第11話「私、ヴェルカンディアスの刺客と戦います。そしてミシロ、試練の時。」A
前回のあらすじ。
火花元気出る。剣の名前はダークルージュとわかった。抜けない。
火花とミシロは人間の殲滅を続け、宝玉の海の街「マリアブル」まであと3日程で到着するところまで来ていた。フェンリルの足は速く、予定よりも順調に進んでいたのだ。
「さすがフェンリル!足早いね~。」
岩の多い渓谷を風のように駆け抜けるフェンリルに火花は感嘆の言葉を漏らした。
「あの、火花様。この先は迂回しましょう。」
「ん?どして?」
「この先は「死者の谷ストレンド」。できれば近づきたくない場所です。ストレンドは亡霊が集まる魔界で、人間はおろか魔族すら近寄らない穢れた場所と言われているのです。」
「キモチワルイ?」
「らしいです。巨大な虫やら寄生虫やらもいるらしく、亡霊達も」
「フェンリル、左折。迂回しましょう。」
滝が見え、フェンリルが渓谷を外れようとした瞬間、私は凄まじい悪寒に襲われた。フェンリルを咄嗟に指輪に戻してミシロちゃんを抱えて空高く飛び上がったその刹那、今私達がいた場所に大量の弓矢が豪雨のように降り注いだ。
「ど、どこから!?」
「あの矢の数、かなりの敵数です!」
「不意打ちは一回までなら許す!でも舐めたことして!とりゃあ!」
火花は瞬時にスヴァローグの鎧と炎を纏い、渓谷に向かってダークルージュを振り下ろした。巨大な炎は滝の上にある林を焼き、水を蒸発させて煙が上がる。
「ミシロちゃん、気配は!?」
「さっきから音波探査魔法と動作感知魔法を併用していますが、渓谷に気配はありません!周囲400メートルに敵の気配がないんです」
「どういうこと。幻覚?」
「幻覚魔法なら矢の音や岩に当たる音はしないので、本物のはずです」
私はそのまま大きな岩へ着地すると、再び悪寒が走る。咄嗟にまた飛び上がると再び足場へ矢だけでなくナイフまで飛んでくる。
「どこから!?」
「飛んできた方向にも気配はありません!まさか、転移魔法!?でも魔法陣は無い……。」
「ミシロちゃん!今は分が悪い!一旦引くよ!」
「火花様!滝裏へ!滝裏に洞窟があります!」
滝の裏へと回ると洞窟があり、悪寒は止んだ。矢が来る気配はない。
「ふー。ひとまず安心っと。ミシロちゃん、随分と魔法知ってるみたいだね?」
「はい。私は前の奴隷では魔法研究の実験をさせられていたのです。人間が編み出したオリジナルマジックの危険性をテストする仕事でした。」
「魔法はさっぱりわかないけれどそれって、怪我とかしちゃうんじゃないの?」
「はい。今は服で見えませんが、体中傷だらけなのです。それよりも火花様、敵の正体が掴めない以上むやみに外には出られませんよ。」
「私死なないから刺さっても痛いだけだし、突っ込んでみようか」
「フェンリルの件で、火花様も死ぬ可能性があるとわかりました。あの矢がただの矢でなく、不死を無効にする矢だったら大変です!そんな矢みたことないですけど」
「優しいねミシロちゃんは。さぁてどうしたもんかなぁ。とりあえず奥に進んでみる?」
洞窟はまだ奥に続いていた。
そして外では灰色のローブを着た男達が林の中から滝を見つめていた。
「フッ。袋のねずみだ。死人の目め、ヴェルカンディアス暗殺隊の力を思い知らせてやる。全員そのまま滝を包囲して待機。我慢比べは俺達「灰の弓隊」の仕事さ。」
「マーシャ隊長、我々が先にあの魔族を打ち取ればきっと「赤の歩兵」も悔しがるでしょう。」
「そうだな。足の速い俺達が真っ先にこの大陸へこれたんだ。このチャンスを逃す気はない。各隊員へ伝達。滝を中心に罠を張り、出てきた瞬間合図を待たずに狙撃せよ。」
「はっ!」
「これで日陰者の俺達も表を大手を振って歩けるってもんだ。」
次回、夜投稿予定。




