな

少し遠くから見ていた俺は雫がその場に倒れこむのを見て落胆した

「酷いね、初めての殺し合いだってのに」

「殺し合いに酷いなどの感情を抱いてしまっていては剣など振るえませんよ」

、、、本当に気持ちの悪いほど人のような澱だ

初めて澱を見たのは昨日だ

4番隊の壊滅後、救助に向かった俺が見たのは先ほどの毛玉のようなただ人を襲うだけのものだった

でもこいつは違う

人と同じように喋り、振る舞う

こいつらは何なのか、またよっくんに分析してもらわないとな

「まあいいや、君の目的は未奈を連れていくことだろ?させないよ、その前に殺す」

鎌を握り歩き始める

「、、、申し訳ありませんが」

そういうと澱はレイピアを地面に突き刺した

次に針がそこらじゅうの土から飛び出してきた

俺は避けることもできずに刺さった

「私はあなたに興味がないのです」

貫かれた傷口から赤黒い血が溢れていた

「命を懸けて戦う彼を侮辱するようなことを考えるあなたには」


この男の死を確認する間もなく私は異変を感じる

後ろから気配がするのだ

「、、、すごいですね貴方は、耐えたのですか」

彼は

雫と呼ばれた少年は立っていた


/


死にたくなるほどの記憶が呼び起された

正直今だって立ち上がるすらできやしないと思っていた

でも

ここで俺が倒れたら

学校に避難してる奴らが

妹が

唯月が死ぬ

そう頭によぎった

それだけで頭が晴れた

俺はまだ、死んじゃいない

「死にぞこないで悪かったな」

状況は最悪だ

時雨は針に貫かれ死に、俺も正直かなり限界が来てる

でもやらなくちゃいけない

二星や猫宮とか言ったやつらも戦ってる

もう引き返せないとことまで来てしまっているから

さっき異常なほど体が速く動いた時と同じ感覚が体中を駆け巡る

顕澱 隼

軽く踏み込んだだけで体が想像以上に早く動く

例えるのだったら鳥になったような気がした


/


正直想定外だった

あの少年が起き上がること

そしてボロボロの体でここまでの速度の攻撃を出せること

私の左腕は切り落とされ同時に腹もえぐられた

、、、撤退しかないですね

翠華様からのお使いとしては失敗ですが時間さえあればどうにでもなる

少年の技は異常な速度で切りつけることのみ

わかってしまえば怖くはない

私は彼を狙い地面に針を突き刺す

周囲の地面から針が突き出てくる

彼は後ろに下がって避けた

その隙に走った

感じたことのない緊張が走った

そのままフェンスを飛び越え

、、、フェンスを飛び越える

ただそれだけだったのに

私の体は動かなくなってしまった

ヘビに睨まれたカエルのように

「な、なぜだ、、、」

「、、、鏡、間に合ったみたいだな」

ふと足元を見ると鏡がフェンス沿いに並んでいた

、、、囲まれたのか

私の時間稼ぎもむなしく少年が迫ってきていた

いつの間にか立場が逆転してしまったようだ

今の私はちっぽけな蟻だ

どうあがいてもその地獄を這い上がることのできない蟻だ

でも

あの人の願いのために

澱の希望である彼のために

ここで死ぬわけにはいかないのだ

「私だって引き返せないんですよ」

顕澱 針千本

そこらじゅうの地面から先ほどよりも鋭く、多い針が地面を覆った

彼の精神にはやはり響いていたらしい

動きは鈍く避け切ることは出来ずに深々と刺さった

彼は血反吐を吐き俯く

でも立ち上がった

私という存在を殺すまで


/


あいつも何か守りたいものがあるのだろうか

正直今の澱の目はただ人を殺すだけの化け物には見えなかっった

あいつももう限界だろう

これ以上の勝負はあらかじめ傷の少ない俺に分がある

このまま持久戦に持ち込めば勝つのは俺だろう

それでいいじゃないか

、、、よかったはずなのに

「、、、構えろ、最後にしよう」

何故かそんな言葉が出た

あんな奴らに情けをかけるのはバカの何物でもない

そうわかっていても命を懸け何かを遂げようとする目の前のその男に好感を抱いてしまったのかもしれない

ついさっきまで澱に対して殺意しかなかった俺が



、、、優しい少年だ

彼の有利な状況

それを捨て私との一騎打ちを提案するとは

、、、見透かされてしまったのだろうか

私の心を

彼への思いを

どっちにしろ彼にもらったこの機会

逃すわけにはいかない

「そうですね、終わらせましょう」

敬意を持って彼を殺す


冷たい風が吹く

だが体は

命は熱く輝いていた

お互い向かい合い構える

次の瞬間二人は尋常じゃない速度で命を輝かせた



決着は一瞬だった

雫の刀は心刺のレイピアを砕き、彼の胸を貫いていた

その服が紅く紅く滲んでゆく

「、、、お見事です、少年」

その紳士はどこか悲しそうに

それでいながら満ち足りた

そんな顔をして眠りについた

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