13 - 幕間 -
◇幕間◇
「レオンの第一印象はどんなだったんだ?」
突然ベルナデット様が菓子をほおばりながら聞いてきた。東離宮で楽しいお茶の時間である。
「それは私も知りたい」レオンも半身を乗り出す。
「お前、欲しがるなあ…」とベルナデット様は呆れて言った。
「あー……あまりいいものでは無かったです…『最悪な奴に捕まった』と思っていました」
「レオン、最悪らしいぞ」
「………」
「あっそれは総長が負け知らずなうえ容赦ないことで母国でも有名だったので。軍人としては最高の賛美というか」
「お仕事がんばっていて良かったな?」
「………」
「囲まれた後『ちょうど女が欲しかった』と言われたので、甚振られた後で処刑されるのかと」
「お前レディにそんなこと言ったのか、本当に最悪だな」
「………」
「僭越ながら。閣下はもとより処するお心積もりは無かったようです。ミ…『エマ』様を隊に加えようと画策されていました」
「おい、従者にまで牽制してみっともないぞ」
「そう、ミラの逃げ方は林帯や斜面やらの地形がよく計算されていてね、山暮らしがあったのか?育てたらいい騎士になるだろうなあ、と」
「なんだか楽しそうだな」
「追われてるこっちは生きた心地がしなかったです」
「それが熊の毛皮から出てきたのが可愛い女の子だったから、気が動転して心無い言葉を。すまない」
「可愛い……?」
「ああ、その時点でそうなのか」
「かわ……?」
「取られたくないと思った。強い言葉は牽制もある」
レオンが私をじっと見つめる。
「えっ可愛い……?」
「可愛いだろう。私を籠絡するために送り込まれた罠かと思って始めは警戒していた」
「ミラ、そなたは美しいぞ。聖殿で見たときそう思った。まあ、それは後で話そう。こっちの話のほうが面白い。それで『ちょうど女が欲しかった』の後、どうしたんだ」
「復唱やめてください」
「天幕に連れていかれて、総長は誰も入るなのようなことを隊員に言っていました。ええと正確には『朝まで誰も通すなよ』でした」
「その台詞、国境隊でも流行りましたね」
「やめてくれ」
「なので、その、朝までだなんて、ずいぶんねちっこい行為をされる方なんだなあと」
「ミラ……?」
「あははははははははははは!!はーーっはっ!!悪い、誰か水を」
「ベルナデット様……」
「でも、総長は私に優しくしてくれて」
「ミラ、その言い回しは誤解を招くので具体的に」
「優しく身の回りの世話をしてくれて」
「人に良くしてもらったのは本当に久しぶりのことだったので、この人にならどうされても良いと思いました」
瞬間、真顔になったレオンの目がギラと光って私を射抜く。
「この男の前で滅多なことを言うものではないぞ」
「いえ、心の底から思ったのです。この命、処されても悔いはないと」
「ああ、そっちか」
「はは…はっ…ふ…」
「人の恋路を笑わないでください」
どうにも弱っているレオンを見て私も笑う。
あの日、夜伽という意味でも、この人にならどうされても良いと思ったことは黙っておこう。あの時はまだちょっと好きくらいだったからそんなことを思った。今はもう心の中で思うのも口に出すのも破裂しそうだ。
好きになるほど動けなくなるものだ、と私は思った。
本編外小話
◇◇
というか人前でキスをしたなら結婚式と同じ、責任を取って自分はミラと結婚するとレオンは力説していて、お前は古代人か、とベルナデット様が突っ込んでいた。
かつてのお二人の結婚式ではキスを?と私がまた不安そうに聞くと、今回ばかりは二人ともあさっての方向を向いてしらばっくれた。




