2. 処遇
「んで、心波町の事件の首謀者はわからず多くの住民が死に4番隊も壊滅っちゅーわけか?」
「これは異案の存続に関わるかもねー」
「、、、笑いごとちゃうぞ」
「そして4番隊隊員八村、中部、春花を殺害した疑いがかかっているのが二星 竜の娘」
「二星 未奈ということだな」
/
音が遠くて、体が重い
まぶたを開こうとして、うまくいかない
「、、、二星」
名前を呼ばれて、少しだけ意識が浮かび上がる
知らない天井だった
息を吸うと、消毒液の匂いがした
動かそうとした指先が、ひんやりと冷たい
例えるなら氷のように
あれ
私、どうなったんだっけ
、、、
そうだ、あの青髪の男に殺されかけたんだった
思い出したくない記憶が次々と湧き出てくる
「あ、ああああ」
しかし私の声を遮って先ほどの声が入ってくる
「二星 未奈」
低い声で名前を呼ばれて、私はゆっくり顔を上げた
向かいに座る男は、書類から視線を外さない
「現時点で、君は重要参考人だ」
「同時に」
一拍、間が空く
「状況次第では、死刑対象になる」
言葉の意味が、すぐには頭に入らなかった
「、、え?」
自分の声が、ひどく間の抜けた音に聞こえる
「心波町で発生した事案 複数名の死亡 第四班の壊滅 そして、能力の発現」
男は淡々と続けた
まるで天気の話をしているみたいに
私は一つ一つの単語の意味は分かっても何を言っているのかわからなかった
「君が直接殺害したと断定されたわけじゃない、が死体の状況と君の能力から見て上は君を犯人ではないかと疑っている」
私は、何も言えなかった
「安心しろ、と言うべきかは分からないが」
男は、ほんの一瞬だけ言葉を選ぶ
「処分が決まるまでは“保護”という扱いになる」
保護
そう呼ぶには、あまりにも冷たい言葉だった
「では俺は行く、逃げ出したりなんか考えるなよ」
男は立ち上がりその場を離れようとする
「ま、待ってください!一体どういう」
しかし彼は私の呼びかけに答えずその場を離れて行ってしまった
/
ここに来てから何時間ぐらいたっただろうか
町に謎の怪物が表れてからここに避難してかなりの時間がたつ
クラスメイトの9割がたはもうここにいるのだが二星や有馬、そして雫が見当たらない
怪我をした人は保健室のほうで簡易的な治療をしてもらっているらしいがそこにいるだろうか
まだ町に置き去りにされていないだろうか
、、、考えたくはないが死んでしまってはいないだろうか
そんなことを考えてたらグレーのロングコートを身にまとった緑髪の男が体育館に入ってきて言った
「では皆さんには今から隣町の墨谷町に避難してもらいます、僕ら二番隊が同行するので安心してもらってええよ」
二番隊
今この事件の対処に当たっている警察の部署の部隊らしい
正直なんのこっちゃわからないが非現実的なことが起こりすぎてる今の俺は
「へーそういうことね」
と思うしかなかった
他の警察の人間が入ってきた
見て警察とはわかるのだが服装は普通の警察のそれではないと感じた
「まって!」
突然隣から大きな声が上がった
猫宮だった なにしてんだあいつ
「未奈はどこ?」
あいつのことを心配していたらしい
まあいつも仲良かったし不安になるのも無理はないと思った
「知らん、もう護送用のバス待っとるからはよ行ってくれ、君一人の行動で全員の助かる機会を棒に振ろうってのか?」
異様なほど早く返答が来た
確かに組織としては予定を乱されるのは好ましくないがここまで冷たいものなのだろうか
「、、、」
猫宮は黙っていた
緑髪の男はそれを見て次の行動に移った
「ほな皆さん移動しましょか」
その時
「東雲、これ預かっといて」
いきなり猫宮は荷物を俺に押し付け走り出した
「は?おい待てクソガキ!誰か追いかけろ!」
彼に焦りが見え始める
あいつ、何をしようとしてんだ
だが今更引き留めようとしても無駄だと分かっている
幼馴染だからあいつのことはよく知ってる
「、、、怪我すんなよ」
/
あの男が部屋を出てから1時間以上はたった
時間はあったが私の心は落ち着くことを知らなかった
私を助けてくれた彼、一葉さんはどうなったのだろうか
不安だけが心を埋め尽くしていく
「おい」
突然声がかかった
「こい」
痛む体を引きずり歩く
このあと私はどうなってしまうんだろうか
先ほどの男が言っていたように処刑されてしまうのだろうか
「これから私どうなるんですか」
震えた声でそう聞いた
返事はなかった
やがてその部屋の前についた
学校の応接室だった
「入れ」
そしてその部屋に私は足を踏み入れた
その部屋には4人の人が座っていた
そのうち一人は見たことがあった
お父さんの同僚の空閑さんだった
よくお父さんが家に連れてきては一緒に飲んでいたのを覚えている
彼も私に気づいただろう
でも目を合わせようとはしなかった
「二星 未奈、であってるな?」
眼鏡をかけた賢そうな男がそう言った
「はい、、、」
「八村、中部、春花隊員の殺害、加えて心波町で発生した一連の騒動」
淡々と、言葉が並べられていく
「君は、その現場に居合わせかつ、騒動を引き起こした者の関係者と判断された」
一拍、間が置かれる
「以上の理由から、二星 未奈を処刑することが決まった」
は?
もうわけわからない
これまでずっと訳が分からなかったのがついに頂点に達した
「ま、待ってください!私は殺してなんかいないしあいつらの関係者でもありません!」
そう反論するが眼鏡の男は淡々と告げる
「じゃあ君が能力を持っている理由はどういうことだ?」
能力?
ほんとに理解が追い付かない 私はここにいるのにいないような感覚に襲われる
「遺体はすべて水に濡れていた、君のその氷の能力が溶けたものとみていいだろう」
「君の前にあった氷塊も溶けてたから普通の氷より溶けやすいのかな?わかんないけど」
淡々と話だけが進んでいく
「まあそういうことだ、悪く思うな」
その言葉と同時に空閑さんが立ち上がる
その手には刀が握られている
「、、、ここでやるんですか?一番隊隊長殿」
「ああ」
突然のことに私は腰を抜かした
震える体で後ずさりするがすぐに壁まで来てしまう
逃げ場はなかった
「嫌だ、、、」
声にならないまま、頬を冷たいものが伝った
心の奥が一気に冷える
その時
「待てやクソガキいいいいいいい!おい待てその部屋だけは入んなあああああああ!」
怒声と同時に扉が開き
杏が部屋に飛び込んできた
「はぁ、はぁ、、、未奈はやってないです!」
「おいクソガキ、、、殺すぞ、、、はよ戻れ、、、」
息絶え堪えになりながら緑の髪の男も入ってくる
「うるせえ!親友が殺されかけてんのに素直に戻るバカがどこにいるんだよ!」
「、、、杏」
空閑さんが杏の方向を向く
鋭いにらみにも杏は怯まずに行った
「私窓から見てました、未奈が青髪の男と戦って凍らせてるところ!」
「はあ?バカちゃうかこいつ」
「続けろ」
空閑さんがそういった
「そいつは水の刀?みたいなので門番やってた人と未奈を連れてきてくれていた人たちを」
杏はそこで言葉を詰まらせてから続ける
「殺してました」
「、、、水の澱か」
澱?
聞いたことない言葉が出てきた
「だがこいつの証言が嘘、彼女を助けるための偽りの可能性もあるやろ?」
「でもお前らは見てねえんだろ?」
杏は一歩も引かずに続けた
「ただの現場の様子見てそう決めただけだろ?」
緑髪の男は苦虫をつぶしたような顔をした
沈黙が流れる
呼吸の音だけが部屋に響く
「様子見、でもいいんじゃない?」
ぼさぼさな髪で目が隠れている男がその沈黙を破った
「ビビりすぎなんだよあんたら、犯人かもわかってないのに殺そうって」
「上の決めたことだ」
「それはさっきまでの話でしょ?」
彼は肩をすくめながら言った
「今は証言が出てる、だから判断を改める、間違ってる?」
「、、、上に伝えておけ」
空閑さんの表情が少し緩む
「保留にする、と」
「ほいほい、じゃあこいつらは俺の部隊で預かっとくねー」
「余計なことはさせるなよ」
助かっ、、、た?
張りつめていた空気が、ゆっくりとほどけていくのが分かった
肩に入っていた力が抜けて、今さらのように全身が痛むことに気づく
傷がまだ治りきっていないからだろう
でも呼吸が、ちゃんとできている
それだけで、胸の奥が少しだけ軽くなった
隣を見ると杏も床に座り込んでいた
さっきまでの勢いが嘘みたいに安心しきった顔をしている
「んじゃ未奈ちゃんだっけ?あとそこの子も、ついてきて」
/
そのあと、詳しい説明もないまま私たちは二階の理科教室へ移動させられた
「俺は時雨 龍星、突然だけど君らには僕の部隊、5番隊に入ってもらうよ」
今の時点では守られているのか、管理されているのかまだ分からなかった
「え、私も?」
杏がきょとんとした顔で尋ねる
「うん、君の証言が嘘の場合、君も関係者と見れるからね」
一拍おいて彼は言った
「さて何から話そっか?」
おまけ キャラの名前
空閑 達也
時雨 龍星
東雲 東




