表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/118

第44章 東雲シマ、撃たれる

私は本家の居間で愛銃の手入れをしていた。若頭補佐の金沢さんが殺されたので、本家にカチコミがあるかもしれないからだ。しばらくすると、スマホの着信音が鳴った。


相手は誰だろう? 画面表示を見ると、ハコネからだった。


私はすぐに電話に出た。

「ハコネ、どうした?」

「姉ちゃんが……」

いつものハコネのテンションとは違い、かなり暗い印象を受けた。


私は嫌な予感が頭に遮った。

「何? 聞こえない? はっきり喋って」

「シマ姉ちゃんが撃たれた……。ウチはどうしたらええの?」

シマ姉さんが撃たれた? 落ち着け、落ち着けよ。まず、死んだのか? それとも、生きているのか? その確認が大切だ。


私は優しい口調で喋る。

「ハコネ、シマ姉さんは死んだの? それとも、生きているの?」

「よく分からへん、とにかく病院で手術が終わったところや。冬子ちゃん、どうしたらええ?」


私はパニック状態のハコネを落ち着かせて、これまでの状況を確認させた。どうやら、12時間前に黒羽組の市原に、シマ姉さんが撃たれたらしい。ハコネが市原の右手首を切り落としたので、その報復だったみたいだ。


それはそうと、シマ姉さんの手術は成功して、一命はとりとめたみたいだ。医者によると、今日は面会謝絶らしいので、明日はお見舞いに行こうと思う。


私は一連の流れを整理して、欣也伯父さんとノブオ爺ちゃんに伝える事にした。本家の応接室では欣也伯父さん、ノブオ爺ちゃん、サナエちゃんが招集していた。


欣也伯父さんはテーブルを叩く。

「くそ、シマを狙ってきやがって。俺達の資金源でも潰す計画なんだろう」


それを聞いたノブオ爺ちゃんが口を開く。

「まあ、欣也落ち着けよ。俺の子分に情報を集めさせている。だけどよ、今回はフラフラと外出していたシマにも原因があるぜ」

「ああ、分かっている。すぐにでも、シマを安全な場所に移さないとダメだ。明日、俺も病院に行って、自ら指揮をとらしてもらうぞ。金沢が殺られて、シマも殺れたらシャレにならん」


しかし、欣也伯父さんは命を狙われている。だけど、若頭が撃たれて、若頭補佐が殺され、天王洲会側が不利な状況になっている。親分がみっともなく、本家に引きこもっていたら、子分達への指揮が落ちる。すぐにでも、各事務所に顔を出して、次なる指示を出さないといけない。


ここで、欣也伯父さんも踏ん張れないと、組織がバラバラなる事を分かっているのだろう。だから、自ら指揮を執るようにしたのだ。


サナエちゃんが会話に入ってくる。

「会長、私が命をお守りしますので、病院までのガードはご安心ください。お爺ちゃんは組の留守番を頼みます」

「ああ、若い衆を10人も連れていけばいいだろう。大人数だと目立ってしまうからな。頼むぜ、サナエ」

「はい、分かっています」


私は不安な気持ちになって、自分も病院に行く事を決めた。

「私も伯父さんのボディガードやるよ」


しかし、サナエちゃんが止めにはいった。

「冬子お嬢様、危険な目に合うかもしれませんよ」

「うん、分かっているけど、家族だから守りたい」

「………」


すると、サナエちゃんがため息をついて、部屋を出て行った。私がワガママだから、心配なのだろう。いつも、迷惑をかけて悪いとは思っているのだが……。しばらくすると、サナエちゃんが木箱を持ってきた。それを開くと、サブマシンガンが入っていた。


サナエちゃんはサブマシンガンの説明をした。

「それでは、冬子お嬢様はこれをお使いください。イングラムM11です。ベトナム戦争の時に使われた短機関銃です。現在の戦争でも使われています」

角ばった形の銃であり、マガジンが長いが、軽くて使いやすい感じだった。


私は手に取って、イングラムM11をマジマジと見た。

「私がもらってもいいの?」

「私は会長を守るだけで、精一杯になると思われます。自分の身を自分で守れるなら、病院についてきてください。しかし、私は本家で待機していて欲しいのが本音です」

「サナエちゃん、ありがとう。でも、父さんを亡くして、伯父さんまで死なせるわけにはいかないよ」

サナエちゃんはジッと目を見てきた。


そして、俯いて溜息を吐いた。

「ふう、分かりました。冬子お嬢様は頑固ですから、諦めています」

「サナエちゃん、ごめん……」

まあ、サナエちゃんの言う通り危険が多いはずだ。


例えば、シマ姉さんを囮にして、ヒットマンが待ち受けている可能性だってある。そこで、私はナツも連れていくことにした。いざとなったら、頼れるのは相棒である。それに、借金の分は働いてもらわないとな……。


そして、次に日の朝。私はハコネの電話に連絡をした。

「ハコネ、シマ姉ちゃんは?」

「ああ、冬子ちゃん。姉ちゃん、なんとか意識は戻ったみたいや。あっ、代われだって」


しばらくすると、シマ姉さんが出た。

「冬子ちゃん、心配あらへんで。左肩撃たれて、腹に弾がかすった程度や。出血が多かったから、失神しただけや。今は点滴打っとるよ」

「いや、それって大怪我じゃん。それより、欣也伯父さんと一緒にお見舞いに行くよ。今後の事もあるしさ。いずれ、そこの場所も特定されるよ。すぐに移動した方がいい」


おそらく、敵に場所を特定されるのも時間の問題だ。いくら、堅気の多い病院だからって、ヒットマンを送ってこない保証ない。すぐに、闇医者のところに身を隠した方がいいはずだ。


まず、何時間も車で移動して、大丈夫な状態なのか? シマ姉さんだから、強がっているだけかもしれない。やっぱり、会わないと分からない。


すると、シマ姉さんは大声を出す。

「アホッー、来ないでええ。途中でヒットマンに襲われたら、どうないすんねん? ウチは冬子ちゃんに死なれたら悲しいわ。サナエちゃんは止めに入らんのかい? 何やっとんねん?」

「うん、止められた。でも、私が強引に行くことを決めたんだよ。それで、サナエちゃんも、止めても無駄だと思ったみたい。とりあえず、絶対に行くから」

「いや、来んでええ。ウチよりも……」

私は会話の途中で切った。これ以上は話をしても無駄だと思ったのだ。


こうして、私達は車で病院に向かった。合計3台の車で、欣也伯父さんをガードする作戦だ。1台目は私、欣也伯父さん、運転手の子分。2台目はナツ、サナエちゃん、運転手の子分。


3台目は先に病院で待機して、怪しい奴がいないかチェックするみたいだ。人数は4人だそうだ。もちろん、赤坂組の武闘派組員たちだ。


それから、すぐに病院ついた。大きな総合病院で、ホテルみたいな感じだ。門をくぐると、駐車場が大きくて、100台近くは停車できそうだ。病院の前には、大きな川が流れており、釣りをしている人もいる。長閑な雰囲気でヤクザがいそうな気配はない。


私達は車を停車して、病院の中に入った。病院内は監視カメラも多く、セキュリティ対策も金がかかっている。空港にある身体検査をする機械もあり、病室に行くにはそれを潜らないと行けない。つまり、武器の持ち込みは不可なので、病院内での殺し合いは厳しいはずだ。


受付で聞くと、面会者の人数は2人までみたいだ。なので、私と欣也伯父さんの2人で病室に向かう事にした。サナエちゃんとナツは受付のソファで待機とした。残りの6人の子分は車で待機だ。


サナエちゃんは耳にイヤホンを付けて、すぐに子分を動かせる状態みたいだ。それと、6人の子分は軍隊経験のある戦闘員なので、そこは安心できる。私はイングラムM11をサナエちゃんに預けた。もちろん、いつものリボルバー拳銃も預ける事にした。


私と欣也伯父さんは病室に向かった。病室の前には、セーラー服姿のハコネが立っていた。武器の持ち込みが不可なので、モップを壁に立てかけていた。おそらく、日本刀の代わりだろう。


私はハコネに声をかけた。

「やあ、ハコネ」

「冬子ちゃん……」

そう言って、涙目でギュッと抱きついてきたので、私も強く抱きしめ返した。

「ハコネ、無事良かった」

「冬子ちゃん、ウチは昨日風呂入ってないねん。だから、もう離れてや」

そう言うが、匂いは特にしなかった。


私はハコネの頭をポンポンした。

「ううん、気にするなよ。姉妹じゃないか」

「うん……。姉妹か……」

「それで、シマ姉さんは?」

「中におるよ」


それから、ハコネは病室のドアを開けてくれた。病室は個室であり、ベッドにはシマ姉さんが横たわっていた。


すぐに、欣也伯父さんが駆け寄った。

「シマ、大丈夫か?」


私も欣也伯父さんの後を追った。シマ姉さんは左腕にはギブスをしており、肩まで包帯をしており、痛々しい状態であった。


私達に気が付くと、シマ姉さんは真っ青な顔をこちらに向けてきた。

「会長、すんまへん。ウチ、油断しましたわ」

「バカ、勝手に行動するって言っただろ?」

「けど、網代のバカを殺すには武器商人から仕入れ……。ぎっ、痛っ……。ハア、ハア……。すっ、すんまへん、鎮痛剤が切れてみたいや。ハコネ、クスリ取ってや……。早く……」

すぐに、シマ姉さんの息が荒くなっていく。


どうやら、一命はとりとめたが、入院が必要なレベルだと理解した。それから、ハコネがシマ姉さんにクスリを飲ませた。どうやら、思ったよりも深刻な状態らしい。


しばらくすると、シマ姉さんは落ち着いた口調になる。

「ふぅー、落ち着いたわ。腹の肉を少し削られて、左肩を撃ち抜かれだけや。けど、左肩は神経がやられて、後遺症になるかもしれへん。それより、ウチも本家にすぐにも戻らしてもらいっせ。若頭がおらんかったら、組の指揮の指示も下がりますやろ? ウチに網代を殺らせてください」

「バカ、無理するな。それは赤坂組はやってくれる。お前はしばらく、身を隠しておけよ。今は一歩も歩けないなんだろ? はっきり言えば、足手まといだ」

「せやけど……、網代はウチが、ウチが……。ハアハア……、くそがぁー、左肩がなんで、こないに痛いねん」


いつもの冷静なシマ姉さんではない。若頭として、とても冷静な指揮をとれそうもない。欣也伯父さんの言う通り、足手まといだけな気がする。


ハコネもそう思ったらしく、シマ姉さんに助言をした。

「姉ちゃん、今は怪我を直すのが優先や。しばらくは、ホテルを転々として、逃げてればええよ。姉ちゃんはウチが守ったる。それなら、安心やろ?」


私もその意見に同意をする。

「シマ姉さん、ハコネの言う通りだよ。戦闘では東雲組は役に立たない。今までは経済面で、天王洲会を助けてきたんだし、今度は私達が恩を返す番だよ。私が欣也伯父さんを守るよ」


東雲組は経済ヤクザであり、民事の仕事に関してはプロだが、抗争に関しては素人当然である。これはシマ姉さんも分かっている事だ。


シマ姉さんはこっちを睨む。

「冬子ちゃんはアホやで。会長も本当は冬子ちゃんを巻き込みたくないんや。今からでもええ、さっさと海外に逃げな。ワン姉妹も死んで、父親の無念も晴れたやろ?」


私はシマ姉さんの肩に手をおく。

「ごめん、私は私の意思で動くだけだよ」

「そっ、そうかい……。じゃあ、しばらくココにいてや。ハコネだけじゃ、心もとないんや。どや、なんか食べるか? 内がなんでも奢ったるで。会長のガードはサナエちゃんに任せておけばええ」

「ゴメン、私が欣也伯父さんを守りたいんだ」

そう言うと、シマ姉さんは悲しそうな顔をした。ごめん、心配かけて……。


でも、これ以上家族を死なせるわけにはいかないんだ。そして話し合いの結果、シマ姉さんとハコネは闇医者と一緒に、都内のホテルを転々とする事に決まった。


シマ姉さんの具合は悪そうだが、すぐに死ぬ事はなさそうだ。ただ、左肩は全然動かないので、後遺症になってしまうのは可哀相だと思った。それも、仇を討てばいい話だ。


とりあえず、私と欣也伯父さんは病室を出る事にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ