3. 妹
俺には妹がいる
名前は水溜 唯月
人懐っこく、陰気臭い俺にでもよくしてくれるいいやつだ
そんな妹は今傷だらけで横たわっている
/
車の走りだした音で目を覚ました
、、、憂鬱だ
クソみたいな一日がまた始まる
雑に布団から起き上がって身支度を始める
カーテンを少し開けると、曇った朝の空が見える
晴れてもいないし、雨でもない
中途半端だな
どっちかに振り切れていたらよかったのにと思いながら制服に腕を通す
足早と部屋を出て朝食もとらず家を出る
いってきますなんて言葉、最後に言ったのいつだろうな
ドアの閉まる音は
聞いていて心地よかった
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いつも通りの時間にバス停に着いて待つ
「雫、今日も憂鬱そうな顔だな」
いきなり肩を叩かれそう言われた
東雲 東だった 一応親友だ
「憂鬱じゃない日なんかあるかよ」
思った通りのことをそのまま伝える
東は吹き出しそうになりながら会話を続けた
「お前変わんねえよなあ」
「お前こそな」
小突き合いをしていたらバスが来た
定期を取り出し乗り込む
「よろしくお願いします」
運転手さんに挨拶をして3列目の右の奥の席に座る
東はその隣に座った
「今日もあいつ寝坊かなー」
「杏、だっけ?幼馴染なんだっけか」
「そそ、月に25回は寝坊してるんだよあいつ」
「バカだろそいつ」
バカすぎて逆に笑えない
もう定期持ってる意味ねえだろ
そんなことを話していたらバスがゆっくりと走り出した
いつも通りの時間に
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「ありがとうございました」
運転手さんに礼を言ってバスを降りすぐ近くのコンビニに入る
適当なおにぎりとお茶を買って店を後にする
東はスマホをいじって店の前で待っていた
「毎日待たなくていいのに」
「待つなって言われてないからな」
俺に合わせて東も歩き出す
「なあ、あれ見たか?沈みゆく町で、僕らは肉を食うってアニメ?」
「うん見た、作画はよかったけど内容はクソだった」
「えー面白いと思ったんだけどなあれ」
、、、なんで東はこんな俺によくしてくれるんだっけか
最近バイト続きで疲れすぎていて頭が回らない
こんな考え事をしながら俺らは校舎に入る
「じゃーな」
「ん」
俺と東はクラスが違う
だからあいつといるとき以外は俺は一人だ
クラスに入りすぐに席についた俺は仮眠を取り始める
ほんの数分だがないよりかはマシだ
クラスの騒がしい空気の中、俺だけが静かだ
他のやつらは仲良く話し合ったり勉強を教え合ったりしている
俺はあいつが同じクラスだったとき以外そんなことはしたことない
「皆さん、ST始めますよー、席についてくださーい」
、、、どうやら居眠りはもう終わりらしい
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俺は授業が始まった後寝るという選択を取った
最近疲れが溜まっており今授業を受けても何も入ってこないからだ
それならテスト前にバイトを休み勉強をした方がましだ
そっちの方が給料にも支障があまり出ない
授業が始まってまだ五分も経っていなかったと思う
俺はすぐに眠りについた
気が付くと俺は暗い場所にいた
そこには俺の家があった
他には何もないただ真っ黒な空間
異様な光景に不快感を覚えながらも俺は扉を開けた
声が聞こえてきた
「なんなんだこの成績は!」
親父の声だった
姿は見えない でも声は頭に刺さってくる
頭に銃を撃たれるようなそんな感覚に襲われる
「私はあんたを生みたくて生んだわけじゃないのよ!」
やめろ だったら生むなよ お前が生んだんだろ
「俺たちがお前のことをどれだけ思ってるのかわかってるのか!」
うるさい 俺のことなんてちっとも知らないくせに
「「お前は何のためにここにいるんだ」」
、、、目が覚めると授業は終わりに近づいていた
俺はすごい汗をかき強い吐気が込み上げてくる
疲れをとるために寝たのに余計に疲れてしまった
クソが
/
「以上でLTを終わります、気を付けて帰宅するように」
あの夢のせいでその後もずっと気分が悪いままだった
すぐに俺はバイトに向かう準備をした
学校を出て今朝に寄ったコンビニに入り準備をする
レジに立ち俺は客を待つ
比較的この時間帯は人が少ない
、、、他のやつらは放課後って何してるんだろうな
仲いい奴と一緒にショッピングモール行ったりして遊んだり、飯食いに行ったりするのかな
仲いい奴、、、東
そうだ思い出した
あいつと初めて出会った日のこと
去年のことだった
クラスに転校生がやってきた
緑色の髪の右目の下にほくろがある明るい雰囲気のやつ
そいつが東雲 東だった
名前を見たとき漢字だけを見れば回文になってるな、とそれぐらいのことしか思ってなかった
あいつはたまたま俺の後ろの席だった
それであいつはたまたま俺に話しかけてきた
「君なんていうの?」
「、、、雫」
「そっか、きれいな名前だね」
きれいな名前
初めてそう言われた
女っぽいとか気色悪いとか今まではずっとそう言われてきた
こんな風に言ってくれる奴は初めてだった
「別にきれいじゃないと思う」
「そうかな?俺はすっごくいいと思うよ、髪色とも似合ってるし」
こいつは他のやつとは違う
そう思えた
「、、、ありがと」
そこで俺は異変に気付いた
客が一人も入ってこない
少ない時間帯ではあるが最後にレジ打ちをしてから30分は立っている
その時店長の松村さんが走ってきて俺に言った
「水溜君!レジやめて!すぐに向かうよ!」
酷く焦っているようだった
「どこに、、、ですか?」
「学校に!今町が大変なことになってるんだよ!」
/
俺は松村さんに避難するように言われたがどうしても家のことが気になってしまった
嫌、家というより妹のことか
「絶対に大丈夫なんで、お願いします」
「、、、じゃあ私は先に行ってるからね!水溜君も急ぐんだよ!」
そして松村さんは走っていった
俺は荷物をまとめ、すぐにコンビニを後にした
町には謎の化け物がそこらじゅうをうろついていた
動物のようなものもいたり人のようなものもいた
時折町のどこかから悲鳴が聞こえてきて俺は気が気じゃなかった
きっと妹は、唯月はもう学校にいる
だから俺のこの行動は無駄だ
でも
もしもまだあいつが家にいるのなら
その可能性を捨てきれずに俺は家まで走った
俺は運よく化け物に襲われずに家に着いた
疲れを感じているが無視して俺は家の扉を開けた
、、、母親が猫のような化け物に襲われていた
そいつは俺に気が付くとすぐに叫んだ
「雫!今までどこをうろついていたの!早く助けなさい!」
聞きなれた、聞きたくない声
けれど、その声に反応するより先に二階からもう一つの悲鳴が聞こえた
唯月だ
「雫!早くしなさい!何のために産んだと思っているの!」
俺は迷わず二階に走り始めた
「俺はお前のことを親だと思ったことはない、お前のために何かしようなんて俺は一ミリも思わない」
そう言い捨てて、俺は振り向かなかった
/
二階では縫いぐるみのような化け物が唯月を襲っていた
俺はすぐにそいつに蹴りを入れた
だがそいつはびくともしなかった
でも標的を俺にすることはできたようだ
ぎこちなく首を後ろに回したそれはすぐさま俺に襲い掛かってきた
俺はすぐ傍にあった掃除用の道具でそいつの腹に一撃入れた
でもそれは止まることを知らず俺に覆いかぶさってきた
想像以上に大きな図体は俺のことを完全に抑えつけた
そしてそいつは俺の肩をその大きな口で噛んだ
「、、、!」
痛い
親父にぶたれた時の何倍も痛い
思わず力が緩みそいつに潰されそうになる
その時だった
その縫いぐるみの力が一気に緩んだ
そしてそのまま動きを止めた
わけがわからず混乱していると一人の男が入ってきた
ぼさぼさの髪の毛で目が隠れている紫と黒の混じったような色のロングコートを身にまとった男
「大丈夫?生きてる?」
「俺はいいから、、、妹を、、、助けてやってくれ」
痛みにこらえながら俺はそう言って意識を失った
/
俺が目を覚ました場所は学校の保健室だった
俺のそばには先ほどの男が座っていた
「起きた?」
「、、、ありがとう、ございました」
誰だか分らなかった
でも助けてくれた
それだけは確かだった
「、、、唯月は、妹は無事ですか?」
彼は一拍おいて答えた
「重症、死にかけ、でも生きてる」
生きてる
それを聞いて俺は少しだけ安心した
「ごめんね、君の母親を助けられなかった」
、、、間に合わなかったのか
だが悲しいという感情は少しも湧いてこなかった
「俺は警察の異常事案対応班の5番隊隊長、時雨 龍星」
「異常事案対応、、、班?」
「そそ、あんま表側には出てこない裏の警察みたいなもの」
じゃあこれは警察にとって異常なものであるということか
大規模な何か非現実的な力によって行われた大量虐殺、、、
もしこれからも妹が襲われないという保証はあるのか
安全だという保証はあるのか
、、、
「すみません」
「ん?」
「俺をあなたの5番隊?に入れてくれませんか?」
時雨は目を細めていった
興味を持ったという目で
「なんで?」
「妹を守るためと」
一息ついて俺は言った
「妹をあんな目に合わせたやつらを細切れにするため」
オマケ
キャラの名前
水溜 雫 髪の毛は水色
水溜 唯月
二話の緑髪の男の人の会話
「あの、、、隊長」
「なんや?」
「この学校って隣町に隣接してますよね?しかも避難所として使う予定の場所は300mもないほどの距離です」
「、、、」
「あいつらは心波町から進行を広げていないようですし、、、バスじゃなくてもいいんじゃないですか?」
「、、、」
「バスだったら襲われたりして転倒でもしたら被害はすべての人に及びますし、、、」
「もういいやろ、これ以上はやめてくれ、、、他の隊のやつもつれて徒歩で安全に避難させるぞ」
「了解です」




