第11話「私、ヴェルカンディアスの刺客と戦います。そしてミシロ、試練の時。」B
前回のあらすじ。
見えない敵と遭遇した火花とミシロは敵裏へ撤退していた。
パソコンの調子が悪く投稿が遅くなりました。申し訳ございません。
火花とミシロは洞窟の奥へと歩みを進めていた。ミシロの髪がさわさわと揺れ、妙な気配を感じ取っている。
「火花様、この奥に何か妙な者がいるようです。」
「なんだろう。一応私の後ろをついてきて」
私はスヴァローグの鎧を装着したまま進む。進むたびに妙な気配は強くなり肌がピリピリと痺れるような感覚に陥っていくのだ。
「火花様あれを!」
「わーおマジ!?この世界来てから二度目のドラゴン発見!」
洞窟の奥には金色に輝くドラゴンが横たわっていた。その輝く鱗からは雷が迸り、暗闇の洞窟を照らしている。
ーほう、魔族とエルフとは珍しい組み合わせだ。それに、ここに客が来るのは100年ぶりか。死にゆく我に何の用だ?-
「ひばっばばばばば火花様!六大竜の三席、ペルーンです!」
「プルーン?」
「六大竜三席ペルーン、雷を司る竜です!また伝説の竜に会えたっ!」
「へぇ、こんにちは!私は東雲火花です!たまたま洞窟に入って進んで来たらここに着いたんです。」
ーなんだ。我を討とうというわけではないのか。ん?お前、なぜ我が同族スヴァローグと同じ力を感じる?-
「あー、スヴァローグさんは死んじゃった…というか私と一つになったみたな感じなんです。」
ーそうか、奴も逝ったか。この世界は終わる。苦しまずに逝ったのなら幸運だろう。-
「あの、スヴァローグさんと言いペルーンさんといい、なぜ竜が死にかけているんですか?」
ー我らは同じ時に生まれ同じ時に死ぬ定め。世界が終ろうとしている。しかしお前は一体この終わる世界で何をしている?ー
「私は人間滅ぼしてます。ここまでの町は全部襲って皆殺しにしてきてます。」
ーはっはっはっは!なんと愚かな魔族!今更魔王ごっこか?人間など滅ぼして何になる?-
「この世界の人間は別の世界を襲って、移住しようとしているんです。しかも空にいるなんとかの女神ってのを利用して。だから私は戦っているんです。」
ーほう、人間も考えたものだな。ほんの何百年前は知識も薄く魔物ごときにひいひい言っていたんだがなー
「あの、よければ死ぬ前に私の力になりませんか?私の中にスヴァローグさんもいますよ?」
ミシロは呆れた。火花はまた神にも等しい伝説の存在である竜に死ぬなら力をよこせと言うのだ。
ーふむ。どうせ長くはない身。ならばそこのエルフ。お前に力をやろう。ー
「私じゃなくミシロちゃんに!?」
ーお前は魔族のくせに魔力が弱い。このエルフなら我の力を扱いきれるだろう。だが、簡単には渡せない。なにせ我の命と引き換えなのだからな。-
「わ、私になにを?」
ー我の力の半分を貸す。そして今この洞窟の周りにはうるさい人間が集まりつつある。エルフ、お前一人でそれら全てを倒してこい。そうすれば力全てを渡そうー
「竜の試練……ですか」
「待って。ミシロちゃんはまだ子ども、子ども?だよ!」
ー関係は無い。エルフ、目を閉じ、大きく息を吸え。-
「火花様のため!行きます!」
ミシロちゃんは言われるとおりにすると、一瞬で姿が消えた。
ーさぁ、あのエルフはどこまでやれるか。さて、お前は10分後に行くとよい-
「え?」
ーあのような幼子が一人では辛いはずだ。10分はあのエルフの試練。そのあとは好きにすると良い。若い未来を潰す気などないー
「優しいんですね。そんなこわい顔して。あの、お聞きしたいことがあります。あの空の女神について何か知っていますか?」
ーあれは因果そのもの。世の理に近い存在。-
「あの、あと80%くらいわかりやすくかみ砕いて欲しいんですが。」
ーつまり、人がどうこうできるような者ではない。-
「私、ずっとあれについて考えてて。人間は滅ぼしますけど、そのあとこの世界ではエルフやゴブリンやらが生きていくわけだよね。でもあれが落ちたら本当にこの世界は終わっちゃう。何か方法は無いんですか?」
ー因果そのものを歪める、消すというのはそれは途方もない話だ。そんなこと考えた者もいないだろう。もしかすれば、我ら六大竜の力を合わせれば可能かもしれん。-
「あと4竜、力にすればいいんですね?」
ー可能かはわからん。もしかすれば無理かもしれん。ー
「それでも。」
ー良い目だ。はるか昔いた人間の女騎士もそのような目をしていた。しかしお前、気をつけろー
「え?」
ーお前の心は闇の力を求めようとしている。魔族ならば当然かもしれんが、飲まれるなよ?-
「飲まれるとどうなるんですか?」
ーお前がこの世界を燃やし尽くす存在となるだろう。心しておけ。さぁ、そろそろ外を見てはどうだ?あのエルフ、意外と良い素質を持っていたな-
火花とペルーンが話している間、外では灰の弓隊達が待ち構えていた。静かな滝口に突如、轟音と雷鳴が走った。
「なっなんだ!?死人の目か!」
滝の下にある岩場に雷を纏った少女が立っていた。その雰囲気に飲まれ、灰の弓隊は唾をのんだ。ミシロは自身の中に入ってきた力に驚いている。
「すごい力。これがペルーンの半分なんて信じられない」
ー聞こえるかエルフの幼子。-
突如ミシロの頭の中にペルーンの声が聞こえてきた。
「あ、はい聞こえます。周りは敵だらけです。さっき襲われた時は気配なんて感じなかったのに」
ー我の力だ。雷の力で生きる者の気配を探知できる。お前、雷系の魔法は撃てるか?-
「撃てますが、雷魔法は防御系しか覚えていなくて……。」
ミシロとペルーンが話す間に灰の弓隊は武器を構えていた。
「隊長、なにか独り言を話していますが、今ならやれます」
「よし、あのエルフを撃て!」
灰の弓隊が矢やナイフ等を大量に撃った。それは雨のようにミシロの頭上に降り注ぐ。
ー試しに撃ってみろー
「わわわ!?サンダードーム!」
ミシロの周りに雷がドーム状に放出された。まるで落雷のような轟音と共に放出された魔法は矢やナイフを包みこむ。そして包み込んだ矢やナイフは射出された場所に帯電状態で弾きかえっていったのだ。
「ぎゃああああああ!」
森の中に多くの悲鳴が上がる。
「そんな!私のサンダードームはここまで範囲は広くないはず!それにはじき返す効果なんてなかった!」
ー我の力だ。さぁ、今度は目を瞑り頭の中で弓を想像してみろー
「弓……弓。」
ミシロは片膝をつき左手を握って小指と親指だけを立てた。右手は指さしのように人差し指と親指を立てる。するとそこから雷が放出され、弓と矢を形成したのだ。
ー目を瞑ったままだ。目を瞑ったまま引き絞り、放ってみろー
「ハァ!」
ミシロから放たれた矢は空中で何十本と分かれ、生き残った灰の弓隊達に正確に突き刺さっていく。滝の周りは雷の轟音と悲鳴が響き渡る。抵抗のため撃たれた矢やナイフは自動的にミシロの周りで撃ち落とされ、撃った者へと弾きかえっていく。
「わーお、すごい!」
滝の裏からそっと見ていた火花も感嘆の声を上げた。岩場から一歩も動かずにミシロは大量の敵を打倒していくのだ。灰の弓隊は隠れることをやめ全力で攻撃をかけてくるが、もはや無駄であった。次々と死体の山ができあがるのを速めていくだけである。
「そんな!あんな小さなエルフごときに!そんな!そんなバカなああああ!」
隊長のマーシャが小刀を持って素早くミシロの後ろに回り込んだ。後ろから突き刺そうと突撃するが、空中で放たれた雷の矢は突然方向を変え、マーシャの頭を撃ち抜いた。
「うわグロ。」
「これが、ペルーンの雷っ!」
5分とかからず敵は全滅し、滝には静寂が帰ってきた。
次回今夜行進予定。




