第29章 ナツ VS ルビー(メキシコ編) その1
ルビーは槍の先端を俺に向けて構えた。先端の刃は手足を簡単に切り落とせそうだった。しかし、俺もこんな長い槍を持った奴と戦うのは始めてだ。
正直、リーチが長いからやりづらいのが本音だ。まったく、どうなることやら……。そんな事を考えている内に、ルビーが顔面を狙って槍を突いてきたので、俺はボクサーのように左右に素早く避ける。
くそっ、結構早いな……。30人を殺したのも、まんざらハッタリではなさそうだ。だが、俺もかなりの殺し合いを経験している。ルビーは槍を突きながら前に出て来る。なので、俺は後ろにピョンピョンとステップしながら避ける。
すると、攻撃が当たらないルビーは舌打ちをする。
「チッ……」
そして、突きが当たらないので、槍を上から振り下ろして来た。槍の刃が俺の体を真っ二つにしようとする。俺は素早く、左足高く上げてブーツの底で受け止める。すると、ブーツの鉄板と槍の刃が当たって、金属音がフロアに鳴り響く。
俺は余裕をかます。
「ハッ、たいした事ねえぞ」
「フッ、パンツが丸見えだぞ」
「サービスだぜ」
「このガキ、余裕かましやがって……」
そう言ってルビーは足首を狙って、横から槍を振りぬいてきた。
なので、俺は素早くジャンプして、横からの槍を避けた。おそらく、足首を斬り落として、動きを止める気だ。だが、狙いは別にあったみたいだ。
ルビーが勝ち誇ったように叫ぶ。
「バカめ。空中なら、避けられないだろ?」
そして、空中にいる俺に向かって槍を突いてきた。
なるほど、空中では動きが変えられないから、そのスキを狙おうって作戦かよ。人身売買のボスだけあって、頭は悪くないみたいだな。イタリアで戦った冬子と同じ着眼点だな、あの時にやり合った時は避けられなかったなあ……。
だが、俺もあれから学習したのである。避けられなければ、受け止めればいいだけの話だ。俺は右足のブーツ底で、槍の刃の先端部分を受け止めた。一瞬槍の上で立つ状態になる。
俺はそのままバランスを保ち、バク転をして地面に着地した。
「年増女、強いじゃん」
これは本音の気持ちで、結構な使い手だと思ったのである。
「お前も、タダのガキじゃないね。やっぱり、殺すのはもったいないな……」
「ふっ、殺されないから安心しろ。最後に勝つのは俺だからな。じゃあ、次はこっちから行くぜ」
俺は側転をしながら、ルビーに近づいた。すると、ルビールビーは俺を止めようとして、槍を上から振り下ろして来た。槍が接近戦だと不利だから、近づかれないように必死に攻撃してきたのだ。
俺はブレイクダンスのように、両手と頭を床について蹴りを繰り出た。そして、ブーツの底で槍の攻撃を弾く。再び、ブーツの鉄板と槍の金属音がフロアに鳴り響く。
俺は両手のみを床につけたまま、足をプロペラのように回転させた。ブレイクダンスの2000という技だ。しかし、槍が何度も振り下ろされる。だが、俺はブーツの底で全てはじき返す。
槍の刃とブーツの底が攻防を繰り広げて、フロア内に金属音が響く。しかし、ルビーは攻撃の手を止める事なく、何度も槍を振り下ろす。
ふう、これはキリがないぜ。それに逆立ちの状態がしんどくなってきやがった。頭に血が上りそうだぜ。俺は両手を伸ばしてバク宙を繰り出して、ルビーの槍の攻撃範囲から脱出した。
ルビーの顔を見ると、額には汗をかいており、肩で息をしているようだった。技術はあるが、体力はないタイプだな。まあ、煙草なんか吸うからだぜ。
それだけじゃなくて、あの長槍は重いから、長期戦では体力を奪って不利な武器だ。おそらく、今までの相手は1分以内に殺して来たのであろう。
しかし、もう3分以上は戦っているはずだ。俺のような強敵に会った事が不運だったようだな……キャハハハ。
今がチャンスだ、攻撃のスピードが遅くなっている。これなら、俺の得意な接近戦まで、持ち込めるのも簡単なはずだ。
俺は人差し指でルビーを指す。
「そろそろ本気で行くぜ。年増女」
「ハアハア、さっさと来い……。赤毛女」
俺はブーツの赤ボタンを押してローラーを出した。ルビーに向かって、スケート選手のように滑っていく。槍の間合いの寸前で、ルビーに向かってジャンプした。
そして、ドロップキックを顔面に打ち込んだ。
「おりゃぁああああー」
しかし、ルビーは両手で槍の柄の部分を前に出してガードする。ブーツの底と槍の柄がぶつかる。金属音がフロア内に響き、ルビーの両手はプルプルと震えていた。
俺は思わず、声を漏らした。
「くっ、マジかよ。ガードしやがったぜ」
「くぅう……。このガキ、なんてキック力だ!」
まさかガードするとはな。とりあえず、バク宙をしながら地面に着地した。着地と同時に、ルビーは槍を回転させて、足を狙って突いてきた。俺が蹴りしかしないと、判断されたのかもしれない。まあ、足を切り落とされたら負けだぜ。
ルビーは叫びながら何度も突いてきた。
「死ね、死ね、死ねぇえええー」
先程に比べて、攻撃にキレがないし、槍のスピードが遅く感じる。
俺はタップダンスのようなステップで避けた。
「ほい、ほい、ほいとな」
そして、後ろにスーと滑って、槍の攻撃範囲から再び脱出した。ルビーも突きは当たらないと判断したのだ。だから、槍のギリギリの端を握って、射程距離を最大限に伸ばした攻撃をしてきた。
その攻撃は槍を真上まで高く上げて、俺を目がけて一気に振り下ろした。ルビーの渾身の一撃なのだろう。向こうもケリをつけるつもりだ。そろそろ、こっちも本気で行くぜ。




