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第29章 ナツのギャンブル破綻物語

俺は歌舞伎町の裏道を歩いていた。


すると、隣を一緒に歩く、真一が声をかけてきた。

「なあ、ナツ……。今から行く、賭場は網代組のシマだから、問題を起こさないでくれよ」

網代組って、あのハルクとかいうバケモノが所属する組のことか……。


俺はそれを真一に聞いた。

「今日、俺がぶっ飛ばした奴のヤクザがいる組だっけ?」

「いやいや、ナツがぶっ飛ばされていたじゃん。スポーンってさ」

はあ? このメガネ男は俺が弱いとでも言いたいのか? クソ生意気だ。


俺は真一の頭にゲンコツを食らわした。

「いってー。何するんだよ?」

真一は涙目になり、その場にしゃがんで、頭頂部を摩っていた。


俺は上から見下ろすように言った。

「途中で邪魔が入らなければ、俺が勝ったぜ」

「いやいや、勝てるわけないよ。あの人が喧嘩に負けた所を見たことないもん」

俺は真一の額にデコピンをした。


すると、真一が大声をあげた。

「ぐわっー」

「お前、俺の方が弱いって言いたいのか?」


俺がジロリと睨みつけると、真一は怯えだした。

「ごっ、ごめん、ごめん……。ナツは一番強いよ。だから、暴力はやめて……」

「ワッハハハ、分かればよろしい」


それにしても、あのハルクって男は本当に強かったな。また、戦う気がする。まあ、今はギャンブルを楽しむ時間だ。


それから、歌舞伎町の寿司屋の2Fに案内された。そこの一室でバッタまき(アトサキ)と呼ばれるギャンブルが開催されていた。畳の部屋に白い布を被せたゴザがあり、その周りには数人の男達がいた。


俺はオンラインゲームで、この花札のルールを知っていた。簡単に言えば、数字の予想ゲームのようなものだ。主催者が花札を配って、アトとサキと呼ばれる場所に3枚ずつ配る。そして、数の多い方勝ちだ。例えば、サキが3、アトが4なら、アトが勝ちって具合だ。まあ、画像がないと難しいかもしれん。暇な奴は動画サイトでも見てくれ。


真一は寿司屋の店長らしき人物に、スマホでマネー決済していた。そういえば、サナエちゃんにお使いを頼まれていたな。組での飲み食いの支払いって所だろう。どれ、どのくらいの金を持っているのだろう?


俺は真一のスマホ画面を覗いた。すると、7800万ギルの金額を持っている事が分かった。うおおおーー、超金持ちじゃん。天王洲会は相当儲かっているな。こんなチンチクリンに大金を持たせているのだからな。


俺は真一の肩に顎を置いた。

「真一くん、金持ちじゃないの? ちょっと貸してくれよ」

「だめだめ、これは組の管理費だから……。サナエちゃんに言われて、寿司屋の支払いを頼まれただけ。これは、俺の金じゃないから、絶対に無理なやつ」

「まあ、少しくらいいいだろ」

「じゃあ、冬子に報告するよ。それでもいいか?」

くっ、コイツ……、卑怯な手を使いやがって……。


真一は勝ち誇ったような顔をする。

「それで、ナツどうすんの?」

「バーカ、冗談に決まっているだろ? お前なんかに頼らんぜ」

すると、真一はボソッと呟く。

「本気だったくせに……」


俺は真一にラリアットした。すると、体重の軽い真一は地面に転がった。

「いてて……」

「早く行くぞ、メガネ」

「ふう、ナツはこれだもんなぁー」


俺は賭場のゴザに座った。そして、30分後。持っていた10万円はすぐに消えてしまった。くそ、ふざけんなよ。ここで、手ぶらで帰るわけにはいかねえ。


俺は仕方なく、後ろで見ていた真一に声をかけた。

「真一、金貸してくれ」

「いや、無理だ。もう、帰ろう」


くそ、絶対に貸してくれないタイプだ。仮に無理やり奪っても、冬子に報告されて終了である。なら、なんとか真一を仲間にするしかない。そういえば、コイツは冬子に惚れていたな。


ムフフ、俺って悪い女だぜ。

「なあ、真一。冬子の恋愛事情知りたくない?」

「えっ? えっ、いや……。別にプライベートな事だし、冬子に悪いからいいよ」

「そうか、残念だな。この1年の間に、冬子は色々な男からナンパされていたぞ。そういえば、あの男とは……。いや、真一が興味ならいいや」

そうやって、言葉を濁していくと、真一は不安な表情になっていく。フフフ、効いている、効いている。


案の定、真一は俺の肩に手をかけてきた。

「ナツ、あの男って誰だよ? 教えてくれよ」

「いや、イタリア人の男だよ。車に詳しくてな、冬子と車の話題で盛り上がっていたわ。やっぱり、車が好きな男がタイプなんだろうな……」

「車か……。そういえば、昔からミニカー集めていたな」


俺は本題に入るとした。

「なあ、真一も免許とれる歳だろ? 車を買えばいいじゃん」

「もう、免許は持っているよ。オートマ車限定だけどね。車は高くて、バイトしないと買えないよ。数年働いたら、買う予定だよ」

「そのバイトしている間に、冬子が処女を喪失しちゃうかもよ? あれだけの美人だし、周りの男はほっておかないよ。買うなら、今でしょ?」


真一はオロオロと不安な表情に変わっていく。おそらく、冬子の最初の相手になりたいのだろう。男は処女が好きだからな。


そして、本音を吐き出した。

「くっ、くっ、車買ったら、冬子をドライブに誘う気だよ。でも、今は金がないから、仕方ないじゃないか……。俺はまだ高校生だしさ」


俺は真一が持っているスマホを指さす。

「そこに、金があるじゃん。それを増やせばいいだけだ」

「でも、ばれたら殺されるぞ。シマ姉さんが稼いだ金だよ、身内にも金は厳しい人だし……」


シマ姉さん、あの銀髪の着物ヤクザか……。あいつは蛇のような目つきをしていたし、俺もちょっと怖い。真一が怯えるのも無理もないか……。くそ、中々と頭の固い奴だ。


一気に畳みかけるしかない。

「そうだな、そうやってチャンスを逃すんだな。はぁー、冬子は男らしい男が好きって言っていたなあ。真一は優柔不断だし……。まあ、頼りないもんなあぁー。でも、車があればなあぁー」

そう言うと、しばらく悩んでいた真一が折れる。


真一は俺の目をジッと見つめた。

「ナツ、勝てる自信があるのかよ」

よし、食いついてきやがったぜ。

「ああ、あの札の配り手だけどな、仕込みができるタイプとみた。おそらく、商店街の店主連中には定期的に勝たせている。近所の付き合いの兼ね合いもあるのだと思う。つまり、あの店主連中と同じ方を選べば勝てる」

「なるほど。とりあえず、試しに1万円かけて、当たったら信じてやる」

「おう、勝った分け前は半分ずつだ。それの勝った金で、新車の車を買って、冬子をドライブにでも誘うんだな」

それから、俺達は予想通りに勝ちまくった。


札の配り手が大声を出す。

「さあ、アトサキどっちも、どっちも」

商店街の酒屋のオッサンがアトを選んだ。


俺もそれにならって、アトにすると勝った。酒屋のオッサン、パン屋のオッサン、肉屋のオッサンが多く張り込んだ時は、勝てるように細工をしているのだろう。この法則で、俺は200万円も儲かっていた。


隣の真一は喜ぶように笑った。

「ナツ、凄いじゃないか。もう、これで帰ろうよ。100万もあれば、中古車で良いのが買えるよ。ありがとう」

「バカ、買うなら新車を買おうぜ。少なくても、500万は持って帰ろうぜ。俺を信じろ」

「でも、そろそろバレるぞ」

「いいから、俺に任せておけ」


しかし、これが命取りになった。商店街のオッサンたちが帰ると、札の配り手が変わったのだ。すぐに、50万円が消し飛んで行った。ここで、俺が帰れば良かったのだが、元来の短気な性格が災いした。


すぐにレートをあげて、胴元とサシで勝負をするように持ち掛けた。数時間後、借金は500万を超えていた。


俺は賭場で大声をあげた。

「おいおい、サキが4回連続って、イカサマだろう?」

「お客さん、さっきまで勝っていたじゃないですか? ギャンブルは時の運もあるんですよ。みんなで楽しみましょうや」

「うるせー、イカサマだぁー。すぐに金返せ、ぶっ殺すぞ」

「おい、お客さんがお帰りだ」

胴元がそう言って、手を叩くと、大男が奥から出てきた。


しかし、俺は大男をぶっ飛ばして、賭場で滅茶苦茶に暴れまくった。その結果、治療費、修繕費、慰謝料が500万ギル発生した。そして、永遠の出禁になってしまった。現在の借金は最初の負けの500万円、更に慰謝料の500万ギルをあわせて、1000万ギルである。嘘だろ、これ現実か?


寿司屋を追い出されて、真一は道に座り込んで、頭を抱え込んで泣いていた。

「だっ、だから、100万儲けた時点で、帰ればよかったんだよ。それをナツが……」

「うるせー、イカサマだったんだよ」

「それより、すぐにシマ姉さんに謝りに行こう。素直に謝ればなんとかなるかもしれない。ナツも一緒に土下座しよう。俺もするしさ」

「バカ、ヤクザが許してくれるわけないだろう。結局は借金になるんだぞ。だったら、金を稼ぐしかないだろう。まだ元銭はあるんだ、ポジティブシンキングだぜ」


そうだ、謝っても借金になる。冬子が庇ってくれても、借金はチャラにはならない。あの銀髪女に、そんな甘い雰囲気はなかった。つまり、現金を稼いで返すしかない。


だけど、働いて返すのは面倒だ。なによりも、今は元銭があるのだ。そう、残りは6000万以上あるのだ。これからが、本当のスタートだぜ。

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