メリーさんとアイちゃん
メリーさんとアイちゃん
【集月芽璃依と白雪と福大】
カランカラン
「いらっしゃいませ。人形の集月へようこそ。」
少女様は店に入るなり、
甲高い声で笑いながら走り回り、
次々とメリーさん人形を抱きしめていく。
私は静かに見ております。
少女様は自分より大きな人形に抱きつき、
小さな人形の髪を丁寧に梳かし、
頬を寄せ、
まるで本物の赤子のように扱っていた。
御父様は礼儀正しく頭を下げて下さいました。
「こらアイ。なんでも触ってはダメだよ。すみません。」
私は微笑みました。
娘様は人形を選びながら、
御父様と楽しそうに会話をしております。
「パパ?どっちが良い?」
「うーん……こっちかな?」
「えー、こっちはちょっと違うよ。」
「そうなの?」
私は静かに、ただ見ております。
娘様が選んだのは、
抱きしめると腕の中にすっぽり収まるサイズのメリーさん人形でございます。
その人形は——
淡い桜色のワンピースを着て、裾には細いレースが丁寧に縫われています。
髪は銀色のゆるいウェーブ。
前髪は少し長く、片目にかかっております。
瞳は薄い水色で、光の角度によってはガラスのように透けており、表情は微笑んでいるようで、どこか寂しげでございます。
靴は白いボタン付きの小さなブーツ。
娘様はその人形を抱きしめたまま離しません。
「このお人形さんが良い。よろしくね。メリーさん。」
「大事にするんだよ。」
「パパありがとう。大好き。」
「ああ・・・私もだ。」
「ずっと一緒だよ。メリーさん。」
「ねぇパパ。」
「ああ、ずーっと一緒だ。」
私はただただ、静かに見ております。
「ありがとうございました。」
娘様はメリーさん人形を抱え笑顔で手を振っております。
私は微笑み、手を振り返しました。
御父様は丁寧にお辞儀をしてくれました。
2人は手を繋ぎ、とても幸せそうな親子の様に見えます。
店の外に険しい表情の女性が立っております。
「ママァー。」
娘様が御母様に抱きついております。
御母様は素敵な笑顔で娘様を抱きしめております。
「ママ、この娘メリーさん。アイとメリーさんはねずっと一緒なんだよ。ねぇ、メリーさん。」
御母様は笑顔で娘様のお話を聞いております。
「パパ、バイバーイ。またね。」
娘様は御母様の手を握り帰って行きます。
御母様は一度も振り返りません。
「アイ、またね。メリーさんニンギョウ、ダイジにするんだよ。」
「うん、パパありがとう。パパ大好き。」
「ああ、パパもダイスキだよ。アイ。」
御父様は店の前で手を振り続けております。
笑顔で笑っております。
はい。
笑っております。
娘様が見えなくなっても、
御父様は笑い続けております。
最初は穏やかな笑顔でございました。
ですが・・・
肩を震わせ、喉を鳴らし、唾を飛ばし、下品にゲラゲラとガハハと大声でプププと押し殺したようにそしてまたゲラゲラと
笑っております。
私は静かに見つめております。
御父様はひとしきり笑った後、
娘様の前で見せていた優しい顔とはまるで別人のような、
引き攣った笑顔のまま——
娘様達とは反対の道へ歩いていきました。
私は静かに見ておりました。
「あ、あの・・・僕達そろそろ。」
私はポケットから取り出したメリーさん人形を福大様にお渡ししました。
福大様がメリーさん人形をポケットに入れると、メリーさんと白雪様が並んでポケットから顔を出しております。
可愛いらしい光景でございます。
福大様が表情が崩れるぐらいの笑みを浮かべて喜んでおります。
「また来て下さい・・・必ず。」
「うん。」
「はい。」
福大様と白雪様がメリーさん人形を受け取って下さいました。
私は笑いが止まりませんでした。
【ワタシ、メリーさん】
ワタシ、メリーさん。
ずっと棚の上から見てたの。
今日は記念すべき日なの。
あの娘がワタシを迎えに来る日なの。
ワタシには分かるの。
ガチャン。
扉が開いた瞬間、ワタシはピンときたの。
女のカンなの。
ピョン、ピョン、ピョン。
スキップしながら小さな足音が跳ねるように店に入ってきたの。
間違いないの、この娘なの。
この娘がワタシの運命の娘なの。
今日、
ワタシはカワレルの。
ワタシはダキシメラレルの。
ワタシはモドッテクルの。
ワタシはアイのアカシなの。
女の子は——
黒髪が腰まで届くほど長くて、前髪はぱっつんで、大きな瞳がキラキラしてるの。
頬はふっくらしていて、
笑うとえくぼができるの。
桜色のワンピースを着てて、
胸元には小さな黄色いリボンがついてるの。
元気いっぱいで、
そこにいるだけで周りを明るくする子なの。
ワタシこの子、好きなの。
可愛いの。抱きしめられたいの。
ワタシ、メリーさん。
淡い桜色のワンピースを着ているの、女の子とお揃いなの。
裾には細いレースが丁寧に縫われてるの。
芽璃依さんが夜なべして縫ってくれたの。
髪は銀色のゆるいウェーブ。
光が当たると少し青みがかって見えるの。
前髪は少し長くて、
片目にかかるのがチャームポイントなの。
前髪命なの。
表情はね、
「微笑んでいるようで、どこか寂しげ」ってよく言われるの。
ワタシは別に寂しくないの。
ただそういう顔なの。
ワタシはずっと女の子を見てるの。
女の子は店に入るなり、
甲高い声で笑いながら走り回ってるの。
あっちに走っては自分より大きなメリーさん人形に抱きついて。
こっちに走っては小さなメリーさん人形の髪を丁寧に梳かして。
そっちに走っては綺麗なメリーさん人形に頬を寄せて。
どのメリーさん人形も、
まるで本物の赤ちゃんみたいに可愛がってるの。
パパさんは礼儀正しく頭を下げてるの。
「こらアイ。なんでも触ってはダメだよ。すみません。」
パパさん面白いの。
謝ってるのに、ニヤって笑ってるの。
可笑しくて堪らないって感じで笑いを堪えてるの。
でも、堪えきれてないの。
気持ち悪いの。
「あ!」
アイちゃんと眼が合ったの。
アイちゃんがワタシを見た瞬間、
瞳がキラキラ輝いたの。
アイちゃんがゆっくり近づいてくるの。
もう、他のメリーさん人形には目もくれてないの。
アウトオブ眼中なの。
アイちゃんの手がワタシを優しく持ち上げるの。
恥ずかしいの、そんなにジィーッと見ないで欲しいの。
気付いた?
ワタシの桜色のワンピース、素敵でしょう?
アイちゃんとお揃いなの。
ワタシのお気に入りなの。
「アイ、このメリーさんが良い。」
アイちゃんはワタシをギュッと抱きしめてくれたの。
腕の中にすっぽり収まるワタシを、
ギュウッ!ギュウッ!って抱きしめてくれたの。
「パパ、この娘が良い。凄く可愛い。」
「大事にするんだよ。」
パパさん最高なの。ありがとうなの。
優しそうな声だけど、ゲラゲラ大声で笑う出したいのを我慢してるのが見え見えなの。ご愛嬌なの。
とっても気持ち悪いもご愛嬌なの。
だってワタシは知ってるの。
パパさんはアイちゃんを愛しているの。
アイちゃんもパパさんを愛しているの。
ただ、パパさんの【愛】が、
とっても気持ち悪いだけなの。
「ありがとうございました。」
芽璃依さんともお別れなの。
このお店ともお別れなの。
でもワタシ寂しくないの。
みんなもさようならなの。
今まで楽しかったの。
ワタシは立派なメリーさんになるの。
アイちゃんがワタシを選んだ時点で、もう運命は決まってるの。
だって私はアイのアカシなの。
アイちゃんはワタシを抱えたまま笑顔で手を振ってるの。
その笑顔は太陽みたいなの。
芽璃依さん、さよならなの。
パパさんは丁寧にお辞儀してるの。
でもとっても嘘くさいの。
深くお辞儀して顔が隠れた時に、
ニヒヒヒ・・・って笑い声が小さく漏れてるの。
最高にキモイの。
アイちゃんとパパさんは手を繋いで、
とても幸せそうな親子に見えるの。
・・・見えるだけなの。
うわぁ!
外に鬼婆がいるの!!
髪が逆さまなの!!
風も吹いてないのに逆立ってるの!!
全身を強張らせて、歯を食いしばって、
憎々しさを必死に押し殺してるの。
でも押し殺せてないの。
ダダ漏れなの。
「ママァー。」
アイちゃんのママなの!!
アイちゃんがママさんに抱きついてるの。
ママさんは可愛らしい笑顔でアイちゃんを抱きしめてるの。
でもね、ワタシは見たの。
その笑顔の裏側を。
チラッと見えたの。
抱きしめながら、
パパさんを喰いちぎりそうな形相で睨んでるの。
目がね、笑ってないの。
目だけが獣なの。
牙が見える気がしたの。
「ママ、この娘メリーさん。
アイとメリーさんはね、ずっと一緒なんだよ。
ねぇ、メリーさん。」
アイちゃん可愛いの。
本当に可愛いの。
ワタシのことを“娘”って呼んでくれるの。
ワタシ、アイちゃんに抱かれるために生まれたの。
そうなの。
ワタシ達はずっと一緒なの。
ずっとずっと一緒なの。
アイちゃんの声は鈴みたいなの。
笑うと頬がふわっと赤くなるの。
ワタシの桜色のワンピースとよく似合うの。
ママさんは笑顔でアイちゃんの話にうなづいてるの。
でも、全然聞いてないの。
笑いながら、
ずっとパパさんを睨んでるの。
パパさんもママさんを睨んでるの。
2人ともバチバチなの。
火花が見えるの。
アイちゃんだけが笑顔なの。
アイちゃんは天使なの。
パパさんとママさんは地獄なの。
「パパ、バイバーイ。またねー。」
アイちゃんはママさんの手を握って帰るの。
ワタシはアイちゃんに抱かれてるの。
アイちゃんは何度もパパさんを振り返るの。
ワタシの手を持って、
ワタシもバイバイするの。
ママさんは一度も振り返らないの。
アイちゃんに見えない様に、
顔をずっと強張らせてるの。
ずっと鬼婆なの。
ずっと牙が見えてるの。
ワタシ、見逃さないの。
「アイ、またね。
メリーさんニンギョウ、ダイジにするんだよ。」
パパさんの笑いも気持ち悪いの。
声が震えてるの。
笑いながら泣いてるみたいなの。
ワタシ、こういうの大好きなの。
「うん、パパありがとう。
パパ大好き。」
「ああ、パパもダイスキだよ。アイ。」
吐き気がするの。
声がね、粘ってるの。
喉の奥で何かが絡んでる音がするの。
パパさんはずっと笑顔で手を振り続けてたの。
ワタシ達が見えなくなると、
気持ち悪い笑い声が聞こえたの。
ゲラゲラ
ガハハ
プププ
外はこんなに暑いのに、
薄寒くなったの。
ワタシ、こういう瞬間が一番好きなの。
【ワタシ、メリーさん。今・・・】
ワタシ、メリーさん。
今ね、アイちゃんと一緒にいるの。
アイちゃんとワタシは、ずっとずっと一緒なの。
アイちゃんは幼稚園の年長さんなの。
毎朝、寝癖のついた黒髪をママさんに結んでもらってるの。
ツインテールの日は元気が2倍なの。
ポニーテールの日は走る速度が3倍なの。
赤い彗星なの。
ご飯の時間になると、
アイちゃんはワタシを椅子の上に座らせてくれるの。
「メリーさん、今日のご飯はね、ハンバーグだよ!」
アイちゃんは自分のハンバーグを半分ワタシにくれるの。
でも嫌いなピーマンは全部ワタシの皿に乗せてくるの。
ワタシはピーマン嫌いなの。
でもアイちゃんが可愛いから許すの。
アイちゃんはカレーが大好きなの。
「美味しいね!」
って言いながら、甘口カレーをワタシに食べさせてくれるの。
ワタシは辛口が好きなの。
でもアイちゃんは甘口しか食べないの。
だからワタシも甘口を食べるの。
アイちゃんの可愛さに免じて、甘口を食べてあげるの。
ワタシ大人なの。
幼稚園に行くときは、
カバンの中にワタシをこっそり入れてくれるの。
でもワタシの頭が出ちゃうの。
すぐ先生に見つかるの。
「メリーさんはお家で待っててね。」
ワタシは置いてけぼりなの。
アイちゃんは大泣きなの。
泣かないでなの、アイちゃん。
戻ってきたらまた一緒だよ。
先生には逆らわないの。
それが世の中のルールなの。
ルールフジテレビなの。
ママさんは鬼婆なの。
ワタシ、知ってるの。
アイちゃんがいない時のママさんは、
鬼婆なの。
アイちゃんが幼稚園に行ってる間——
ママさんはワタシを壁に投げつけるの。
何度も、何度も、何度も、何度も。
『アイツが買った人形」
『アイツの臭いがする』
小さな小さな声で、ブツブツブツブツ言いながら投げつけるの
今日で214回なの。
ワタシ、数えてるの。
記録更新なの。
そして踏むの。
何度も、何度も、何度も、何度も。
『アイがアイツを好きだって言った』
『アイツがアイツがアイツがアイツが』
踏んでギュッと床に擦りつけるの。
踏んで踏んで踏んで、ギュッギュッギュッって床に擦りつけるの。
今日で1030回なの。
ワタシ、数えてるの。
ママさんはワタシのこと嫌いなの。
パパさんが買ったワタシが大嫌いなの。
ワタシもママさんが大嫌いなの。
でもね、
アイちゃんの前では優しいママなの。
笑顔なの。
声も柔らかいの。
でもその笑顔はね、ワタシには向けられないの。
アイちゃんを抱きしめながら、
ワタシを殺したいほど憎んでる顔してるの。
ワタシには見えるの
眼が吊り上がり、
髪が逆上がり、
口が裂け、
牙を剥き出しにしてるの。
鬼婆なの。
ある日、
アイちゃんとワタシは公園で遊んでたの。
おままごとして、砂団子を食べさせられ。
ブランコして、ワタシだけ吹き飛び。
滑り台して、アイちゃんのお尻の下敷きになり。
砂遊びして、砂山の頂上で立たされたの。
沢山遊んだの。
パパさんもママさんも、アイちゃんと遊ばないから、ワタシが沢山遊んだの。
アイちゃんは大興奮なの。
蝶々が飛んできたの。
白いアゲハ蝶なの。
アイちゃんは蝶々に夢中なの。
ピョンピョン跳ねながら追いかけていくの。
ワタシも一緒に揺れるの。
アイちゃんの腕の中で、
ワタシもピョンピョンしてるの。
ママさんはママ友とお話しに夢中なの。
今がチャンスなの。
蝶々はアイちゃんの周りを
ヒラヒラヒラヒラ飛んでいくの。
アイちゃんは笑ってるの。
ワタシも嬉しいの。
トゥルルルルル
「もしもし、ワタシ、メリーさん。今公園にいるの。」
「・・・。」
ヒラヒラヒラヒラ
ピョンピョンピョンピョン
トゥルルルルル
「もしもし、ワタシ、メリーさん。今駅前にいるの。」
「・・・。」
ヒラヒラヒラヒラ
ピョンピョンピョンピョン
トゥルルルルル
「もしもし、ワタシ、メリーさん。今貴方の後ろにいるの。」
「・・・。」
「パパ。」
「アイ!」
パパさんなの。
引きつった笑顔で、目だけが笑っていなくて、口から粘ついた唾液が垂れているの。
気持ち悪い笑い方のパパさんなの。
「モドッてキたんだね。」
「あれ?チョウチョさんは?」
「おかえりアイ。
ありがとう・・・メリーさん。」
ワタシ、メリーさん。
ワタシを持ってると、
買ってくれた人の元に必ず戻るの。
ワタシ、やっと本物のメリーさんになれたの。
ゲラゲラ
ガハハ
プププ
パパさんの笑いは相変わらず気持ち悪いの。吐き気がするの。
【ワタシ、メリーさん。今、貴方の・・・】
ワタシ、メリーさん。
今ね、アイちゃんと一緒にいるの。
鬼婆が出たの。
アイちゃんの前にも出たの。
アイちゃんが鬼婆に凄く怒られたの。
アイちゃんを沢山、沢山、沢山怒って、鬼婆は泣きながらアイちゃんに謝ったの。
アイちゃんも泣きながら謝ったの。
ワタシは26回投げられ、95回踏まれ、33回殴られたの。
アイちゃんが止めてって言っても鬼婆は止めなかったの。
ボロボロになったワタシをアイちゃんは優しく抱きしめてくれたの。
ずっと一緒だよって、ギューって抱きしめてくれたの。
ワタシは全部覚えてるの。
ママさんが【人形の集月】でメリーさん人形を買ってきたの。
ワタシに妹が出来たの。
「アイちゃん。ダイジにしてね。」
「ありがとうママ。この娘も大事にするね。」
アイちゃんは右手にワタシ、左手に妹メリーさんを抱きしめて大喜びなの。
両手に華なの。
次の日、
アイちゃんとワタシと妹は公園で遊んでたの。
おままごとして、ワタシ達は砂団子を食べさせられ。
ブランコして、ワタシ達だけ吹き飛び。
滑り台して、ワタシ達がアイちゃんのお尻の下敷きになり。
砂遊びして、ワタシ達は砂山の頂上で立たされたの。
沢山遊んだの。
パパさんもママさんも、アイちゃんと遊ばないから、ワタシ達が沢山遊んだの。
アイちゃんは大興奮なの。
アイちゃんはワタシに秘密を話してくれるの。
「アイはね。パパもママもメリーさんも皆んな大好き。」
蝶々が飛んできたの。
黒いアゲハ蝶なの。
「あ、あの蝶々可愛い。捕まえたらパパとママ喜んでくれるかな?
また皆んなで一緒に暮らせるかな?
メリーさん、一緒に蝶々捕まえよう。
蝶々捕まえて、パパとママとアイとメリーさんと蝶々さんとで皆んな一緒に暮らそう。」
アイちゃんは蝶々に夢中なの。
ピョンピョンピョンピョン跳ねながら追いかけていくの。
ニコニコニコニコしてるの。
あの蝶々を捕まえたら、皆んなと一緒になれるって信じてるの。
ワタシ達も一緒に揺れるの。
アイちゃんの腕の中で、
ワタシ達もピョンピョンしてるの。
ママさんはママ友とお話しに夢中なの。
今がチャンスなの。
蝶々はアイちゃんの周りを
ヒラヒラヒラヒラ飛んでいくの。
アイちゃんは笑ってるの。きっとパパとママの笑顔を想像してるの。
アイちゃんが喜んでくれるとワタシ達も嬉しいの。
アイちゃんはヒラヒラヒラヒラ飛んでいく蝶々をピョンピョンピョンピョン跳ねながら追いかけてくの。
でも、どうしたら良いの?
ワタシはパパさんのところに戻るの。
でも、妹メリーさんはママさんのところに戻るの。
ヒラヒラヒラヒラ
ピョンピョンピョンピョン
ヒラヒラヒラヒラ
ピョンピョンピョンピョン
カンカンカンカン!!!
カンカンカンカン!!!
あ!良い事考えたの。
これで解決なの。ゾロリなの。
半分こすれば、パパのところにもママのところにも戻れるの!賢いの!
カンカンカンカン!!!
カンカンカンカン!!!
ヒラヒラヒラヒラ
ピョンピョンピョンピョン
「蝶々さん待ってぇ。」
キキキキキィィーーー!!!!
グシャ!!!!
トゥルルルルル
「「もしもし、ワタシ、メリーさん。今線路にいるの。」」
「・・・。」
「・・・。」
ビチャ・・・ビチャ・・・
トゥルルルルル
「「もしもし、ワタシ、メリーさん。今家の前にいるの。
アイちゃん半分持ってきたの。半分こで我慢してね。」」
「・・・。」
「・・・。」
ビチャ・・・ビチャ・・・
トゥルルルルル
「「もしもし、ワタシ、メリーさん。今貴方の後ろにいるの。」」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・」
「アイ。モドッてキたんだね。」
「・・・」
「おかえりアイ。
ありがとう・・・メリーさん。アイをモドしてくれて。」
ゲラゲラ
ガハハ
プププ
パパさんの笑いは相変わらず気持ち悪いの。吐き気がするの。
「・・・」
「アイ!」モドッてキたのね。」
「・・・」
「おかえりアイ。
ありがとう・・・メリーさん。アイをモドしてくれて。」
ギャハハハハハハ
ママさんは鬼婆なの。笑い方が汚いの。気持ち悪いの。
パパさんもママさんも気持ち悪いの。
似たもの夫婦なの。
ワタシ、メリーさん。
ワタシを持ってると、
買ってくれた人の元に必ず戻るの。
【集灯町ニュース】
本日午前11時頃、集灯町南区の踏切にて、幼稚園児が列車に轢かれる事故が発生しました。
警察によりますと、
踏切の遮断機は正常に作動しており、
現場には園児の靴と血痕のみが残されていたということです。
しかしその後、
園児の遺体は踏切から約2km離れた“父親の自宅”と“母親の自宅”の双方から発見されました。
遺体はそれぞれの家の玄関前に置かれており、
両親は「知らない」「気付いたら置かれていた」と供述しています。
警察は、
両親が遺体を移動させた可能性があるとしています。
なお、現場から持ち去られたとみられる被害児童の「心臓」および「頭部」は現在も見つかっておらず・・・。
死体遺棄の疑いで両親を逮捕しました。
また両親の玄関前で発見されたメリーさん人形の服には、大量の血痕とともに、なぜか「アイちゃんは二人とも戻ってきたよ」と幼い筆跡で書かれた紙切れが添えられておりました。
近隣住民からは、
「昨夜から両親の家の前で不気味な笑い声が聞こえていた」
「家の前に小さな人形が二つ置かれていた」
などの証言が寄せられています。
警察は、
事件との関連を調べるため、
人形の鑑定を進めているということです。




