5. 鏡
扉の先には無数の化け物がうろついていた
そのどれもが小さく毛玉のようだった
その毛玉に一つ目玉がついており外に出た私たちに視線を向けた
「じゃあ皆よろしくね」
時雨さんは先ほどまで持っていなかった大きな鎌を構え、毛玉を刈り取ってゆく
「あの人強いんで安心していいっすよ」
城崎さんも長い刀を構え毛玉に向かっていった
「いくぞ」
二人の猛攻に見とれていた私は雫の声で目が覚める
「隙間が空かないように、そして学校を囲うように並べてね」
時雨さんの言っていたことを思い出しながら私は走り出す
あまり毛玉のいないところを走り学校の外壁に沿って置いてゆく
「これは儀式みたいなものだから少しでも間違ってちゃダメなんだ」
少しも隙間を作らないように左回りに置いていく
少し振り返ると雫は私の2倍ほどのスピードで並べていっていた
杏は追加の鏡を雫に届けに行っていた
少しよそ見をしたせいだろう、私は毛玉が近づいてきているのに気づいていなかった
毛玉は息を潜めその毛の中に隠した牙の生えた口で私にとびかかってきた
でもそれは私に届く前に真っ二つになった
「あんまりよそ見しないでくださいよ」
かなり遠くにいた城崎さんがそう呼びかけた
私はすぐ手を動かし始める
隙間なく慎重に
時雨さんと城崎さんが守ってくれている
なら私は与えられた仕事をこなすのみ
やがて四分の一ほどが終わり鏡が少なくなってきたとき、杏が鏡を抱え走ってきた
何かを叫んでいる 私に気づいてもらうためだろうか
それにしてはやけに必死な気が
「未奈!避けて!」
/
杏の呼びかけに反射で私は飛んだ
着地に失敗して派手に転ぶ
痛みを感じつつ元々いた場所を見ると
大きくえぐれた地面があった
「、、、」
そこにそれはいた
あの水の澱と同じような雰囲気をまとった灰色の髪の子供が
一瞬避難に来た人かと勘違いしてしまったが
殺意のこもった目で私を見たことであいつと同じだという確信を持った
腰にぶら下げていたナイフを構える
「杏!時雨さんと城崎さんを呼んで!」
でも返ってきた言葉は
「今二人もやばいのに襲われてて、、、」
、、、まじですか
私がやらなくちゃいけない
その緊張が汗となって額を伝う
お互いがにらみ合い硬直した場面
先に動いたのはそれだった
私はまず自分を守ることに集中して構えた
でもナイフは私の手から離れていた
強い風が吹いた
思わず離してしまったのだろうか
それの拳が私の頬に直撃する
「未奈!」
、、、痛い
風が吹いていたこともあって私はかなり遠くに飛ばされてしまった
並べていた鏡もいくつか吹き飛ばされている
「やっぱ私、なんもできないのかな」
思わず弱音が零れてしまう
「そんなことないっすよ、ちゃんと立ち向かえててえらい」
隣から声が聞こえた
「城崎さん、、、」
「あっちは隊長と水溜君に任せました、三人で倒すっすよ」
/
「君、誰?」
時雨は目の前に現れたその人、いや人型の何かに話しかけた
スーツに身を包んだ胡散臭い男のような奴だった
「どうも私、心刺と申します、あなた方の呼び方にあわせるなら針の澱、でしょうか」
そいつは流暢に喋った
紳士のような振る舞いで
「そうか、何しに来たの?」
「私達の目的ですか、、、氷の少女の奪取、でしょうか」
氷の少女?
今ここで介護を受けている奴にそんな奴がいるのか
それとも時雨が何かを隠しているのか
「悪いが無理だ、帰ってくれ」
「、、、抵抗しないのなら処分は不要でしたが仕方ありませんね、死んでもらいます」
「雫、構えろ」
心刺は腰に掲げていたレイピアを構えながら迫ってくる
「僕が先に出る、雫は自分の身を最優先に守れ」
、、、違うな
自分なんか守ったところで何の意味もない
ここでこいつを取り逃がして
守りたい人を、大事な人を失う
そう想像したら吐気がしてくる
自分の意思を抑えてクソったれな状況になるんだったら
自分の意志でクソったれな状況になる方がましだ
もう何物にもとらわれない
体が前に出ていた
俺はナイフでそいつを切った
目に見えない速度で移動して相手に反撃の隙を与える前に
「!?!?!?」
心刺は突然のことに驚き、後ろへ下がる
「、、、随分と物騒なガキですね」
俺は心刺から目を離さずもう一度構えた
「、、、雫!これ使え!」
時雨は背中に背負っていた剣を俺に投げた
ナイフを捨て、すぐにそれを拾う
それは見た目より軽くナイフなんかよりよっぽど鋭かった
「気に入ったよお前!好きなようにやりな!」
時雨のテンションがおかしい
だが 好きにしろ そう言われたんだ
俺の価値をここで示す
「OK リーダー」
オマケ
キャラの名前
風の澱 風鈴
針の澱 心刺




