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153/163

episode 153

流石に今回のことは堪えた。引越しを秘密にされる理由が見つからないし、心当たりもない。まさか自分が知らない間に、海外とかに行ってしまうのではないか。

不安が押し寄せてきた。

顔に出ているのだろう、壱花の顔を覗き込むようにして、レイラが声を荒げた。

「待って待って、そんなことあるわよ! だって、もし万が一私が在宅中に壱花ちゃんが来るようなことがあったら、ちゃんと壱花ちゃんに会って、自分がジェインの姉だと伝えるようにって、念を押されたもの」

「え?」

「1ミリも勘違いされたくないからって。ジェインがあんなに真剣な顔で訴えるなんて、今までなかったから。前にそんなようなことがあったんでしょ?」

「は、はい。私が……じ、女性と一緒にいらっしゃったのを勘違いしてしまって」

「なに言ってるの。勘違いさせたジェインが悪いんだからね。壱花ちゃんはこれっぽっちも悪くない!」

レイラが両手を上げて、壱花を軽く抱きしめた。優しいハグ。そのハグで壱花の気持ちは少し楽になり、心が軽くなった。

「ありがとうございます」

「心配しないで。ジェインが真剣に付き合っているのは、壱花ちゃんだけよ」

「それがその……まだお付き合いしていなくて……私がまだ、」

Ohと両手を上げる。

「そうなのね」

「はい。それであの、すみませんが、これ……」

カバンからもう一つ紙袋を出した。リボンなどは着いていない。素朴なラッピング。

「直接手渡したかったので、今日は遠慮しようと思ったんですが、レイラさんにお会いできたので。ジェインさんに渡してもらえませんか?」

壱花の様子から、大切な物だと察したのだろう、レイラが丁寧に受け取り、そしてにこっと笑い言った。

「了解。預かるわ。私はもう少し片付けたら帰るけど、テーブルに置いておくわね」

「ありがとうございます」

礼を言って、その場を辞した。

去り際に、「壱花ちゃん、哀れなジェインを救ってやって!」と言われて、苦笑。

手を振って、レイラと別れた。

引越し。きっとなんらかの理由があるんだ。ジェインさんを信じよう。

「ジェインさんのお姉さん、素敵な女性だったな」

そして、その人が大丈夫と太鼓判を押してくれたことで繋がる安心感。

それに嬉しかった。

勘違いさせたくないとまで言ってくれて、ちゃんと手を回しておいてくれた。大切にしてもらえている。

「壱花、もう少し待っていてくれ。必ず君を幸せにしてみせる」

(ジェインさんを信じて待とう。そしてそれまで、自分ができることを頑張ろう)

心が、気持ちが、少しずつ踏み固められ、強固なものに変化していく。

壱花は新幹線で帰るために、駅へと向かう。

「渡したプレゼント、喜んでくれると嬉しいな」

見上げた夜空に、星が瞬いた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] そして、その人が大丈夫と太鼓判を押してくれたことで繋がる安心感 ⬆ 読者も同じ気持ちッス ( ง ᵒ̌∀ᵒ̌)ง⁼³ [気になる点] 「ジェインのお姉さん、素敵な女性だったな」 ジェイン…
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