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1. 降り始め


ピピピピ、と

無機質な電子アラームが、朝の静けさを無理やり引き裂いた

夢と現実の狭間を彷徨っていた私はその音に無理やり叩き起こされる

半分寝たまま画面を覗き込んで、次の瞬間、完全に目が覚めた

「へ?」

今すぐ家を出ても、バスの出発時間に間に合うかどうか怪しい

なぜこうなった?今日はよりにもよってお姉ちゃんの誕生日だ

アラームはかけていた、カフェインを摂った覚えもない

、、、でも頭の片隅に朧気な記憶が残っている 

お姉ちゃんの頼みを断れずに遅くまでゲームをしてしまいそのまま死んだように布団に倒れこんだこと

、、、つまり夜更かしのせいだ

とにかく今すぐにでも家を出て学校に向かわなければ

制服を引っ張るように着替えて、カバンを掴む

カバンの中身を確かめる暇もない 昨日の自分がすべて用意してくれていることを祈りながら階段を駆け下りる

一階の台所にはお母さんがお姉ちゃんの誕生日のための料理を朝から準備している

お母さんはこちらの慌てっぷりを見て、くすくすと笑いながら言った

「おはよう未奈、2分後にバス出ちゃうわよ」

「おはよお母さん!朝ごはん帰ったら食べるから置いといて!」

お父さんもとっくに仕事に出ており、家に残っているのはお母さんと私だけのようだった

なんでお姉ちゃんは起きれてるんだよ

そんなバカみたいなことを頭に思い浮かべつつ玄関まで走りながら靴を履き、ドアを開けた

「いってらっしゃい」

ドアの閉まる音が、やけに大きく響いた


/


結果だけ言うとバスには間に合わなかった

バス停の前の曲がり角を曲がった瞬間

バスは無慈悲に走り出した

「あ、あはは、、、」

全力で走っても間に合うわけがない

遅刻、説教、反省文

この三点セットを叩きつけられると想像すると涙が出そうになる

もういっそのこと学校サボってしまおうか

そんなバカなことを考えている時だった

すぐ傍に黒色の車が止まり、窓が開いた

そしてそこから一人の少女が顔を覗かせた

「みなちー、どしたの?」

私の親友の猫宮 杏だった

「え?杏?バス通学じゃ、、、え?」

「えーと、寝坊した!だからお父さんに送ってもらってる!」

そして少し間を開けてこちらを見た

「その様子を見るに、、、みなち、寝坊しましたな」

バレた すぐにバレた

まあバスの発車時刻を過ぎてるんだもんな

、、、もうこれしかない

高校生にもなって恥ずかしいがこれしかない

「杏!できれば私も、、、」

言い終わる前に、彼女はにやっと口角を上げ言った

「、、、もしよかったら乗ってく?」

、、、持つべきものは友達だなぁってしみじみと思った


/


教室に入ると、いつものざわめきが耳に入ってきた

笑い声やチャイム前の落ち着かない空気

いつも通りの普通の教室だ

「あ、未奈おはよー、バス乗ってなかったけど寝坊でもしたの?」

二星(ふたほし)にしては遅いよな」

クラスメイトがざわざわと集まってくる

あんまりうるさいのは好きじゃないけど、こういうのは嫌いじゃない

「うん寝坊しちゃって、杏のお父さんが車で送ってくれた」

ちょうど教室に入ってきた杏を指さしながらそう言う

「でたわ寝坊常習犯」「定期買った意味まじでねえだろ」

「月に25回以上は寝坊してるからな」「逆に寝坊してなかったら不安まである」

杏は少し頬を膨らませながら言った

「いいじゃん三大欲求には逆らえないんだし、むしろ睡眠欲以外は普通の人より少ないんだから!」

ちょっと横やり入れてみるか

「前一人で3人前の大食いメニュー食べてたのに?」

杏の殺意のこもった視線が私を刺す

でもクラスメイトの呆れと驚愕の含まれた視線が杏を刺す

「お前らST始めるぞー席につけー」

思わず吹き出してしまいそうなのをこらえながら私は席につく

朝のホームルームでは重要なことはあんまり言われないため気を抜いてぼけーってしていても大丈夫

多分真面目に聞いてる奴いない 、、、そうに違いない

自分の中で勝手に変なことに結論をつけているうちにホームルームは終わっていた

少し眠気が残っている私は机に突っ伏した

ほんとに昨日夜更かししなかったらよかったな

そんなことを考えているとクラスメイトの東雲が近づいてきた

「移動授業だぞ、起きろよ」

「うーい」

、、、やべ

化学の教科書忘れた


/


授業は、特に何もなく過ぎていった

ノートを取り、欠伸を噛み殺し、時間が過ぎていくのを眺めていた

「んじゃこれでLT終わるぞー」

先生が教室を出て行ったあと、私はプレゼントを受け取りに行くためにすぐに下校の準備を始める

「みなちー、この後暇ならカフェいかない?」

と私より早く支度を終えた杏が言ってきた

「ごめん、今日お姉ちゃんの誕生日プレゼント受け取りに隣町のショッピングモールまで行かなくちゃいけなくて」

「ほへー、じゃあ楽しそうだしついていきますか!」

いつの間にか杏の同行が決定していた

まあ一人で行ってもあまり楽しくないしいいアクシデントだと思おう

その後私たちは電車に乗って隣町まで行きプレゼントの受け取りに行った

そこそこいい値段のするシャープペンだ お姉ちゃんと受け取った時の表情が楽しみだ

前ここに来たときは在庫がなく取り寄せという形になったのだ

その後少し時間に余裕ができたのでカフェに寄ったりクレーンゲームにお金を食べさせたりした

だんだんと暗くなってきて夕日が山に沈み始めたので帰ることにした

少し遊び疲れてしまったからだろうか

気づけば私たちは居眠りをしてしまった

ちゃんと起きていれば気づけただろうに

電車に乗る人がやけに少ないこと

窓から見える景色の中に人がいないこと


/


ホームに降りた瞬間、静かすぎることに気づいた

こんなものだっけ

平日だからだろう

そう思おうとしたのに、視線が勝手に周りを探してしまう

それでも、人の姿は見当たらなかった

「、、、ねえ、杏」

声を落として呼びかける

杏も同じことを思っていたのか、少しだけ眉をひそめて言った

「、、、この時間ってこんなに人少なかったっけ」

その一言で、胸の奥に溜まっていた違和感が、はっきり形を持った

無意識に、改札の方を向いていた

、、、人がいない

その事実に気づいた瞬間、背中が冷たくなった

足音が、自分たちの分しか聞こえない

電車の走る音はあるのに、

話し声も、咳払いも、スマホの通知音すらない

その時だった

町のほうで悲鳴が聞こえた

耳に刺さるような高い音が微かに聞こえた

普段なら聞こえないほどの小さな声

しかし今はなぜか異世界かのように静かだ

だからその声に気づいてしまった

「今の、なに?」

そう口に出したのに、確かめに行こうとは思えなかった

胸の奥がざらついて、気分が悪い

心配よりも先に、

この声が聞こえた理由を知りたくなかった

「、、、未奈、早く帰った方がいいかもしれない気がする」

杏の言う通りこのままここにいたらどうなるかわからない

「、、、そうだね、杏」

「うん、、、また明日」

、、、、、

杏と別れた後は脇目も降らず走った

嫌な雰囲気のする方は避けてとにかく家まで走った

体が汗を伝う 足に痛みが走る

誰とも出会わず自分の走る音しか響かない町で走り続けた

走った 走った 走った

、、、、、どれだけ走っただろう

いつもならバスを使って帰る距離を走ったんだ 相当な時間を走ったに違いない

満身創痍になりながらも強張る体を無理やり動かし扉に手をかけた

家からは嫌な雰囲気が漂っていたけれどもう考える力何て残っていなかった

やけに大きな音を立てて扉が開いた

そこには知らない男が立っていた

それは黒いロングコートを羽織っていて中折れ帽子を被っている

見ているだけでどこまでも沈んでいきそうなほど濃い青色の髪をした男

そいつが母の亡骸を引きずっていた

「、、、へ?」

何が起こった? お母さんが死んでいる

こいつは誰だ? 知らない

お姉ちゃんとお父さんは無事か? わからない

情報が完結しない

落ち着けばわかるはずのことも混乱が渦を生みあやふやにしてしまう

その時男の口が開いた

「誰?」

逃げ出したい でも足が言うことをいかない

泣きたいたい でも涙が出ない

代わりに、胸の奥が水で満たされていくみたいだった

「、、、まあいいか、見られちゃったし死んで」

彼の手にはいつの間にか青い刀のようなものが握られていた

嫌だ

怖い

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い

私の中の感情がすべて恐怖で埋め尽くされ何も考えることができなくなる

その時だった

私は家の外に放り出されていた

お父さんだった

「お、お父さん!?」

「未奈そいつらと逃げろ!ここは俺が何とかする!」

放り出された私を見ず知らずの男が受け止め、そのまま走り出した


/


心音が少しずつ落ち着いてくる

恐怖で埋め尽くされていた心がだんだんと晴れてゆく

「おい、大丈夫か?」

私を抱えている男がそう尋ねた

周りを見渡すと私とその男、そしてもう一人女の人がいることに気づいた

私がその女の人を見ているとそれに気づいた彼女は言った

「無理しなくていいからね、落ち着いたらでいいからねー」

「あ、貴方たちは?」

ようやく声が出た

「俺は一葉(ひとつは) 白狼(しろう)、お前の親父の部下」

「私は春花 小綿、わたぐもって呼んでねー」

お父さんの部下?

お父さんは警察で働いている じゃあこの人も?

「あ、あのあれって、、、何なんですか?」

気になっていたことを聞いてみることにした

「今は気にすんな、それよりまずは自分の安全を確保しろ、避難所になってる学校まで連れていく」

「友達もみんなそこにいるだろうから安心していいよ」

、、、あれが何者なのかはわからなかったけど

安心していいよ

その一言で私の緊張はほとんどほぐれた

緊迫した状況だというのに表情が和らいでしまう

「もう着くぞ」

気が付くとそこはもう学校のすぐ近くだった

私だと30分ぐらいかかる距離をあっという間に走ったのか

「すごい、、、」

「この角曲がったらそこにいる門番のやつにお前を引き渡す、あとは安全な状況になるまで学校で待っとけ」

そういいながら彼は角を曲がった


あの男がいた

深い青色の髪の男

気が付くと私と一葉さんは壁に打ち付けられていた

「っ!!!」

「白狼!その子連れて早く逃げて!私が少しでもじ」

彼女がしゃべっている最中に男が刀を一振りした

それで春花さんは死んだ

彼女の首が地面に転げ落ちた

「あ、ああ、嫌、嫌だ、う、あああああああああああああ」

言葉にならない悲鳴がでる

「逃げるなよ、めんどくさい」

逃げなきゃ

他のことは忘れていい 今は逃げろ

体を動かそうとした が私の足は切りつけられていた

「ああああああああああああああ」

喉がちぎれそうなほど声が出る

そんな私を無視して男は私を切りつける

背中 腕 手 太もも

、、、もう動けないほど切りつけられて

心も体もズタズタになって

視界が暗くなっていって  


/


異様な雰囲気がした

死にかけのその女から放たれるようなものではない

明確な殺意だった

そして彼女は立ち上がった

そのまま腕を前に突き出した

男は身構えた

すぐにでも反撃の体制に移れるように


それよりも先に彼の体は凍った

彼女が突き出した腕の先から氷山の一角のような氷が瞬く間に彼を包み込んだ

彼が動くことはなかった

彼女はそのまま地面に倒れこんだ


おまけ キャラの名前

二星 未奈

猫宮 杏

二星 竜

一葉 白狼

春花 小綿

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