第10話「私、傷心のためちょっと休憩。そして先輩に出会います。」B
前回のあらすじ。
ミシロが発見した世界を旅する定食屋で先輩に出会う。
火花はミシロに誘われまさかの定食屋にきていた。
「さ、話はあとあと!まずはたくさん食べて行ってくれ!」
からっと狐色に揚がったエビフライや濃厚なタレのかかった焼き肉、焼き立ての餃子やラーメンなど様々な定食料理が並んでいた。
「わーおマジ!?この世界に来てから前の世界の料理なんてほぼなかったのに!いただきますっ!ミシロちゃんもほら!」
「あっはい」
火花の目は輝き、次々と食べていく。ミシロは久しぶりに火花の落ち着いた顔を見て安堵した。
「このエビフライ最高!中身ぷりぷりであつあつ!ほら、ミシロちゃん、あ~ん?」
「あ、あ~ん。美味しいですぅ~!」
そして年頃の女子二人によって30分と経たず用意された多くの定食は完食となったのだ。
「ごちそうさまでした!」
「ごち、そうさまでした?」
「ふふ、ここまでたくさん食べてもらえて食材達も本望だろうね。さて、聞きたい事があるんだろ?」
「はい。貴女はメタトロンさんに会ったことがありますか?」
「うん。私はメタトロンと契約して異世界や違う次元を旅しているんだ。」
「先輩ですね!あの、旅の目的は?」
「修行。料理の腕を極めたくてね。人を救うは食からってのが死んだ父の口癖でね。でもこの世界はもう、滅んでしまうようだね。君は?」
「私は、私がいた世界がここの人間によって滅ぶかもしれないので、人間を殲滅しているんです」
火花は言い淀みながらも素直に話した。もしかしたら怒られるかも、と思った。しかし案外普通の表情で聞いている。
「それは、ずいぶんと穏やかではないね。でも、3つくらい前の世界も人間は滅んでいた。核戦争でね。さ、コーヒーをどうぞ。ミルクと砂糖は自由に。」
「ありがとうございます。この世界の人間は救いようがない人達です。」
「たしかにここに来た異種族の話を聞くとそうかもしれないね。同じ世界にずっといられない私にはよくわからないけれど、滅ぶことが悪い事ではないんだ。」
「え?どういうことですか?」」
「滅ぶことによって新しい文明や秩序が生まれる。3つ前の世界では人間はすでにいなかったが、逆に世界は平和に落ち着いていた。かと思えば9つ前の世界では逆に人間がいなくなり異種族同士の戦争になっていたところもあった。」
話すレナさんの目はとても憂い、悲しみを持っていた。しかしその奥には輝きもある。
「いろいろな世界を旅してきたんですね」
「そう。それだけ悲しみも喜びも食を通して見てきた。だから君がこの世界の人間を滅ぼしてから、この世界がどうなるのかはわからない。もしかしたら滅ぼさなくてもいい結果になる可能性だってある。15ほど前の世界はそうだった。人間も異種族も共存していた。」
「私は……。」
「だから全力でやってみなよ。まずはやってみなきゃ始まらないし終わらない。進むんだ。」
「はいっ!ありがとうございます!」
「あ、そうだ。お弁当も包んだから、旅先で食べてよ。もうすぐ私はこの世界から移動するから。」
「また会えますか?」
「もう無理さ。同じ世界にはたどり着かないのが契約なんだ。」
「ミャノン、メタトロンさんに無料通話。レナさんと通話できるようにしてほしい」
「ファイ!久しぶりの登場で興奮しております!メタトロン様!」
ーはぁい久しぶり。ちょっと緊急で出てたの。久しぶりね黒部レナ、東雲火花。なに?通話できるようにしてほしいって?それは無理よ。世界を飛び回る彼女に繋ぐことは難しい。-
「そんな……」
「ふふ、そんなことだろうと思ったさ。もし君のいた前の世界と私のいた世界が一緒なら旅の終わりに再開できるかもしれないから諦めることはないよ。」
ー黒部レナと東雲火花は同じ世界出身よ。ー
「少し希望が見えましたね!」
ーあぁ、そうでした火花。その剣の名前はダークルージュ。まだ抜けていないようですが、もう少しのようですねー
「ダークルージュ、黒く紅い……。私にぴったりの色。」
剣を眺めていると、かすかに店内が光りだした。
「さて、お話の途中ですまないが、そろそろ時間のようだね。店から出ないと君達も違う世界に連れていかれるぞ?」
「火花様行きましょう!」
「わわわ!はいこれお代!」
私は価値がわからないため金貨5枚を置き、(のちにミシロちゃんに確認すると払い過ぎだった)店を慌てて飛び出した。
「君達の旅の安全を祈っているよ!元の世界で会えたらまた食べに来てくれ!」
「ありがとうございました!」
店が光に消えると、森には何もなくなっていた。
「ミシロちゃん、ありがとう。おかげで元気でたよ」
「火花様」
「やってみないと始まらないし終わらない、か。よし!さぁ旅の続きだよ!剣の名前もわかったし!」
「はい!火花様!」
「ファイ!ご主人様あああう!」
「うわうるさ。」
火花の瞳にまた力強い光が宿り、ミシロは思わず微笑んだ。
次回、ヴェルカンディアスからの刺客との戦いが始まる。




