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第28章 2100年の移民問題(メキシコ編)

その頃、俺は走っていた。あの年増女の野郎、何処に逃げやがったんだ? 俺は廊下で止まって周りを見回した。


ふと、窓の外を見るとルビーがいた。中庭の中心にあるマリア像を弄っているようだった。なので、俺も中庭のルビーの後を追った。中庭には広くて、沢山の緑に囲まれており、ちょっとした小さな公園みたいだ。しかし、既にルビーの姿がなかった。


あれ、中庭にいるはず……。消えたのか? いやいや、中庭の何処かに隠れているはずだ。そういえば、さっきマリア像を弄っていたな。あれが怪しいから調べてみるか。


俺は中庭の噴水の中央にあるマリア像に近づいた。噴水の水は入っておらず、現在では使われていない状態であった。良く見ると、マリア像の右手に繋ぎ目がある。俺はその右手をレバーのように動かした。


すると、マリア像の本体が音を立てながら横にずれた。そこには地下室の入り口があった。


その光景を見て思わず声が出る。

「おお、スゲー。RPGのゲームみたいだ……」

中は暗くて深さは分からないが、垂直に梯子が設置されていた。とりあえず、下に降りてみるか。


俺はゆっくりと梯子を下りた。その先には、5畳位のスペースがあって両開きの扉があった。その扉を開けてみると、体育館のようなフロアが広がっていた。とにかく、広くて驚いた。


天井には沢山のライトがあり、地上と変わらない光を放っていた。周りを見回すと、フロアの奥には大量の段ボールが積まれていた。ルビーもそこにおり、金庫から宝石や札束をボストンバッグに詰め込んでいた。


俺は大声で叫んだ。

「おーい、鬼ごっこはオシマイだぜ。なあ、年増女」

すると、ルビーはこっちを振り向いた。

「お前か、赤毛女」

「おう、そうだよ。それよりも、ココは何の部屋はなんだ?」


ルビーはボストンバッグを床に置いて語り始めた。

「この場所は第3次世界大戦の時のシェルターだ。教会の中庭で偶然見つけたのさ……。

あそこに段ボールがあるだろ、あれは食料とミネラルウォーターの山だ」

「なるほど、10年前の代物ってわけか……」

「ああ、財産を隠すには都合の良い場所だったのさ。もちろん、部下もこの場所は知らないさ」

「お前さぁ、なんで人身売買の仕事なんかしているんだ?」

ルビーは修道服のポケットから煙草を出す。


そして、器用にジッポライターで火をつけて、煙草を吸いながら喋る。

「私も戦争で故郷を失った平凡なアメリカの高校生だった……。アメリカは不景気で仕事がないから、両親と移民制度を使ってメキシコに渡ったのさ」

「おいおい、メキシコに仕事なんかないぞ」

「ああ、当時はガキだったから、ネットの情報を信じて、メキシコには希望に溢れていると思っていたよ……」

そう言って、ルビーは天井を見ながら紫煙を吐く。


戦後の10年前はSNSで沢山のガセ情報が拡散されていた。その1つの噂に、メキシコには仕事が沢山あるとのガセネタがあった。


余裕がない戦後の不景気で、アメリカ市民は判断力が落ちており、信じる人間も多かった。いわゆる、藁にも縋るってやつだ。


俺の記憶が正しければ、使い捨ての労働者を集める為に、メキシコマフィアが流した噂だったのが真相だったはず。それを信じて、移民としてメキシコへ渡った奴が多かった。だから、結局は仕事なんてなかった。


あっても、危険物の撤去など人がバンバン死ぬような仕事や、過労死するまで働かされる仕事ばかりであった。なので、結局は非合法の仕事に手を染めるしかないのだ。そんな話をニュースでやっていたような記憶がある。


俺はガセ情報の件を話す。

「あれは、メキシコマフィアが移民の奴隷を欲しくて、SNSに流したデマじゃなかったけ? まあ、マスコミは嘘つきだしな」

「フフフ、おっしゃる通りだ。あれはデマで、移民には非合法な仕事しかなかったよ。冷静に考えれば、メキシコ国民も仕事がないのに、外様の移民に仕事を与えるわけがないよな……」


そう言えば、日本でも移民が過労死する問題多く、国連からクレームがあがっていたな。世界全体が恐慌状態な時代なのだ。


ルビーは溜息をつきながら話を続ける。

「ふぅー、私は親の借金で金がない状態だった。両親は危険物の撤去の仕事をしたが、すぐに事故に巻き揉まれて死んだよ。私は酒場で情婦として働く事になった。過労死するよりはマシだろ?」

「まあな……」

「ある日、酒場で1人のマフィアと知り合う事になる。マフィアに金の事を相談したら、すぐに非合法な仕事を紹介してくれたよ。私は生きるためには、犯罪に手を染めてもいいと思うようになった」


俺はルビーに聞く。

「それで、結局はマフィアの愛人になったって事だな」

「ああ、銃、ナイフの使い方から、マネーロンダリングなどの金銭面も事を学んだよ。まあ、いい勉強になったよ」


まあ、コイツもある意味は戦争の被害者だな。だけど、犯罪に手を染めている以上はクズの言い訳にしか聞こえなかった。


ルビーは紫煙を吐きながら語る。

「私はすぐに薬物の売買を任されるようになったよ。まあ、ドラッグや覚せい剤とかだ。商売の才能があったのか、グングンと出世していったよ。しばらくして、もっと儲かる人身売買のビジネスを任せられるようになった」

「まあ、才能ってやつだな。ところで、あのシスター達は?」

「あいつらは町でブラブラしている移民の女だよ。戦後で仕事がない奴があふれている。

女は特に仕事がない。不景気だから、金を出せば何でもやる奴は腐る程いるのさ……。まあ、体を売るよりも、人を殺す方がマシって考えるタイプの奴らさ」


俺も体を売るのは勘弁したいぜ。でも、部下のシスターたちは弱かったな。

「まあ、腐る程いるだけあってザコばっかりだよな。キャハハハ……。お前も人は見る目はないのかもな」

「そうかもな、フフフ……」

そう言うと、ルビーは煙草を床に捨てて足で火を消した。


そして、俺の方を見てニヤリと笑う。どうやら、何かを言いたいような顔つきになる。

「さて、おしゃべりは終わりだ。本題に入ろうか……」

「本題?」

「ああ、お前も賞金稼ぎなんかやっているなら分かるだろう。この世の中は金だ。親がいない戦争孤児なんて、金がなければ死んでいくだけのゴミクズだ」

「ああ、俺も親がいないから分かるぜ。金がなければ何もできない」

「そうだ、お前の言う通りだ。これを見ろ」

すると、ルビーはボストンバッグに入っている大金と宝石を見せてきた。


そして、提案をしてきた。

「ナツって言ったな。私の仲間にならないか? 私はお前の強さと度胸は認めている。

今度、海外に新しい組織を作ろうと思っている」

「新しい組織?」


そこで、ルビーは一枚のディスクを見せつけた。

「ああ、ここに顧客データはある。金持ち連中に臓器を売る予定だ。お前も賞金稼ぎなんて、根無し草な生活を抜け出したいだろう?」

「ほう」

「残念だが、今回の組織は部下に恵まれなかった。もう、警察も動くのも時間の問題だろう。やっぱり、頭の良い奴を仲間にしないとダメだな。お前は頭も切れるし、何よりも強い。どうだ、仲間にならないか? 良かったら、あの拳銃使いの日本人も仲間にしたい」


こんな仲間や組織を簡単に捨てる奴を信頼するわけない。そこまで、俺はバカじゃないのだ。


なので、俺は鼻で笑う。

「いや、遠慮しておくわ。そっちこそ、ボストンバッグを渡してくれたら見逃してやるぜ。俺の目的は金だけさ。お前なんかに興味ない」

「なあ、良い話だと思うぞ。よく考えろ、チャンスだぞ。顧客データがあるんだぞ?」

「うるせーな、同じこと2度も言わせるなよ。ボケてるのか? 年増女」

「そうか、残念だな。交渉決裂だな……」

そう言って、ルビーは金庫の方に歩く。


金庫の横にはゴルフバッグが置いてあった。そこから、3本の棒のようなものを取り出した。その棒を繋げると3本の棒が1本になった。そして、最後にゴルフバッグから、刃のようなものを取り出した。


それを棒の先端をつけると、3メートル超えの長槍が完成した。ルビーは長槍を中国の雑技団みたいにクルクル回してポーズを決めた。おっー、スゲーな。昔のカンフー映画みたいだ。


ルビーは俺を睨んで言った。

「私は今日までに29人殺している。この槍から逃げられた奴はいない。お前も串刺しにしてやるよ。お前が30人目だ」

「今日までの話だろ? 俺に倒されるから、殺しの記録はストップだぜ。残念だな」

そろそろ、お喋りタイムはおしまいだ。まあ、これから始まるのは殺し合いだ。


なので、お互いが戦闘モードに入る。奴もその気らしい。

「ふっ、大した自信だな。赤毛女、そろそろ行くぞ」

「おう、遊んでやるぜ。年増女、来な……」

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