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16. 私のなりたかった光


「お前らどっか行け、足手まといだ」

その言葉に、思考が止まる

「え?でも松野さん一人じゃ、、、」

死んでしまうんじゃ

そんな不安から思わず言葉が漏れ出た

「聞こえなかったか?足手まといって言ったんだ お前らがいる方がやりにくいんだよ」

足手まとい

確かに前の戦いでも私は気絶しっぱなしだった

明らかにお荷物だろう

それに私は彼に信用されていない

なら

「わかりました、どうか死なないでくださいね」

素直に従おう

痛む体を引きずりながら外へでる

でも私にもできることはある

応援を呼ぶんだ

もしかしたら時雨さんたちはもう任務を終え戻っているかもしれない

松野さん一人なら負けてしまうかもしれないけどあの二人がいれば大丈夫なはず

そのためにも一刻も早く向かわないと

これ以上私を守ってくれる人を亡くさないように


「自己犠牲?でも残念 私は誰一人として逃がさないよ 戦闘能力の高い貴重なサンプルだもん」

「やってみろよ クソ花」


/


「なんで繋がらないの、、?」

さっきと同じようにやはり通信は繋がらなかった

さっき刻之さんから連絡が来たときは難なく使えたのに

「雫君、私はあんまり動けない それで通信もつながらない だからいざとなったら雫君が時雨さんたちを呼びに行って」

共に走る彼に伝える

「わかった、、、けど」

彼は進む足を止め刀を構える

「どうやら外に出ることすらできるか怪しいな」

道の先には触手が這いずっていた

それには無数の目玉がついており、そのすべてが違う方向を向いていた

「、、、まだバレてない?」

小さく声を落とす

「静かにいくぞ」

武器を構えつつ静かにそいつがいる手前の角まで歩く

でもその時後ろから大きな音が聞こえた

壁に何かがたたきつけられるような音

体が、止まる

心臓が跳ねた

元からよくない体に追い打ちをかけてしまった

でもそれより最悪だったのが

音がした方を向いた触手が私たちをその無数の目で捉えたことだった

「逃げるぞ未奈!」

その触手は体から生やした腕を使い私たちに迫ってきた


/


「いい攻撃だねぇ でも顕澱も使わないなんてなめられたもんだなあ」

目の前の澱は楽しそうに、それでいて少し残念そうにつぶやいた

「まあ戦いに向いてるもんじゃないんでね」

血を拭う暇もなく再度刀を構える

「まあ使わずとも君は十分強いよ でも私ほどじゃないけどね」

次の瞬間死角から触手が走る

反射でギリギリで受け流す

元々俺がいた場所は大きくえぐれていた

「そうかよ、まあ俺は耐えれば勝てるからこのままのらりくらりさせてもらうがな」

刀を構えた状態で集中する

意識を足にやる

他のことは考えない

断命(たちきり)

大きな音とともに体がすさまじい速度で動く

顔を起こすと澱の胸元には大きな傷がついていた

でもそいつは笑っていた

痛みがないかのように

「面白いねその攻撃 体の他の部分への意識を絶ち一か所に集中する それでこんなバカげた力が出せてるのか」

そういった矢先、澱は先ほどの俺と同じ構えをした

、、、そんなわけ

そう考えが行き着く前に俺は腹に一撃を喰らっていた

「っぐ、、、!」

受け身もとれずに壁にたたきつけられる

口の中が血の味で染まる

「こういうこと?」


/


狭い廊下が、どこまでも続いている

曲がる

また曲がる

同じような景色ばかりでどこにいるのか分からなくなる

「出口はどこ、、、」

そう言っている間にも後ろから迫ってくる音は止まない

べちゃっべちゃっと無数の腕で這いずってきている

振り返らない

振り返る余裕なんてない

走るたびに体が軋む

毒の影響か視界も少しずつ滲んできている。

「、、、くそ」

小さく吐き捨てる声

それでも止まれない

どんだけ

走る

ただ走る

「あ」

この道、見たことがある

そうだここに入ってきたときに見た道だ

この先の角を曲がったら階段だ

やっとだ

これで松野さんも助かる

そう思っていたのに

次に目に飛び込んできたのは階段の真ん中にいる白衣の少女だった

「遅かったね」

その白衣の中から無数の触手が姿を現す

もう逃げられなかった

思わず俯いてしまった

死ぬんだ私

結局誰も助けることのできないまま

刃物が肉を貫く音が部屋に響いた

、、、?

痛みはなかった

でも足元には血が池を作っていく

その血は目の前から流れてきていた

「、、、早く逃げろつったろ」

松野さんの腹を触手が貫いていた

「え、なんで私なんかを」

声が震えていた

目の前の状況を理解したくなかった

「、、、おい二星」

口から血が垂れている

その口から松野さんは言った

「お前のこと、、、信用してよかったのか?」

「長ったるい」

そう澱が言い放った瞬間、触手が彼の腹から引き抜かれる

ぽっかりと開いてしまった穴から先ほどまで出口を無くし行き場を失っていた血が溢れだす

そのまま一言も発することなく糸の切れた人形みたいに倒れた

「今度こそ死んだかな しぶといんだよ」

澱は汚いものを見るかのような目をしていた

やっぱりこいつらは

「殺す」

心が黒く染まっていく

感じたことのない感情で満たされていく

顕澱 影燈


/


気が付いたら俺は病院の入り口にいた

外は夕日が差しており影が町を飲み込んでいっていた

、、、

『雫君?大丈夫ですか?二人は?』

通信機器から刻之の声が聞こえる

病院から出たからか

「刻之さん、増援を頼みます」

その時視界が揺れ始めた

あーやっぱきついな

無理して耐えていたけど毒が意識を保てるかどうかのところまで俺を侵食していた

立つことが困難になり地面に膝をつく



(「雫君、今から外まで送る だから増援を呼んで」)

(「は?お前は」)

(「死なないよ、安心して」)

(「ちょっと待っ」)



「死ぬなよ、未奈」


/


私の影が一気に膨れ上がったかと思った矢先、それは一瞬で廊下を覆いつくした

どこまでもどす黒くそれは光を飲み込んでいった

「、、、なんでお前が心象投影を使えるのさ」

澱が何かを呟く

まあもうどうでもいいけど

一歩踏み出す

そしてその足は影へと沈んでゆく

「、、、うわぁ」

情けない声を出しながら沈んでゆく

やがて私の体のすべてが影の中へと消えていった

影の中はなんていうか、どろどろとしていた

体にまとわりつきその動きを鈍くしてゆく

「気持ち悪い」

丁度上を見上げるとそこには澱が戸惑っている様子を見せた

私を殺そうと影に触れるも入ることはできず、外からは中の様子は見ることができない

私は何もないところに足を向け、何もないところを踏み上へ登ってゆく

私の顕澱 影の中を自由自在に移動できる、といったところだろうか

、、、まあどうでもいいか

影の中で澱に一番近い箇所までたどり着く

剣を抜き澱の足首を切る

「!?!?」

視覚外からの一撃は避ける暇さえ与えない

腱は切った あとは

情けなく這いずって逃げようとしているそれの腹を下から刺した

刺した刺した刺した

さっきまであんなに恐ろしかったこいつが

今はただの虫けらにしか見えない

薬の澱 だっけか

私は影から出るとそこにいる虫けらに言ってやった

「治せよ、死ぬぞ」

そう言いながら切る

手 肩 足 背中

弱弱しく私に巻き付いていた触手も切った

必死になりながら治そうとしていつのが見えた そこも切った

「、、、はは」

そのまま胸ぐらをつかみ首に剣を当てる

「モルモットは私だったか」

少し力を込めた

それだけで簡単にそれは事切れた


/


「、、、よわ」

呆気なかった

結局あいつが何なのかもわからなかった

それに松野さんも失った

最期に彼は私のことを

信じてくれたっていうのに

、、、今更こいつ一人殺したところで何の意味もない

それにこれが私がなりたかった光なのか

こんなどす黒い、明るさのかけらもないようなこれが

その時、私の頭に声が響いた

〚未奈〛

聞いたことがない、でもなぜが懐かしさを感じた

〚それ、喰らって〛

、、、心臓を喰らう?

〚うん、お願い〛

、、、わかった

その死体の胸元を切り裂きそれを手にする

教科書などで見たそれとは違って紫色の無数の膜に覆われていた

まだ弱弱しく動いていた

少し躊躇いはしたが

もうどうでもいい

考えるのをやめ

喰らった


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