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第13章 そして、賞金稼ぎへ(オランダ編)

師匠の情報によると、テツナー兄弟は近くの酒場を拠点としているらしい。俺達はすぐさまにそこに移動をした。


師匠は酒場の表口に立っていた。

「ナツ、お前は裏口から回れ。そこに何人か逃げるだろうな。そいつらを倒すのが、お前の初仕事だ。やれるか?」

「ああ、バカにするな」

「今から、私は表口から殴り込みにいくからな。裏口は任せたぞ、じゃあ、5分後に作戦決行だ」

「分かった」


俺は裏口へ移動した。裏口付近は人通りがなく、外灯も薄暗く不気味な感じであった。5分後、酒場の中で数十発の銃声が聞こえた。更に若い男の叫んでいる声が聞こえる。


おそらく、中の連中が師匠に殴られているのだ。ふん、俺がいなくても、師匠だけで十分なはずだ。なのに、裏口で見張りって、何の意味があるんだ? そして、更に銃声が1発聞こえた。


その瞬間に、裏口のドアがバタンと開いた。そこにはジョバンニがいた。ちょっと、背が高くなっていたが、顔が整っている所は変わらない。

「おっ、ひょっとしてナツか?」

「ああ……」


やはり、俺はジョバンニを見た瞬間に、売春しているのは嘘だと思った。おそらく、まだ好きなのだろう。だから、いきなり捕まえる気にはなれなかった。


ジョバンニは口を開く。

「ナツ、金持っているか?」

「うん、あるよ」

「よし、行くぞ。事情は後で説明する」

そう言うと、俺の手を引っ張りながら、走り出したのであった。


そして、人気のない場所まで移動したのであった。気が付くと、ジョバンニと初めて出会った袋小路にいた。それから、薄暗い外灯が、スポットライトのように2人を照らした。まるで、恋愛映画の告白シーンのように感じた。


そこで、ジョバンニは天使のような表情を見せた。

「ハアハア、走ったら疲れたわ。ナツ、ずっと会いたかったよ。人に探させていたんだよ」

そう言うと、俺をギュッと抱きしめてきた。ああ、自分が女なんだと、実感したことはこの時ほどなかった。すごく、安心して嬉しい気持ちになった。


更にジョバンニが頭をナデナデしてきた。

「ナツ、よく生きてきてくれた。一度だって、忘れた日はなかったよ」

「うん、俺もずっと会いたかったよ」


ふと、ヘレンの笑顔が頭に浮かぶ。ヘレンも本当はジョバンニの事が好きだったのを知っていた。だから、俺はジョバンニに本音を聞くことにした。いつだって、彼は嘘をついた事はなかったから……。

「ねえ、ヘレンはどうしている?」

「ああ、実は裕福な老夫婦に引き取られたよ。ナツとも会いたがっていたよ。しばらくしたら、2人で会いにいこうよ。ナツが可愛くなって、ビックリするぞ、ハハハ」


俺はジョバンニから離れた。そう、この恋物語から目が覚めたのであった。


ジョバンニは驚いた顔をした。

「どうした? ナツ、俺なんかしたか?」

「ねえ、さっき酒場に入った女は賞金稼ぎだよ。だから、逃げたんだろ?」

「お前、なんでそんな事知っているんだ?」


俺はニヤリとした表情を見せる。

「俺も賞金稼ぎだから」

そう言った瞬間に、ジョバンニ拳銃を抜いた。ほぼ同時に、俺の後ろ回し蹴りが放たれた。


俺の右回し蹴りの靴底が、ジョバンニの拳銃を握りしめた右手の甲を捉えていた。その右手は首を掻くような形で回転して、銃口がジョバンニの喉に向かって、照準を定めてしまう。


更にジョバンニは蹴られた衝撃で、自分の首に向けて引き金をひいてしまったのだ。薄暗い路地裏に、パンと一発の拳銃音が鳴り響いた。


そして、ジョバンニの細い首に穴が開き、大量の血がボコボコと流れ出す。

「あぐっ、ナナナ、ツッツウウウ……」

そう言い残すと、地面に倒れて死んだ。


俺はこの夜に初めて人を殺した。そして、男に恋愛感情を抱く事はなくなったのであった。


先程の酒場に戻ると、師匠がポケットに手を入れて立っていた。

「こっちは全て終わったよ」

中を覗くと、ボコボコにされた男達がころがっていた。その中にジョバンニの兄貴もいた。前歯はなく、手足はありえない方向へ曲がっていた。


俺は師匠に報告をした。

「ジョバンニは殺したよ」

「そうか……」


後から聞いた話だが、わざとジョバンニを裏口から逃がさせたらしい。そして、俺に冷酷さを学ばせたかったのが理由だ。まあ、人を殺す経験は一線を超えるのは間違いない。


それから、ヘレンを助けようとして、再び裏飾り窓を訪ねた。麻薬の厚生施設に入れてあげようと思ったのだが、あの日に客に首を握りつぶされて殺されていた。それほど、キメセックスは人を狂わせるものだ。


死んだ売春婦はゴミのように処理され、すぐに新しい女の子がスカウトされて、補充されていくのだ。

まるで、味のなくなったチューインガムが、道端に捨てられるような人生だ。これが現実の世界でおこなわれているのだ。


それから、3年の月日が流れた。俺は13歳になっており、賞金稼ぎの免許も手に入れていた。3年間は師匠の元で格闘技や世の中の仕組みなど生きるための事を教わった。そして、師匠と一緒に賞金稼ぎの仕事に明け暮れた。


だけど、金の管理は全て師匠がしていた。どれだけ稼いでも、俺の小遣いは月に3万ギルであった。師匠いわく、ナツはワガママなので、我慢を学ぶべきという教育方針であった。しかも、朝は6時に起きて、毎日10キロも走らされていた。他にも師匠の食事や洗い物など、身のまわりの世話をした。


ハッキリ言えば、思春期の女子にはきつ過ぎる環境であった。何度も逃げようとしたが、そのたびに捕まって、お尻ペンペンの刑をくらった。力と頭では絶対に勝てなかった。


そういう環境を過ごすうちに、家出の計画を立てるまでに時間はかからなかった。もう、1人でもやっていける大人になっていたのだ。ある日、師匠が深酒をしたときに、酒に睡眠薬をこっそりと入れたのだ。そう、俺は師匠が1か月に1回はヤケ酒をするのを知っていたのだ。これを利用しない手はない。


それから、計画を実行して、師匠を爆睡させる事に成功した。そして、俺は師匠の部屋にあった、ブレスレットや宝石などを全て盗んだのであった。その他にも、師匠が愛用していたスカジャンも盗んでやった。ざまあみろ。


今回は何か国も経由した家出なので、現在にいたるまで特定はされなかったのである。俺はアメリカにわたり、宝石や貴金属を売りさばいて、贅沢な生活を楽しんだ。


すぐに昼夜逆転になったが、好きな時に遊んで、好きな時に食べて、好きな時に寝る。たまに仕事で賞金首を捕まえたりした。


これから、更に3年後に冬子と出会うのであった。まったく、日本人に縁のある人生だとは思う。


オランダ編完結です。

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