人形の集月
人形の集月
【真夏の集灯町商店街】
僕達が集灯町商店街のスーパー
【集灯マート】で買い物を終え、一歩外に出た瞬間——
ジリジリジリジリとアブラゼミが鳴く声が五月蝿く。
アスファルトから立ち上る陽炎が景色を歪めている。
そこは灼熱地獄だった。
真夏の太陽が、
雲ひとつない青空のど真ん中で 、
SUNSUN
サンサン
と輝いている。
日光は容赦なく降り注ぐ。
我が物顔で傲慢で自信満々に高笑いしながら、
「ほらほらもっともっと暑くなるぞ。
暑いぞ熱いぞ、溶けちゃうぞ。」
と、こっちの迷惑なんて微塵も考えもせずに日差しが降り注ぐ。
SUNSUN。
サンサン。
ボンネットを灼熱のフライパンに変え、
自転車のサドルはレンジで加熱し過ぎたお皿みたく熱くして、どうだ俺って凄いだろうと言わんばかりに降り注ぐ。
SUNSUN。
サンサン。
日焼け止めなんか無意味だと日差しがガンガン降り注ぎ。
肌を焼き、公園のベンチを熱し、滑り台を熱し、鉄棒を熱し、ジャングルジムを熱する。
遊べるもんなら遊んでみろと大笑いしながら降り注いでいる。
SUNSUN。
サンサン。
ちきしょー!!
どうなってんだこの暑さは!!
異常気象だぁ!!
それに、これ絶対わざとだろこれ。
日本語と英語をかけた奴、絶対にやってんな。
SUNSUN。
サンサン。
太陽のくせにダジャレを仕込んでくるな。
「「あづいぃーーー!!」」
僕と白雪は、
真夏の暑さに完全敗北していた。
SUNSUN。
サンサン。
僕は麦わら帽子を深くかぶり、
首にはハンディーファンをぶら下げ、
冷感タオルを巻き、
ガリガリ君を食べながら歩いている。
これだけしてもまだ暑い。
白雪は胸ポケットから顔をチョコンと出し、
ファン付き帽子をかぶり、
ファン付きウェアを着込み、
スイカバーを齧っている。
自分の顔と同じくらいの大きさのスイカバーを両手で必死に抱えて、ハムスターみたいにシャクシャクシャクシャク齧ってる姿が可愛らしい。
ただ白雪も完全装備のはずなのに・・・・溶けてる。
「・・・とける
・・・わたし
・・・とけちゃう
・・・夏
・・・きらい・・・。」
白雪は雪女だ。
この日差しにやられて、アイスみたいに溶けかかっている。
ちなみに僕は小学生2年生。
僕達は婚約してる仲だから。
そこんとこよろしくね。
僕は溶けても可愛い白雪の可愛さにやられて、胸の鼓動がドクンドクンと熱くなる。
ダメだ。このままじゃ熱くて熱くて本当に爆発しそうだ。
でも・・・・
「溶けてる白雪・・・可愛い。
はい、これ食べて。」
すかさず2本目のスイカバーを差し出す。
白雪はスイカバーをまたシャクシャクシャクシャクと齧りながら、美味しそうに、にまぁーっと笑っている。
あー、キラキラしてる。
その笑顔が、真夏の太陽よりも眩しい。
「白雪、眩しすぎる。」
僕は白雪の笑顔で熱くなった顔を冷やすために、ガリガリ君にかぶりついた。
「ガリガリ君うまっ!やっぱりソーダ味が最強だよね。白雪も食べる?」
「うん。」
白雪が僕のガリガリ君にかぶりつく。
・・・可愛い。
・・・可愛いすぎる。
・・・可愛いさの暴力だ。
僕は白雪に完全敗北していた。
SUNSUN。
サンサン。
そんな僕達の周りで、
商店街の人々は太陽の日差しなんかものともせずに働いてる。
八百屋のおっちゃんが
「トメート冷えてるよー!
夏はこれだよー!
キンキンに冷えたトメート!!
悪魔的だよー!!。」
顔を真っ赤にしながら、
真っ赤なトマトを掲げている。
汗は滝のように流れているのに、
声はめちゃくちゃ元気。
看板には【ベジタブル屋】と書かれている。
もはや見慣れた看板なので誰も突っ込まない。
「さぁ買った買った。こいつは朝取れキャロットだよ。」
欧米か!!!
SUNSUN。
サンサン。
魚屋の河童さんは
「今日の魚は塩焼きが最高だよー!」
頭のお皿に水をかけながら、
鮎を並べている。
店先には
アユ
ヤマメ
イワナ
ニジマス
コイ
フナ
カジカ
シャケ
「マグロやタイはないの?」
「俺、塩水苦手なんだよ。海の幸が食いたいなら海坊主んとこ行きな。」
川魚専門店かよ。
いや、河童だから当然か。
SUNSUN。
サンサン。
薬局の奥からは怪しい匂いが漂ってくる。
魔女のお婆さんが、
ニヒニヒ笑いながら大鍋をかき回しているんだ。
並んでいるのはどれも怪しい薬ばかりなのに、客が絶えない。
魔女の軟膏、よく効くんだよな。
真夏の集灯町商店街は、暑さに負けるどころか、むしろ真夏より熱い。
ここは真夏の勝者の商店街。
真夏に打ち勝つ活気溢れる者達が集う場所。
24時間365日。
静まることを知らない商店街。
眠らない商店街。
それが集灯町商店街だ。
SUNSUN。
サンサン。
まぁ中には、カキ氷屋の雪女さんが溶けて商売にならないと嘆いていたり。
炎の妖怪が、暑苦しいと水をかけられながら、商店街の中を走ってる。
真夏だろうとお構いなしの騒がしい商店街だ。
そんな商店街で買い物をしてるのは、完全敗北者の僕と白雪だ。
「・・・あつい。
僕・・・もうだめかもしれない。」
白雪は胸ポケットから顔を出しながら言う。
「・・・と・・・け・・・る・・・。」
僕はすかさず白雪に保冷剤を渡す。
白雪は保冷剤にギュッと抱きつき、
「はふぅー」っと、ほっこり幸せそうな表情になる。
「しあわせぇー。」
白雪の笑顔で、
僕の心臓がドクンドクンと熱く高鳴る。
白雪は夏に、
僕は白雪に。
僕達は完全に敗北していた。
SUNSUN。
サンサン。
「あつすぎるーー!」
太陽に向かって吠える僕を完全に無視し、ポケットの中で保冷剤にむぎゅっと抱きついている白雪。
可愛い、そんな白雪が凄く可愛い。
僕の胸はズッキュゥゥゥン!!
と撃ち抜かれた。
白雪は保冷剤にほっぺを押し当てて、
「しあわせぇ〜」
ととろけた声を出している。
その可愛さの余韻に浸っていた、その時——
ゾワリ!!
突然、背中に冷たい指が一本、
ぺたりと貼りついたような感覚が僕を襲い、真夏の炎天下なのに体がブルブルと震えた。
「ん?」
白雪が心配そうに見つめてくるが、自分でもよく分からない。
「いや・・・突然寒気が。」
思わず辺りを見渡して見るけど何もない。
「大丈夫?」
白雪がポケットの中から心配そうに僕を見上げている。上目遣いで可愛い白雪が、さらに僕の胸をズキュン!と撃ち抜いた。
ゾワリ!ゾワリ!!
白雪の可愛い余韻に浸る間もなく、突然の寒気が襲いかかり体がブルブル震える。
「福大?」
「また突然、寒気が・・・」
「突然の風に吹かれて、夢中で何かを探す?」
「・・・白雪、なんでそんな古い歌知ってるの?」
「突然、歌いたくなったの。」
「ボケる白雪も可愛い。」
白雪の可愛いボケに僕の顔がデレデレと蕩けた途端。
ゾワリ!ゾワリ!!ゾワリ!!!
ブルブルブルブル
僕の体が再び震え上がった。
な、なんだこれ・・・どうなってるの?
「・・・福大、あそこ。」
白雪が指差す先には、灼熱の商店街の中で、涼しさと静けさを纏ったように、ポツリと異質な雰囲気を醸し出しているお店がある。
「・・・あのお店?」
お店の正面は全面ガラス張り。
磨き上げられたガラスは、
真夏の太陽を受けて淡く光っている。
ガラス越しに見える店内は、
木目の棚と柔らかな照明で統一されていて、まるで高級宝飾店のような雰囲気だ。
ガラスには一切の指紋がない。
誰かが毎朝丁寧に磨いているのが分かる。
「・・・あの人形。」
白雪の指の先には、ショーウィンドウの中で、大小さまざまな人形が並んでいる。
赤いワンピースの人形
白いドレスの人形
黒髪の人形
金髪の人形
泣き顔の人形
笑い顔の人形
眠っている人形
どの人形も、ガラスケースの中で宝石のように輝いている。
そして人形の瞳に光が入り、
本当に“生きている”ように見える。
ゾワリ!
人形が僕を見つめた・・・
ゾクリ!
「あの人形・・・今、僕と目が合っ・・・。」
僕は震える体を両手で押さえながら、店に近づいていく。
近づきたい訳じゃない。
「か、からだ・・・が・・・」
体が勝手に動いてるんだ。
近づくと店の看板が見える。
黒漆塗りでそこに金文字で
【人形の集月】と書かれている。
金文字は真夏の太陽を受けて、
ゆらりと光って見える。
「から・・・だが・・・かって・・」
僕はどんどんショーウインドに近づいていく。
そしてそんな僕をショーウインドの中の人形が見つめている。
赤いワンピースの人形が微笑みながら、
白いドレスの人形が無表情に、
黒髪の人形が薄ら笑い、
金髪の人形が嘲り、
泣き顔の人形が涙を流しながら、
笑い顔の人形が堪えながら、
眠っている人形が薄目を開けながら、
僕を見つめている。
気付けば、僕はショーウインドの前に立ち尽くしたまま、人形達に見つめられ震えていた。
無数の視線から感じる感情が僕の体をブルブルと震わせる。
憎い!
にくい!
ニクイ!
NIKUI!
荒々しい憎悪の感情が僕の心を蝕んでいく。
憎い憎い!!
にくいにくい!!
ニクイニクイ!!
NIKUI NIKUI!!
リア充爆発しろ!!!
その感情は・・・・
ただの嫉妬だった・・・
「私の福大。」
白雪が胸ポケットからひょこっと顔を出し、僕の服をギュッと掴みながら言った。
その声と仕草は可愛いのに、
背後に 吹雪の幻影 が見えるほどの圧があった。
白雪の瞳がキラリと光ると、まるで
教室で先生に怒られた小学生みたいに
一斉に目を逸らす人形達。
白雪は胸ポケットの中で
「ふふん」と得意げに鼻を鳴らす。
その仕草がもう反則級に可愛い。
僕はその瞬間、
またまた胸を ズッキュゥゥゥン!! と撃ち抜かれた。
「白雪・・・可愛い・・・」
白雪はにまぁーっと笑う。
その笑顔は真夏の太陽よりも眩しくて、
僕の心臓はドクンドクンと跳ねた。
はぁ、ダメだ。ずっと一緒にいるのに、白雪の可愛さに慣れない。
どの角度の白雪も、どの瞬間の白雪も、最高に可愛い。
このままじゃ僕のハートが持たないよ。
あまりの可愛さに、
思わず白雪の頭をなでなでしてしまった。
白雪もご機嫌だ。
なでなで
にまにま
なでなで
にまにま
僕と白雪がイチャついていると——
ゾワリ!ゾワリ!!ゾワリ!!!
「うわぁ!」
人形達の視線が、
まるで針のように再び僕に刺さる。
嫉妬の視線だ。
完全に嫉妬だ。
“リア充爆発しろ”の視線だ。
白雪がキッ!とまた人形達を睨み返す。
すると——
サッ!!
人形達はまた一斉に視線を逸らした。
キリッとした白雪の表情に
僕はまたまたまたズキュン! と心を撃ち抜かれ、無意識に白雪の頭をなでなですると、
白雪はにまにま笑いだす。
それを見た人形達の目つきが変わる。
ゾワリ!
キッ!
ズキュン!
ニマニマ
ナデナデ
ゾワリ!
キッ!
ズキュン!
ニマニマ
ナデナデ
ゾワリ!
キッ!
ズキュン!
ニマニマ
ナデナデ
人形達は震え、
僕は震え、
白雪だけがご機嫌。
僕達は無限の沼にハマったようにループを繰り返した。
そして——
「ふふふふふ。」
無限ループを止めたのは、綺麗な笑い声だった。
「ふふふふふ。」
カランカラン
お店の扉が静かに開き、扉の向こうから現れたのは——
淡い灰桜色の着物を纏った、まるで人形のように美しい女性。
黒髪は艶やかで、
瞳はガラスのように澄んでいて、
光の角度によっては“陶器の肌”に見える。
「いらっしゃいませ。」
その声は柔らかく、
しかしどこか冷たくて、
背筋がすっと伸びるような響きだ。
そして人形達の視線がピタッと止まり、
空気が変わった。
人形達はまるでただの置き物の様にピクリとも動かず。
怯える様に息を潜めていた。
女性は店のドアを開けたまま店内に入って行った。
僕は恐る恐る店の中へ足を踏み入れた。
白雪は胸ポケットからひょこっと顔を出し、周りをジロジロと見ている。
店内は外の灼熱とは別世界だった。
木目の棚、柔らかな照明、
静かな空気、
そして——
無数の人形。
ショーウインドの中だけじゃない、棚にも、台にも、壁にも、数えきれないほどの人形がいる。
そして——
全員が僕をジロリと見ている。
僕の背筋がゾワッとした。
白雪には視線を合わせない。
白雪が胸ポケットから顔を出すと、
人形たちは一斉に視線を逸らした。
女性がカウンターの椅子を指し示す。
背もたれのない、クルクルと回る椅子に僕が座ると女性は静かに微笑み店の奥へ消えていった。
その間も、
人形たちは僕を見つめ続ける。
部屋中の人形の視線。
ジロリジロリ!ジロリジロリ!
白雪がキッと睨む。
キッ!
人形たちはサッと目を逸らす。
サッ!
なんか、このテンポ面白い。
ジロリ!
キッ!
サッ!
ジロリ!
キッ!
サッ!
ジロリ!
キッ!
サッ!
白雪の睨みは雪女の威圧感があるのに、
胸ポケットからひょこっと顔を出してるせいで、めちゃくちゃ可愛い。
人形たちも、白雪を怖がってるのにどこか可愛い。
「あはははは。みんな可愛いね。」
僕の声に人形達は目をまん丸にして驚いた表情をしている。
「とっても可愛い。」
ボン!
人形達は爆発音と共に一瞬で顔を真っ赤にしてドギマギしながら、今度は僕から視線を逸らし始めた。
「あははは。」
今度は僕が人形達の顔を覗き込むと、人形達はさらに顔を赤らめて明後日の方を向く。
赤いワンピースの人形も
白いドレスの人形も
黒髪の人形も
金髪の人形も
みんな顔を真っ赤にして明後日の方を向いている。
「あははは。」
白雪も人形に近寄って、顔を覗き込む。
人形達はゾッとして高速で視線を逸らす。
僕と白雪は店中の人形達の顔を覗き込んではケラケラと笑っていた。
女性が運んできたかき氷は——
まるで宝石箱だった。
白雪は一瞬でかき氷に心を奪われた。
目がキラッキラに輝いている。
「こ、これは・・・
ふわっふわの氷の上に・・・
夏のフルーツが・・・
色鮮やかに・・・てんこ盛り・・!」
白雪は震える声で語り始めた。
過去一の早口だ。
「金色に輝くマンゴー・・・
太陽みたいなパイナップル・・・
透き通るマスクメロン・・・
瑞々しいスイカ・・・
桃の花びら・・・
ブルーベリーの宝石・・・
レモンの香り・・・
そしてこの・・・
とろ〜りマンゴーソースと
きらきら桃ソースと
爽やかレモンソースの三重奏・・・!」
白雪の語彙力が爆発している。
「白雪・・・どうしたの・・・?
今日の白雪、語彙力がプロの食レポ・・」
女性も横でぽかんと口を開けている。
白雪は胸ポケットからピョンっと飛び出し、かき氷の前に仁王立ちした。
身長10cmの白雪。
高さ50cmのかき氷。
完全に 巨大な敵に挑む勇者 の構図だ。
白雪は身の丈ほどの小スプーンを両手で持ち上げ、かき氷を前に身構えた。
「これ・・・・食べて良いの?」
女性が微笑むと——
白雪はスプーンを槍のように構え、
大きく足を踏み出して突撃した。
「ヤァァァァァ!!」
スプーンがかき氷に突き刺さる。
サクッ!
白雪は瞬時にスプーンを引き抜き、
口元へ運ぶ。
パクッ!
「ん!!!!!!
美味いぞぉぉぉぉぉ!!!!」
ピカーーーン!!!
白雪の口から光が放たれた。
完全に味皇様だ。
女性は目を丸くし、
僕は口を開けたまま固まっている。
白雪は一心不乱に食べ続け、
気付けばスプーンを投げ出し——
かき氷の山にダイブしていた。
「ひゃっ・・つめたい・・・
マンゴー・・・最高・・・
桃・・・天国・・・
レモンソース・・・神・・・
しあわせぇぇぇ・・・。」
かき氷の上で手足をバタバタさせる白雪は、完全に魅了されていた。
女性は呆然し、僕は感動し、人形達は震えている。
僕は白雪の姿を見ながら、
自分のかき氷をそっと白雪に差し出した。
「福大!!い!!い、い、良いの?」
僕は無言で頷いた。
白雪は顔を輝かせた。
「福大、大好き。」
その笑顔だけで、
福大の心臓はドクンドクンと跳ねた。
「白雪・・・可愛い・・・。」
女性は、
まるで母親のように優しくその様子を見つめていた。
「ふふふ、食欲旺盛な可愛らしいお客様」
女性は白雪の体を頭から爪先まで体ジィーっと見つめている。
まるで品定めでもしている見たいに。
あっという間に巨大かき氷を2つ平らげた白雪は、テーブルの上で横になりながら
大きく膨らんだお腹をぽんぽん叩いている。
完全に 満腹のマスコット人形 だ。
女性は微笑む。
「ありがとうございます。」
「ごちそうさま。」
女性は笑っているだけだ。
声は出さない。
ただ、柔らかく微笑んでいる。
その笑顔は優しいのに、
どこか“静かすぎる”。
「あの、ここってかき氷屋さんですか?」
女性は静かに微笑んだ。
「【人形の集月】。
私は店主、集月芽璃依。」
「初めまして、僕は千葉福大です。」
「白雪。」
集月さんは和かに笑いながら僕達を見ている。
ずっと。
じっと。
何も言わずに・・・見続けている。
僕は視線から逃げる様に店内を見渡した。
最小様々な女の子の人形がある中で、一体だけ大人の男性の人形がショーケースの中に入っている。
まるで生きているような雰囲気があり、今にも動いだしそうだ。
その人形は、
黒い着物を着ている。眼を閉じていて髪がない。
白雪は人形には興味なさそうに胸ポケット戻り満足そうにお腹をポンポンと叩いている。
どうやらお腹いっぱいみたい。
可愛い、満足顔の白雪が可愛すぎる。
白雪の笑顔にデレデレになりながらも、
集月さんの“静かな視線”に背筋がゾワッとした。
「あ、あの・・・僕達そろそろ・・・。」
店のドアが開き、
可愛い女の子が入って来る。
「可愛い!
お人形さんがいっぱいある!
パパ、パパ!
すごいよ、みんな可愛い!」
少女は無邪気に笑いながら店内を見渡しメリーさん人形に感動している。
後から入ってきた父親が優しく笑いながら女の子を見つめている。
カランカラン
「いらっしゃいませ。【人形の集月】へようこそ。」
集月芽璃依は優雅にお辞儀をして静かに椅子に座る。
その姿は、まるでお人形さんの様に美しい。




