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第21章 黒羽ショウタという男

そして、一方。黒羽組の事務所は荒れていた。


天王洲会内黒羽組。構成員は87名。おもに、スカウト会社バウンドを経営している。スカウトは風俗、キャバクラ、アダルトビデオなどがある。


場所は新宿のヤクザマンションと呼ばれる場所にあった。昭和時代に作られて、令和時代に取り壊しがおこなわれた。しかし、同じ場所にマンションが建てられたので、この時代もヤクザマンションと呼ばれているのだ。


もちろん、訳アリの人が多く、住居を目的で借りている人よりも、デリヘル、ヤクザの事務所、グレーゾーンの会社など多く入っている。


黒羽組の組長である黒羽ショウタは元半グレであった。半グレとは半分がグレており、半分が堅気扱いである。元々はスカウトマンをしており、多くの仲間を従えていた。しかし、未成年の女の子を無理やり、違法風俗で働かせていた。


そこに、天王洲会が警察に頼まれて、仲介に入ってきたのだった。となると、選択肢は2つだ。天王洲会の傘下に入って、18歳以下はスカウトしないと約束すること。できないなら、抗争をして決着をつけることだ。


もちろん、半グレとヤクザの戦いだと勝負は見えている。黒羽の返事は決まっていた。天王洲会の傘下になり、18歳以下のスカウトはせず、毎月の上納金を収める選択だ。


黒羽はヤクザになって、手に入れたものあるが、半グレの時よりも手に残る金は減っていた。そして、ヤクザの方が規則や掟が多く堅苦しいものであり、黒羽は天王洲会に不満を持ち始めていた。


事務所のソファに黒羽は座っていた。床にはナツにぶっ飛ばされた連中が正座をしていた。黒羽組若頭の市原、そして、その子分の2人である。そのソファを囲むように、数人の子分が両手を後ろで組んで立っている。


黒羽はピンクの髪に黒スーツ姿というヤクザとは思えない恰好をしていた。耳には無数のピアスもあり、バンドマンにも見える男だ。クロムハーツが好きで、指輪、ブレスレット、ネックレスをチャラチャラと身につけている。しかし、直系の組長では32歳と若い。


黒羽はジッと市原の顔を見つめる。

「おい、市原聞いたぞ、女にやられたみたいだな」

「あっ、あの、ちょっと……。こっ、これには理由が……」

市原は黒羽の残忍さを知っているので、体と声が震えていたのである。


その予感は当たり、黒羽は近くにあった木刀を、市原の頭めがけて、何度も振り下ろした。

「つーか、親に言い訳すんなぁー、このボンクラがぁー」

「すんません、すんません……」

市原は頭を押さえながら、肩で息をしていた。その抑えている手からは、血が落ちていた。


それから、黒羽は事務所に響き渡る怒声を放つ。

「市原ぁー、ヤクザが女に喧嘩で負けてどうすんだ? もう、歌舞伎町中に噂が流れているぞ。黒羽組は頼りにならねえって思われて、ケツモチを他にとられるぞ。それを分かっているのか? おおっ、コノヤロー」

「すんません、オヤジ。すいません……」

「なら、その女を拉致してこい」

「そっ、それは出来ません」


市原は一連の流れを全て説明した。スカウトした女は本家の客人であるナツ、助けてくれたのは網代組のハルク。更にハルクの子分の治療費は黒羽組で負担することである。


その話の内容に、黒羽が怒りを露わにする。

「じゃあ、何か? テメーのせいで、本家に目を付けられて、網代組に借りを作って、金までを払わないといけねえのか? 俺が幹部会で恥をかくんだぞぉー。分かってんのか?」

そう言いながら、黒羽はうずくまくる市原の背中に、何回も木刀を振り下ろした。

「テメー、市原死ね、死ね、親不幸ものがぁー」

「オヤジ、すいません、すいません」


そして、5分後に黒羽は煙草を吸っていた。

「ふぅー、もういいや……。市原、テメーは破門だ」


血まみれの市原は懇願するような目をみせる。

「ハアハア、それだけは勘弁してください、なんでもします」

「明日から、キャバクラのボーイでもやれや。堅気の方がお似合いだろ?」

「もっ、もう、1度チャンスください。だから、破門は取り消してください」


黒羽は市原が使える部分も知っていた。なので、最初から破門する気はなかったのだ。それに付き合いも長いから、自分の思うように扱いやすいのが気に入っていた。


しかし、ここでヤキを入れないと、他の子分にも示しがつかないのだ。特に本家と揉めるなと、周りの子分にアピールをしているのだ。


黒羽は新しい煙草をくわえる。

「おい、市原……。火だ」

市原は震える手でライターを出した。

「おっ、オヤジ、失礼します」

「おう。お前とは20歳からの付き合いだ。スカウト時代も、辛いときも一緒に乗り越えてきたな?」

「はっ、はい」

ボロボロの市原の姿に、他の子分も黒羽に恐怖を抱く表情になっていく。


黒羽はそれを見て、満足そうな顔で紫煙を吹き出す。

「今回だけは許してやる」

「オヤジ、本当ですか? ありがとうございます」

「ただ、どんな時も、俺の命を守る為に行動しろや、分かったか?」

「はっ、はい」

そう言うと、市原はとても嬉しそうな顔をした。


それを見た黒羽は、まだまだ使える奴だろ思っていた。そこに、思いもがけない人物が入ってきた。

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