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第11章 師匠と修行(オランダ編)

俺はレオナに車で誘拐されて、周りには何もない荒野まで来させられた。


レオナは車から引きずり出されて、地面にすっころぶ。

「痛ええ、殺すぞ」

「おい、口の利き方。まだ、お仕置き足りないかな? フフフ、次は手加減できないかもね」

「いや、足ります」

「よし、それでいい」


それから、レオナは事情を説明し始めた。どうやら、俺を強くする為に誘拐したらしい。誰に頼まれたのか聞いたが、昔に世話になった友人らしい。


俺の過去については、一切教えてくれることはなかった。いずれ、その時が来たら教えるつもりらしい。そして、自分の事は師匠と呼べと言ってきやがった。俺はとりあえず、この女には勝てないので、表面上は従う事に決めた。


理由は簡単だ。ここは荒野で、周りには誰もいない状態だ。徒歩で逃げたとしても、車で追いつかれるのが関の山だ。となると、ジョバンニ達が助けにくれるのを待つのがベストだ。


ジョバンニ達は大人のマフィアの付き合いもある。だから、大人数でくれば、レオナをぶち殺してくれるだろう。それまでの我慢だ。


俺は子供のように元気よく返事する。

「はい、師匠よろしくお願いします」

「うん、うん、素直な事はいいことだ」

何がうんうんだ。今に見てやがれ、ジョバンニ一家に逆らったことを後悔させてやる。


しかし、これが地獄の修行の始まりだった。最初の1か月が自給自足生活だった。レオナはナイフを一本だけ渡して、車でその場から立ち去ってしまった。小屋に生活用品があるから、自分で獲物を取れということらしい。


案内された小屋が2畳しかなく、ロウソク、マッチ、塩があるだけだった。水は近くに井戸があった。だけど、食べ物は一つもなかった。だから、町まで歩いて逃げる事も考えたが、あの女が何処かで見張っている気がした。


仕方なく、鳥などを捕まえて、自分で調理をして飢えを凌いだ。時には下痢に襲われて、1日中苦しむ日もあった。


だけど我慢出来たのは、ジョバンニ達が来てくれることを信じていたからだ。ヘレンは元気だろうか? 人一倍怖がりで、気が弱く、ドジなので、俺がいないと心配だ。


新しい職場でイジメられているかもしれない。夜に一緒にトイレ行こうって言われた時は、腹をか抱えて笑ったものだ。公園で一緒にアイスクリームを食べた日もあったな。ああ、あの町は良かった。好きな男がいて、分かり合える友達がいて……。いつか、あそこに戻るんだ。


しかし、1か月経っても、ジョバンニは現れなかった。その代わりに来たのはレオナだった。


俺の前にコスモスポーツの車が止まり、レオナがニコニコした表情で降りてきた。

「おっ、ちゃんと生きているな。ちょっと、ワイルドになったなあ」

「おい、いい加減にしろよ。これに何の意味があるんだよ、殺されてえのか?」

「はい、口にきき方」

そう言って、持ち上げられて、お尻ペンペンの刑をされた。


俺の尻はみるみる赤くなり、激痛で泣き出す。

「ううう、ぐすぐす、師匠すいませんでした」

「分かればよろしい」


そして、それからは格闘技の基礎などを教え込まれた。空手、ボクシング、カポエラなど基礎を教わり、俺はカポエラが合っていると判断されたみたいだ。蹴りを中心に技を磨いていった。どうせ、他にやる事はないので、修行には集中できたのだ。


それから、師匠と組手をする日々を過ごした。自分でも、自分が強くなっていく実感が分かった。それでも、師匠は運動神経に頼りすぎだと注意される事が多かった。


ふと気が付くと、2年の月日が流れていた。俺は10歳になり、修行だけで2年の月日を過ごした事になる。その間にジョバンニが現れる事はなかった。


俺はジョバンニに見捨てられたのか? でも、何処かで事情があって、来られないと考えていた。逆に師匠には母親や姉のような感情が芽生えていた。


そんなある日の事である。師匠から、町に出るように言われた。

「ナツ、たまには町に行ってみるか?」

「わーい、遊びたい」

「バカ、遊びじゃないぞ。仕事で行くんだ。とある賞金首を捕まえたい」


師匠の仕事は賞金稼ぎだ。だけど、仕事をしている所は見た事がない。たまに、車で何処かに行って、賞金首を捕まえているらしい。


師匠は車に寄り掛かりながら、こちらを見下ろす。

「ナツには賞金稼ぎとして、生きてもらうぞ。いつか、本当の敵が分かるはずだ。まあ、それはいい。とりあえず、今回はナツにも戦ってもらうぞ」

「はい、分かりました」

「まあ、心配するな。お前は普通の大人よりも、強くなっているから、今回の賞金首を倒すのは楽勝だね。ただ、今回は覚悟の修行だ」

「何だそれ?」

「まあ、いずれ分かる」

俺は師匠と町にむかった。そう、それはジョバンニと暮らした町だった。


時刻は夕方になっているが、町の印象は変わってない。ただ、懐かしいという気持ちだけだった。ジョバンニやヘレンは元気だろうか? 俺は別に助けに来てくれなかった事を恨んではいなかった。家族だから、それは許し合えると思えるように成長していた。そう、大人になりはじめていた。


そんな事を考えていると、師匠が肩を叩く。

「おい、この2人が今回の賞金首だ」

俺は師匠から渡されたスマホの画面を見た。


アルフレド=テツナー(24歳)

賞金額(800万ギル)

マフィアの幹部。覚醒剤の密輸。写真はラテン系の男だ。


そして、2ページ目を開く。

ジョバンニ=テツナー(19歳)

賞金額(600万ギル)

マフィアの幹部。未成年の売春斡旋。


顔写真は間違いなく、俺の好きなジョバンニだ。嘘だろ? ジョバンニが賞金首? 


しかも、未成年の売春斡旋って……。そんな事をする男ではないはずだ。金持ち相手に金を奪って、仲間に配るような性格だぞ? 何かの間違いに決まっていた。

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