表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/118

第2章 天王洲欣也という男

俺は移民解放連盟を見ていて腹が立っていた。


老人を騙して、金を奪うなんて賞金稼ぎ以下のクズだぜ。俺は蹴飛ばしてやろうと思った。その時、黒いスーツを着た集団がロータリーに現れた。みんな体格が良く、強面のおっさんの集団である。どうみても、堅気じゃないぜ。


その先頭を歩く、頬傷のある中年の男が移民解放連盟に近づく。

「おい、兄ちゃん達……。ここで、反日運動するって言ったよな?」

しかし、リーダー格の青年が反論する。

「でも、我々にはデモする権利がありますし……」

「おい、二度言わせるな。消えろ、ガキども」

「ふん、我々は暴力には屈しないぞ。なあ、みんなぁ?」


すると、取り巻きが声をあげる。

「そうだ、そうだぁー」

近くには交番もあるので、青年は手を出せないとタカをくくっているのだろう。


青年は勝ち誇ったようにニヤリと笑う。

「こちらも命をかけていますので、話だったらいつでも聞きますよ」

「ふっ、命か……。じゃあ、そうさせてもらうわ」

「どうぞ、ご勝手に」


頬傷の男もニヤリと笑いながら喋る。

「川島健太。東大の3年生。実家は杉並区にあり、両親は中華料理屋を営んでいるみたいだな。可愛い妹はそこで手伝いをしているそうだな……。今からそこに乗り込んで話をしてやるよ」

「どうして、俺の情報を……」

「そんな事は別にどうでもいいだろ?」

「クソ、実家に来たら警察を呼ぶぞ。こっちは暴対法だって勉強しているんだぞ。ヤ、ヤクザなんかこわくないぞ」

そう言うが、青年の声は震えていた。おそらく、仲間の前で虚勢を張っているのだろう。


だが、頬傷の男の方が一枚上手だった。

「だったら、お前の実家に毎日ホームレスが飯を食べに行く事になるぜ。新宿にいるホームレスは臭くてな……。もしかしたら、他の客は足を運ぶ事がなくなるかもな。そしたら、両親の店はつぶれるだろうな」

「………!!」


川島は絶句して、青ざめた顔をした。

「あっ……、あなたの顔を立てて、今日は帰りますよ」

「あんまり、ヤクザをなめんなよ。坊ちゃんは家で勉強でもしてろや」

そう言って、頬傷の男は移民解放連盟を威嚇した。分が悪いと判断した青年は取り巻きに声をかける。

「くっ、今日の所は解散だ。みんな、帰るぞ」

すると、彼らはトボトボと駅に向かって消えていった。


ふと見ると、頬傷の男がこちらに近づいてきた。

「冬子、久しぶりだな。おかえり」

「伯父さん、ただいま」

冬子がそう言うと、20人近い子分が頭をさげる。

「お嬢、おかえりなさい」


おお、頬傷の男が冬子の伯父さんか……。長身で体格もよく、強面の顔であり、頬傷のインパクトが凄い。まあ、どうもヤクザだな。


冬子が俺を紹介する。

「こちらは友達のナツだ。賞金稼ぎをやっているんだ」

「あっ、どうも……」

「冬子の友達か……。まあ、冬子の事をよろしく頼むよ」

「あっ、はい……」

うーん、友達の家族に会うって恥ずかしい感じだよな。なんか、コミュ障になってしまう。


冬子が笑顔で喋る。

「ナツ、私の家に来いよ。食事でもごちそうするよ」

「あっ、うん」

俺は用意されていた高級車のセンチュリーに乗り込み、冬子の自宅へ向かったのである。スゲー高級車で、後部座席の座り心地は最高で寝そうだ。


数十分後、センチュリーが冬子の家らしき前で止まる。車を降りると、高級旅館を思わせるような建物が目の前にあった。思わず声が漏れる。門を抜けると、庭があり池までもある。池には鯉が沢山泳いでいる。


確かこの魚って高いんだよな。

「すげーな、冬子ってお嬢様だったんだな。まるで、漫画みたいだな」

「えへへ、そんな事ないよ」

そう言うが、やっぱり豪邸にしか見えない。クソ、ブルジョワめ。



私はナツを居間に案内して食事をさせた。その間に祖父へ顔を出しにいった。ナツは飯を与えてれば、静かな猫みたいなものだ。祖父の部屋には医療ベッドを置いてあり、そこに横たわっていた。

「冬子、おかえり」

「じいちゃん……。元気そうで良かったよ」


それは嘘であった。1年前に会った時よりも痩せており、いかにも病人って感じだ。あんだけ、歌舞伎町で恐れられていた男のオーラはもうなかった。それが悲しかった。とりあえず、私は様々な国を渡って、姉を探した事を伝えた。だが、手がかりはない状態を伝えた。


それを聞いた祖父は姉に会えない事を悟ったのであろう。

「そうか……」

一言そう言って、悲しそうな顔をした。


それから、明るく声を出した。

「まあ、ゆっくりしていきなさい……。これから医者が来るんだ。また、明日な……、冬子」

「うん。お大事にね、じいちゃん」

ふっー、身内が弱っていくのを見るのはツラいものがある、思わず、目に涙が溜まってしまう。だが、涙をこぼす事なく、部屋を後にしたのであった。


すると、廊下には伯父さんが立っていた。

「冬子、痩せていてビックリしただろ?」

「うん、あとどのくらいなの?」

「まあ、半年って所だろうな……」

半年? 半年なんてすぐに時間が過ぎてしまう。しかも、もっと早く亡くなる可能性だってあるのだ。私はじいちゃんが生きている間に父の仇を討ってやりたい。その胸の内を伯父さんに伝えた。


伯父さんも気持ちは一緒だった。

「ああ、俺も気持ちは同じだぜ。実は関東移民学生連合会の最高幹部が、東京に潜伏している情報が入ったんだ」

「本当なの?」

「ああ、公安の刑事に聞いたから間違いないだろう。まあ、新しい情報が入ったら教えるよ。それまでは、マンションを用意したから、友達と一緒に暮らせばいいさ。あとで若い衆に車で送らせるよ」

「ありがとう、伯父さん」


伯父さんは照れたように頭を掻く。

「冬子、家族だから、何か困ったら頼れよ。しかし、冬子は母親に似て美人になったな。伯父さんは鼻が高いよ」

「フフフ、伯父さんも口が上手いな。そうやって、水商売の女を口説いているんでしょ?」

「いや、本当さ……。俺もお前の母親に惚れていたからな……。じゃあ、またな」

そう言うと、伯父さんは背を向けて立ち去った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ