episode 161
ネクタイを緩め、側にあった缶ビールをごくっと飲んだ。
(そんなことまで見越して……やっぱり理由があったんだな)
不安な気持ちばかりが募ってしまって辛かった。けれど、ジェインは直ぐにもこうして解消してくれる。姉のレイラの時もそう。その頼もしさにじわりと嬉しさが込み上げる。
「そうだったんですね。でも、わわ私のために会社をって言ってましたけど、どどどいうことなんですか?」
『えへへー。それがさあ、最近壱花ちゃんとの遠距離がほとほとイヤになっちゃってさ。SOT辞めて名古屋に住もうって思ったら、どうせなら会社作って名古屋を本社にしちゃえば、気兼ねなく壱花ちゃんに会えると思ってさ。やっぱ、プロポーズすんのに、無職ってのは避けたかったし』
「そ……そうなんですか」
としか言えない。遠距離解消のために会社を作ってしまうという暴挙は理解し難かったが、ジェインの真意を知れて、まずは良かったとほっと胸を撫で下ろした。
『名古屋行きたくて、異動願いや降格願いを出してみたんだけど、玉田のやろうに全部却下されたからね』
「それはもちろんジェインさんはCEOですからそうやすやすとは。でも会社作ろうって考えちゃうジェインさんが、とてつもなくものすごいです」
『ははは褒められた! っと! そういえばさ、この前、来てくれたのに会えなくてごめんね。兄から聞いたよ』
「? いえ、もとから会えないつもりで行ったので大丈夫です。レイラさん素敵なお姉さんですね」
『兄も、壱花ちゃん可愛い!! って言ってたよ。俺のライバルになるかも!』
「? 私もレイラさん、好きになっちゃいました……ってえ?」
『ちょっと! 冗談でもダメダメ! 本人は姉って言ってるけど、本来は兄だから。でもまあ、女性を自認してるし、お姉さんって言ってあげて!』
はははとジェインが笑う。
やっと理解が追いついたのは、壱花。
「そ、そうなんですね。あまりにもお美しい方だったので、お姉さんかと……勘違いしちゃいました」
『あーーもう! 壱花ちゃんマジで良い子! レイラも壱花ちゃんがそう言ってたって伝えたら喜ぶよ。本名はレイだけど、レイラって呼んだげてね』
「もちろんです」
『チーズケーキ美味かったよ。レイラに半分持ってかれたけど。それでね壱花ちゃん、本題。まだ付き合ってもいないのにプロポーズなんてやり過ぎだと思っているかもしれないけど』
「は、はい」




