第57章 弟の敵討ち
私は府中が所有するベンツの後部座席に乗り込んだ。後部座席には金髪頭にサングラスをかけた男がいた。派手なスーツは薄汚れており、顔は泣きはらしたのか目が赤い。
府中サトルは、オレオレ詐欺や情報商材詐欺などで、のし上がってきたクズだ。そして、私の弟である真一の仇だ。だから、コイツの本音を知りたい。私はスーツの懐から、リボルバー拳銃を取り出して、府中に銃口を向けた。
すると、府中は手のひらを見せながら、震え声で命乞いを始めた。
「あっ、あのー……。本家の冬子お嬢様ですよね? 網代がよく話していましたよ。小さい頃に世話をしたって……」
「そんな事はどうでもいい。何故、裏切った?」
「お嬢、それは勘違いっす。敵に潜り込んで、スパイ活動をして、あとで天王洲会に報告しようと思っていました。マジで信じてください」
私が若い女だから、適当な事を言って煙をまこうとしている。おそらく、真一の事も何も思ってないのだろう。
だからこそ、私は本音が知りたいのだ。
「お前、こないだ高校生のガキを殺したそうじゃないか? 堅気を巻き込んでどう責任を取る気だ?」
「えーと、それはウチの若いものが殺しました。自首もしているはずです。だから、俺は関係ないです」
だが、私は真実を知っている。目撃者は確実に府中が撃ったと言っていたのだ。
私は感情を表に出さすに、ニッコリとした笑顔をみせる。
「ハハハ、別に怒ってない。実はお前が殺した高校生は私の義理の弟だった。しかし、私のストーカーみたいになっていて邪魔だったんだ。だから、お前が殺してくれて感謝している。それを知っていたなら、さすが天王洲会の幹部だと思うよ」
私は嘘をついて、府中に希望を与えて本音を聞こうとしたのだ。
案の定、府中はニコニコした表情になっていく。
「ほんとうに?」
「ああ、もちろんだ」
私はそう言って、府中に向けた拳銃を下した。
すると、府中は緊張が解けたように、手もみをしながら、ペラペラと喋りだした。
「もちろん、殺した理由はお嬢の為です。俺は前から、そのストーカー問題を知っていました。それを処理しただけです」
「なるほどね。それで、本当に一番腹が立った理由を教えてくれ。あるだろ?」
「実はですね……。あのクソガキ、俺の腕時計を壊したんですよ。700万もしたロレックスをですよ。だから、頭にきて撃ち殺しちゃいましたよ。アハハハハ」
私は拳銃の銃口を府中に再び向けた。
そして、引き金を引いた。弾丸は府中のサングラスを貫いて、右目を貫通していった。府中は後部座席のガラスに頭をぶつけて、寄り掛かって動かなくなった。ガラスにはおびただしい血が残った。そして、右目からは水道から水が出るように、血がドバドバと流れ出した。
私は助手席に座っているノブオ爺ちゃんに声をかけた。
「ごめん、外で煙草吸ってきて……。少し泣くから……」
ノブオ爺ちゃんが黙って、ドアを開けて外に出でいった。
私は両手を顔に当てて、声を殺しながら泣いた。くそ、こんな奴に、こんなクズに。府中みたいなクズに殺された事が悔しかった。あの時、真一にもっと話し合いをしておけばと、後悔が込み上げてきた。
私が真一に本気で向き合っていたら、もっと違った結果になったかもしれない。もし、真一が告白しなければ? いや、私と最初から会ってなかったら? いや、ヤクザの家に来なければ良かった? 結局は何処で間違えたのかは分からない。
それでも、敵討ちだけはしたかった。だが、真一は生き返らないし、自己満足なだけだ。真一、こんな事しかできなくてゴメン。今まで、私の弟でいてくれて、本当にありがとう。そして、さよならだ……。




