第14章 恐怖のデスドローン
日本編に戻ります。
私は新宿中央公園のベンチでナツの話を聞き終わった。
ナツはこちらに顔を向けた。
「まっ、冬子ちゃんは恵まれているって事だよ。父親は殺されたけどさ、帰れる家があるしさ……。それに冬子の父親だって、人殺しているだろ? 殺されても、文句は言えないでしょ?」
「まあ、そうだね」
「そうそう、冬子も落ち着けよ。熱くなったら、負けるぜ」
ナツの言う通りで、頭に血が上りすぎていたかもしれない。私の父親は人の命を殺めてきたので、いつかは殺されることは分かっていた。相手は殺すけど、自分だけは無事でいたいなんてムシが良さ過ぎる。私は自分勝手な考えで動いていた。
私は思わず苦笑いをしてしまった。
「だね、冷静にならないとダメだね。いやな過去話させて悪かったな」
ナツだって、昔の話をしたくなかったと思う。でも、私を落ち着かせるために、色々と心配してくれたのだ。いつもはワガママだけど、本当はやさしい部分ももっているのだ。
私はナツに素直にお礼を言った。
「ナツ、ありがとう」
「うん、演説料50万ギルです」
そう言って、ナツは手を差し出してきた。
「えっ?」
「えっ?」
お互いに目を合わせる。
そして、もう1回ちゃんと聞いた。
「ナツ、なんて言った?」
「だから、50万ギルよこせよ。演説料だよ。その金でパチンコに行くんだよ。冬子から預かった生活費をつぎ込んじまったからさ。はい、50万ギル」
そう言って、金を置けと言わんばかりに、手のひらを差し出してきた。
私はナツの顔面に裏拳を打ち込んだ。
「ごはっ」
そう言って、ナツはベンチの背もたれを超えて、後ろにズドンと倒れたのであった。
ナツはゾンビのように立ち上がる。
「冬子ちゃん、何するの? 痛いでしょ」
「いや、お前さぁ、殺すぞ。生活費の通帳は100万ギルくらい入っていただろ? 全部パチンコにつぎ込んだの?」
「あっ、50万だけパチンコで、残りの50万はパチスロだから……。だから、怒らないでよ」
「全部じゃねーか」
私はそう叫んで、ナツにラリアットを食らわした。ナツは地面にゴロゴロと転がった。
コイツ、この3日間で100万ギルも使ったのか? 激しい怒りが込み上げてきた。私はナツの過去話がくだらなく感じてきた。
私は地面に座り込むナツの両耳を引っ張る。
「人の事聞かない耳はいらないよね?」
「ギエエー、耳がとれちゃうよ」
「だめだ、許さん」
「分かった。返すよ。あの中国マフィアを捕まえるのに協力するからさ」
私は両耳を放した。
「まあ、許してやるよ」
なんかバカすぎて、怒るのもバカみたいだと思ったのだ。しかし、そういえば早乙女レオナって、かなり有名な賞金稼ぎだ。賞金稼ぎリストでは情報公開されていないけど、裏番付の掲示板では、世界ランキングでは5本の指に入っているはずだ。
ナツが凄く強い理由も分かる。師匠に恵まれたのであろう。ワン・シャンリンとワン・マーメイの2人を倒すのにナツは必要だ。このワン姉妹はこれまでの敵とは違うのだ。
私はベンチに腰かけた。すると、ナツが耳打ちしてきた。
「冬子、視線はそのままにしとけ」
「なんだよ、いきなりシリアスモードになってよ。あそこにいる男が怪しい」
また、適当な事を言って話を逸らそうとしている気がする。
とりあえず、私は自動販売機の前にいる男を見た。
「ナツ、ジュースの補充員だろ? どこが怪しいのさ?」
「見た目は怪しくない。でも、さっきから動かないし、補充する飲み物も持っていない」
確かにさっきから、ずっといるよな。ナツの言う通り怪しく見えてきた。
ナツは話を続ける。
「アイツが爆弾犯じゃねーの? 後をつけてみようぜ」
「いや、確信もないのに……」
そう言っている内に、男は歩き出したのであった。
でも、ここにいても仕方ない。確かにナツの感はたまに鋭いのだ。私はその感覚にかける事にした。私は愛車のハコスカを取りに行った。それから、ナツを助手席に乗せて、自動販売機の補充業者の車を追った。
その頃に自販機補充の4tトラックの中では……。ワン・マーメイとその部下が一人いた。そう、関東移民学生連合会の参謀委員だった女だ。つまり、ナンバー2である。金髪にオーバーサイズのパーカーで、高級ヘッドホンを頭につけている。聞いている曲はヘビィメタルだ。
ワン・マーメイがノートパソコンを見ながら口を開く。
「あの車、あとをつけているな」
「本当ですか?」
都庁に爆破テロをしたのはワン・マーメイであった。仲間におとりになってもらい、自分は自販機の業者に紛れて、現場から逃げようとしていたのだ。
ワン・マーメイはスマホを手に取り、姉であるワン・シャンリンに連絡を取った。
「姉さん、誰かにつけられている」
「誰だ? 警察か?」
「分からないけど、警察ではないは確かだ。普通はあんな目立つ車は使わない」
トラックの荷台に仕込んでいるカメラから、外の様子を見る事ができるようにしてあった。ワン・マーメイはノートパソコンの画面にカメラの映像を映した。そこには冬子達が乗っているハコスカが走っていた。
ワン・マーメイはその情報を姉に伝える。
「若い女だ。若い女2人が古い車に乗っている。年は20代、いやもっと若い、おそらく10代だと思う。東洋人と西洋人の2人組だ」
「そうか、公安関係かもしれん。とりあえず、品川コンテナ埠頭まで移動しろ。そこまで、付いてくるなら撃滅しろ。デスドローンの使用を許可する」
「了解」
私は目の前のトラックを追った。新宿通り、内堀通り、桜田通りと走り抜けていく。気がつくと、4tトラックは品川コンテナ埠頭前に停まった。すぐ近くには東京湾が見えて、大量のコンテナが置いてある。
トラックは海に近い場所に車を停めた。こちらも距離と空けて駐車をしてエンジンを切った。
しかし、まずいな、ここには一般乗車はほとんど入らない。そもそも、人通りは少ないので、こんな車だとかなり目立つ。もしかして、罠にはめられたかもしれない。
ナツはバックミラーに気が付く。
「冬子、なんかドローンが近づいてきたぞ。なんか、嫌な予感……」
私は窓から首を出して、後方を確認した。ナツの言う通り、ドローンが空を飛んでいた。そのドローンにはサブマシンガンのようなモノが付いていた。
私はエンジンをかける。
「ヤバい、デスドローンだ」
そう言うと、ロケットスタートをして車を発進させた。すると、すぐにデスドローンから、マシンガンの弾が発射される。
ナツは慌てた表情をする。
「おい、撃ってきたぞ」
「見りゃ分かるよ」
「どうすんの?」
「まあ、任せておけよ」
いずれは弾切れになる。それまでは我慢比べだ。それがデスドローンの雄一の弱点であり、持ち主の場所まで帰らないと、弾が装填できないのだ。
私は車を左右に振って、なんとか弾を避けた。更にスピードを出して、デスドローンとの距離をあける。おそらく、向こうの最高スピードは60キロくらいだろう。こちらは100キロを軽く超える事が出来るんだぜ。
しかし、品川コンテナ埠頭は曲がり角が多く、空中から攻撃できる方が有利だ。案の定、ドローンはコンテナを超えて、先回りしてきた。
そして、すぐに目の前にデスドローンがきた。
「冬子、前に来たぞ」
「くそ」
私はすぐにバッグにギアを入れて逃げだした。その間も、デスドローンのマシンガンは発射された。フロントガラスに一発弾を貰ってしまった。
ナツが慌てふためく。
「ひえっ、当たっているじゃねえか。このままだと殺されるぞ」
「心配すんな。もう、向こうは弾切れになる」
しばらくすると、私が言った通りに、デスドローンはマシンガンを撃ってこなくなった。しかし、爆弾を積んでいることは間違いない。それは3年前にニュースで、何度も言っていたから覚えているのだ。パトカーが爆発したシーンは今でも思い出せる。つまり、接触したら、ハコスカごと爆死だ
私はサイドブレーキを使用しながら、ドリフト走行をして、クルクルと品川コンテナ埠頭を何周もする。かなり、無茶な運転だったので、ナツがこっちに突っ込んできたり、天井に頭をぶつけるなど、ピンボール状態だった。
ナツが文句をたれまくる。
「うげっー、無理するな。俺が死んじゃうよ、冬子ちゃん」
「うるさい」
私はなんとか、デスドローンの後ろ姿を捉えた。窓から拳銃を出して、片手で狙いをつけた。この距離なら、車を運転しながらでも余裕だ。私は拳銃の引き金を絞った。2発の銃弾がデスドローンに撃ち込まれる。よし、勝った。
そう思われたのだが、キンキンという音と共に弾が弾かれたのであった。
「くそ、防弾か……、マグナム弾なのに」
「もう、ほっておけよ」
「バカ、あれには爆弾がついているんだぞ。接触したら、ドカンだ。カメラもついているし、どこまでも追ってくるぞ」
「うえええー、どげんしよう」




