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150/163

episode 150

考えれば考えるほど、悪いベクトルへと向かってしまう。わかっている。これが遠距離の辛さということも。以前、突然会いに行った時には、ジェインはすごく喜んでくれた。けれど、また会いに行って、その時と同じように喜んでもらえるかと言えば、最近のジェインの態度からいってそうではないような気がして、怖い。

『壱花はもう少し自分の気持ちに素直になるべきだよ』

弥一の言葉が脳裏に浮かぶ。

ジェインの気持ちにも応えたい。

やっぱり会いに行こう。手作りのチーズケーキを持って。

それから。

壱花は、タブレットとペンタブを取り出しONにした。今、仕事以外で取り組んでいる、自分自身への課題。構図を考え始めた。すると、蘇ってくる。思い出がその色彩を保って。

綺麗だと思った瞬間を、まるで写真のように切り取る。

胸の中にあるのは、ジェインとのデート。美術館に行って、そして遊園地にも行った。

記憶の中のジェインを手繰っていく。

すると思い浮かぶのは、いつも優しい眼差しで見守ってくれていたジェインの柔らかな表情。

「ジェインさん、好きです」

さっきは言わせてもらえなかったが、ジェインの顔を見て、言いたい。

心は決まった。

ペンタブを握りしめる。そして、カチカチと音をさせて、ジェインとの思い出を描いていった。

✳︎

「あーーーもうなにやってんの俺ーーー」

オンラインで壱花の顔を見れて嬉しかった。けれど。

「好きとか無理矢理言わせるのって、違うよなあ。あり得ないわ、どんだけ疲れてんのよ」

壱花に会いたかった。

けれど、会ってしまったなら。

数ヶ月前のように金曜日の夜なんかに会った日には。また家へ泊まらせて同じベッドで眠って。次には我慢できる気がしなかった。

「この前だって、ギリギリのところで耐えたんだからな」

抱きたかった。胸の中にすっぽり入る壱花。良い雰囲気だったし、ベッドの中でキスもした。

もともとグイグイといくタイプ。けれど、壱花からの信頼を勝ち取るには、優等生でいなくてはいけない。手を出すことはできなかった。

(もし、次に会ったら……)

きっとその煮えたぎる愛しさで、荒々しく抱き潰してしまうだろう、と。

仕事で飛び回っていて忙しいのもあったが、そういう理由があって、なかなか会う約束ができないでいたのだ。

(でもあと数ヶ月の我慢だ)

壱花が隣で眠ってくれたら、きっと自分も安眠できる。それくらい、壱花の側は居心地が良い。

「壱花ちゃんの誕生日までには、全部終わらせるぞーー!」

叫びに叫んで、ベッドに潜り込んだ。

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