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第12章 裏窓飾り(オランダ編)

俺は師匠を睨む。

「何だよ、これ何かの間違いだろ?」

「そう言うと思っていたよ。じゃあ、こっちについて来いよ」


俺は師匠の後についていく。そのエリアはアムステルダムから、かなり離れた所にあるみたいだ。この町でもギャングの巣靴の場所らしく、子供だけで入れない場所だ。ジョバンニは近づくなと言われていたので、俺自身も足を踏み入れたことはない。


俺は師匠の後ろについていく。だんだんと、廃墟に近いような街並みになっていく。地べたに座り込んでいる男達はガラが悪いのが分かる。麻薬や酒に溺れたダメ人間たちだ。


師匠はそれを気にせず、ズンズンと歩いていく。

「ナツ、キョロキョロするな」

「はいよ」

「ところで、オランダの飾り窓を知っているか?」


オランダは売春が法律で許されている国だ。オランダに住んでいて、飾り窓を知らない奴はモグリだ。アムステルダムにある建物に、ウインドショッピングの商品の代わりに、売春婦が入っており、客が窓の外から品定めをするシステムだ。


まあ、直接顔を拝めるので、お客さんからもクレームは少ない。日本の飛田新地という売春エリアも、飾り窓を参考にされたとか、されないとか……。


俺は師匠に伝える。

「ふん、当たり前だろ。オランダに住んでいて、知らない奴はいねえよ」

「じゃあ、裏窓飾りは知っているか?」

裏窓飾り? まったく、聞いた事がない。

「いや、知らない」

「じゃあ、案内してやる」


師匠は細い道をスタスタと進んでいく。しばらくすると、大きな通りに出た。そこはアムステルダムの飾り窓と似たような造りだった。しかし、よく見ると、逃げられない檻のような窓に売春婦が入っていた。


それと、窓に近づくと、あきらかに違う点があったのだ。窓に入っている売春婦が10歳~16歳くらいの女の子だった。これは明らかに違法であるのは間違いない。だけど、生きるために子供でも売春するのは仕方ないと思う。俺は師匠にその考えを伝えた。


師匠はため息をつく。

「まあな、それもそうだ。だけど、無理やり売春させられていたら? それでも、仕方ないと思うのか?」

「無理やり?」


師匠の説明によると、女の子は覚醒剤による支配で、無理やり働かされているらしい。ジョバンニが孤独な女の子に声をかけて、自分に惚れさせるみたいだ。


そして、セックスできる年齢になったら、覚醒剤を使用したセックスでメロメロさせる。気が付いたときには、覚醒剤なしでは生きられない体になっているのだ。


オランダでは麻薬は合法とされているが、なんでもオッケーなわけでない。コーヒーショップなど場所や使用する量に制限があるのだ。補足:ソフトドラッグ(マリファナ)はOK。ハードドラッグ(コカイン、ヘロイン、覚醒剤)はNG。


だから、覚醒剤によるフリーセックスはもちろん、違法で逮捕されるのだ。これが、オランダの移民マフィアのロリコンビジネスである。


世界中のロリコンマニアの間では、とても人気が高く、海外からのリピーターも多いらしい。しかも、覚醒剤の売買もここで出来るので、キメセックスをしたい人にも人気だ。


そう師匠は得意気に語った。

「そう、これを凶悪なテツナー兄弟が仕切っている。その弟であり、スカウト役がジョバンニだ」

「嘘だ、ジョバンニはそんな事をする男じゃない」


師匠は俺の手首を掴んで、飾り窓の前を歩いていく。しばらくして、足を止めて、1人の売春婦を指さした。


俺はそれを見て、心臓が飛び出しそうになった。

「嘘だろ、ヘレン」

そこには、目がトローンとして、涎を垂らしているヘレンがいた。同じ釜の飯を食べた、生まれて初めての友達であった。師匠は俺の肩を叩いた。

「ナツ、お前もあそこにたら、いずれこうなったんだぞ。現実を見ろ」

「………」

「ヘレンと話してみるか?」

俺は黙ってコクコクと頷いた。


師匠は仲介人に金を払って、ヘレンを指名したのであった。客が子供でも、同性愛者でも、金さえ払えばどうでもいいみたいだ。マフィアとは金になればなんでもするのだ。


俺は建物に入って、飾り窓の裏側に回り、ドアを開いて入った。

「ヘレン、俺だよ。ナツだよ、覚えているか?」

その返事にヘレンは抱きついてきた。やっぱり、辛い時期を過ごした友達なので、分かってくれて嬉しかった。しかし、それは俺の幻想であった。


ヘレンは俺の耳を舐め始めた。そして、耳元に欲望の声を吐き出してきた。

「クスリ、ください。なんでもします。クスリください……」

「いやいや、俺だよ。ナツだよ、一緒のベッドで過ごしたじゃん。ヘレンが怖いって言ってさ、一緒にトイレ付いていってあげたろ?」

「クスリください、お願いします、クスリ……」

もう、覚醒剤の末期症状である。記憶をつかさどる脳の一部がダメなのだろう。


ヘレンは俺の靴を脱がして、足の指を舐め始めた。

「クスリください、つらいんです。クスリください……」

どこかの変態が喜ぶプレイでも仕込まれたのだろう。


あの優しかったヘレンがこういう行為をするのが悲しかった。俺は涙目で、その部屋から出た。外では師匠が待っていた。師匠とは目を合わせる気にはなかった。


俺は下を見て呟く。

「もう、ヘレンじゃなかったよ」

「ああ、分かっている。私が見つけた時、もうこの状態だった。ナツ、ごめんな」

おそらく、初めての事だと思う。師匠が俺に気を使っているのが分かった。


俺は現実を受け入れた。

「ジョバンニを捕まえにいこうぜ、師匠」

師匠は頭をポンポンと叩いた。俺はジョバンニを捕まえてやると意気込んだ。

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