第34章 中国マフィアの目的
一方、ワン・シャンリンは……。
逃走用に用意していたワゴン車の車内で、妹のワン・マーメイに電話をしていた。
「網代のバカがやる気になったみたいだ」
「姉さん、まずは第一段階クリアだね。私達の事は信用していた?」
「いや、金を受け取って、歌舞伎町を手に入れたら、私達のことは殺すつもりだろうな。だが、こっちの真の目的は分からんよ。こちらは何千億のビジネスを手に入れるのが目的なのにな」
「キャハハ、島国のジャップには理解できないだろうね。自分達が捨てた地方に、宝が眠っている事をね」
「フフフ、そういう事だ……」
ワン姉妹がお互いに笑いあった。
しばらくして、ワン・シャンリンは、とある倉庫にむかった。そこでは、関東移民学生連合会の残党が作った移民解放連盟のメンバーが数十人いた。
リーダーは二階堂という眼鏡をかけた青年であった。タートルネックのセーターに、安っぽいジーンズ姿で、昭和の浪人生みたいな感じだ。
彼は東大の現役学生であり、100人規模の学生運動のリーダーでもあった。ワン・シャンリンが日本で暴れていたのを見て、自分達も同じように革命をしたいと思ったのだ。
そこまで、彼らを動かす原動力は、親の過干渉に対する反抗期だった。小さい頃から、親に逆らうこともなく、恋愛禁止、部活禁止など選択肢を狭まれていた。それが、徐々に心を蝕んでいった。
そして、東大合格が全ての最終目標であったので、受かった後は目的がなく、不安になってしまったのだ。その結果、大学という自由な時間を消耗するのに、反社会的行動へと繋がっていくのに時間はかからなかった。
この組織は同じようなタイプの学生が集まっている。いわゆる、勉強以外の事は何も知らないボンボンの集団であった。まあ、とにかく反抗期の青年が集まった集団であり、ワン・シャンリンはアイドルのような扱いであった。ある意味、オタサーの姫であったのだ。
ただ、関東移民学生連合会と移民解放連盟の目的はあきらかに違っていた。ワン・シャンリンが率いる中国マフィアは、日本での違法ビジネスの拡大が目的であった。もちろん、表向きは過労死した同胞の敵討ちという大義名分があり、日本の野党政治家やマスコミを味方につけていた。
しかし、二階堂率いる移民解放連盟は革命ごっこが目的だ。日本政府を倒すわけもなく、意味のないデモや反社会的な行動で、自己陶酔するのが目的ある。まあ、自分達がニュースの中心でいれば、それで良いって感じだ。
ワン・シャンリンは倉庫に入ると、移民解放連盟のメンバーが一斉に頭を下げる。すぐに、リーダーの二階堂が前に出来てきた。
「ワン・シャンリン最高司令官、再び日本に足を運んで頂き、誠にありがとうございます」
「いや、諸君の協力により、日本に無事入国できた。心より、感謝する」
移民解放連盟の親族はエリートが多く、海運会社や外務省などの、お偉いさんがいたのだ。二階堂はそれらの力を使って、ワン・シャンリン達を違法入国させたのだ。そして、彼らは美しいワン・シャンリンに惚れていた。
彼女の為に命を捨てるのが人生の目的だと考えており、カルト教団のように教祖のように崇めていた。しかし、ワン・シャンリンは二階堂を駒の一つしか考えていなかった。
ワン・シャンリンが両手を開いて、演技ぶった口調で話す。
「君らを勇者として、私に協力を要請したい」
男達は互いに顔を見せあって、喜びの表情を見せる。自分達の教祖に立ちたいからだ。目的のない若者は盛大な物語に参加したいと思ってしまうのだ。特に青春時代がなかった男は特にその傾向が強いものだ。
二階堂は少年のようにワクワクした目を輝かせる。
「それで、俺達は何をすれば?」
「もし、私が殺されるようなことがあれば、お台場のカジノを占拠してほしい。そして、日本政府と人質交換を条件に、刑務所にいる同胞を解放させてやってくれ。それを遂行できる者が、次のリーダーである」
お台場の国営カジノは外人の観光客も多い。テロ事件になれば、世界中のニュースになる事は間違いなかった。ひねくれた若者が喜びそうな事件である。
だが、二階堂はワン・シャンリンの命を心配する。
「誰に殺されるんですか? 俺達も手伝わせてください。ソイツを殺してやりますよ」
「いや、1人で十分だ。私は天王洲会と決着を付けなければならないのだ。これは、自分の手でやりたい案件だ。私のワガママでもあるが、了承してくれるか?」
二階堂は自分の意見も聞いてもらいと思い、策略を申し伝えた。
「それでは、我々が天王洲会に乗り込みましょうか? その方がいいのでは?」
ワン・シャンリンは言葉を遮るように大声をあげる。
「バカものがぁー。天王洲会も日本政府に利用されているだけだ。真の敵は日本政府である。資本主義のクズどもに制裁を与えよ。まずは、日本の資金源であるカジノを壊せ」
「失礼しました」
そして、ワン・シャンリンは大声で叫ぶ。
「いいか、カジノこそ堕落の象徴である。そこを潰せるだけの器があるものこそ、私の後継者に相応しいい。いいか、カジノ占拠を頼むぞ?」
全員が一斉に頭を下げる。
「分かりましたぁー」
「諸君には期待をしている」
移民解放連盟のメンバーは自分達が人生の目標ができたと喜んでいた。それから、ワン・シャンリンは拳銃や手榴弾を持ってきた。これを使って、テロ活動に励んでくれと言いたいのだ。
ワン・シャンリンは移民解放連盟のメンバーの顔を見てこう思っていた。ガリガリのメガネや小太りの男、チグハグなファッションした勘違い男ばかりで、気持ち悪い存在だと。
だが、自分達の真の目的を達成するために囮として、彼らが必要であった。理由は東京の治安を悪くするのが目的であった。テロリストの占拠事件になれば、警察がお台場に集中して、マスコミもこれだけを報道する。そして、裏社会は天王洲会の分裂で大騒ぎになる。
日本は大混乱になり、人々も正しい判断ができなくなる。更に警察は人手不足で、他の県警から応援を呼ばないといけない状態になる。つまり、普通よりも犯罪がしやすい状態になる。
ワン・シャンリンは手に入れたいデータがあった。それを盗むのが今回の目的だ。それは日本が地方に忘れた資源であった。その資源をビジネスにするのが、ワン姉妹の真の目的であったのだ。資源についての詳細は、物語の後半で説明することにしよう。




