第30章 ナツ VS ルビー(メキシコ編) その2
俺は紙一重で、上から振り落とされた槍を避けた。すると、ルビーの振り下ろした槍の刃の部分が、フロアの床にめり込む。ズガンという衝撃音と共に床が少し揺れた。
そして、ルビーの動きが止まった。良く見ると、槍の刃の部分が床にめり込んで抜けないようだった。それで、モタモタとしているようだった。
これはチャンスだ。こっちもケリをつけるぜ。俺は素早く、ジャンプして刃の上に両足で着地した。それから、ブーツの青いボタンを押すと、エンジン音と共にタイヤが回転する。
そして、ルビーに向かって、槍の柄の部分を一直線で走る。まるで、階段の手すりを走るスケボーのような感じだ。俺は柄の部分を滑りながら、ルビーに向かって一気に近づいた。
ルビーは焦って口を大きく開けて叫ぶ。
「うっおおおおー」
俺はルビーの顔に衝突する直前で足を開脚して、片足を曲げてルビーの首にひっかけた。それから、素早く後ろに回って肩車をしている状態になった。そして、両足でルビーの首を絞めた。
俺は両足に力を入れ続ける。その攻撃におもわず、ルビーが声を漏らす。
「あがぁあああー。ゴホッ、ゴホッ、離せぇえ……」
すると、槍を床に落とし、カランカランという音がフロアに響き渡った。ルビーは両手で俺の足を外そうとするが、意識が飛びそうなので力が全然入っていない。
しばらくすると、ゾンビのように足がフラフラとしていた。それもそのはずだ。俺の50キロ程の体重を、首だけで支えている状態なのだから……。更に首を絞められているので、意識が飛ぶのも時間の問題である。そろそろ、引導を渡してやるぜ。
俺は最近ネットで見たプロレス技を決めた。
「もう、終わりだな。行くぜ、ナツ流フランケンシュタイナーだ」
フランケンシュタイナーとはプロレス技の1つである。自らの両足で相手頭部を挟み込んで、バク宙のような動きで回転しつつ、巻き込んだ相手の脳天をマットに叩きつける技である。俺はその技を放ったのであった。
すると、ルビーの体が180度回転して、逆さ状態になり頭部から落ちる。下はマットではなく、冷たく固い床である。その結果、頭の床の衝突音がフロアに鳴り響いた。それと同時に、俺は両足をルビーの首から外した、
すると、ルビーは激痛で頭を押さえてバタバタと足を動かしていた。
「あっああああああ、頭がぁああああー」
俺はその声にビックリする。
「おいおい、気絶してねえのかよ。まったく、タフな女だな……」
ルビーの横にはボストンバッグが置いてあった。
俺は中身を確認すると、札束や宝石がズラリとある。おお、最高だ……最高すぎるぜ。全部で2億ギルくらいか? これがあれば毎日遊んで暮らせるぜ。もう、賞金稼ぎなんて辞めよう。冬子には1000万ギルしかなかったと伝えよう。
そして、残りの1億9000万ギルは隠して、後で回収して独り占めをすればいい。明日からカジノに毎日行って、ハンバーガーを買い占めて、他にも楽しい事は何でもやろう。よし、とりあえずバッグをもって地上に出るとするか……。
俺はボストンバッグを掴む。しかし、ルビーも床にはいずりながら、ボストンバッグの取手を掴んできた。
それは世にも恐ろしい形相だった
「私が貯めた、金だ……。誰にも渡さないぃいー」
そう言いつつ、ルビーがスマホを取り出して、操作するとピッピという電子音がした。すると、金庫が爆発をして火柱を立てた。
俺は思わずビックリした。
「おおお、爆弾かよぉー」
すぐに金庫の周辺が火に包まれた。コイツ、頭を打っておかしくなったのか? それよりも、バッグを回収しないと、宝石や金が全部灰になっちまう。
俺はボストンバッグをグイグイと引っ張る。しかし、まだルビーは手を緩めない。まるで、綱引き大会だ。
俺は大声で叫ぶ。
「このバカヤロー。お前も死ぬぞ。早く、逃げろよぉ」
「私の金だ……金だ……。誰にも渡さないぞぉー」
ヤバイ、ヤバイ。頭がイカレていやがるぜ。すでにフロア内が一瞬で火の海になり、煙がモクモクと辺りを包み始める。早くしないと死ぬ。俺はルビーの頭をガシガシと蹴る。
しかし、ルビーはバッグから手を放そうとしない。こっちも負けずにドカドカと頭を蹴り続けた。すると、ルビーはいきなり立ち上がり、亀のようにバッグの上に覆いかぶさった。俺は背中を上から蹴りまくるが、亀のように微動をすることはなかった。
ううう、ダメだ……。もはや、火の回りが早すぎる。このままだと丸焼きになって死ぬだけだ。金よりも命が優先だ。財宝を目の前にして、撤退とは悔しすぎて涙がこぼれそうだ。
俺はバッグに入った宝石や金をあきらめた。まったく、金に縁のない人生だぜ。神様、普段の行いが良いのになんでだよ。
俺は入口の梯子に向かって、叫びながら全力で走り出した。
「ちくしょうがぁー」
途中に火の中を潜っていき、顔に煤がついて、更に髪も乱れまくっている。だが、今はそんな事を気にしている場合でない。生きるのが優先だ。
とにかく走って、走って、心臓がパンクしそうになるくらい走ったのであった。
俺は息を切らして、なんとか梯子までたどり着いた。
「ハアハア……。何とか助かったみたいだな。危なかったぜ」
本当にギリギリセーフって所だな。
俺はルビーの方を見ると、奴は宝石や札束を抱きながら叫んでいた。
「私の金だ……、誰にも渡さないぞ……。アハハハハハ、私が手に入れた金だ……。
これが……あれば人生をやり直せるんだ。私は幸せになるんだ、今度こそ……」
炎の海の中で、勝ち誇ったように笑っていた。頭を強く打って、狂ってしまったのかもしれない。バカな奴、死んだら金も使えないのに。ああなると、人間は憐れだねえ。
俺はルビーの最後を見ることなく、素早く梯子を上った。結局は金にならない仕事だったぜ。ところで、冬子はどうしているかな?




