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第26章 対決、黒いシスター(メキシコ編)その3

ナツが大声をだす。

「こっちだぜ、冬子」

ナツは宿舎の廊下を走って、教会の方へ向かう。


たしか、宿舎と教会は一本道で繋がっている。それに教会の外は森だ。森の中に隠してある車に一番近いルートがこれだ。


私達は宿舎の廊下を駆け抜けて、次にL字型の通路を曲がると、100メートル位の1本道がある。そこが教会の裏口に繋がっている。裏口から身廊を通って表口に出ればいい。表口から外を出たら、車が隠してある森に出る。


そしたら、愛車のハコスカで逃げて、町まで走らせて証拠データを警察に渡す。だが、ルビー達に追いつかれるパターンもある。その時はマリンに安全な場所に隠れてもってから戦うしかない。


私はナツの後ろを追いかけるが、みるみる距離が離されていく。ナツは足が速すぎるだろ。まあ、私は横にマリンを抱えているから仕方ないか……。


私はマリンに話をかける。

「マリン、大丈夫か?」

「うん、冬子さんがいるから大丈夫」

「絶対に助けるよ」

「はい」


前方のナツが大声を出す。

「おいおい、ラブコメしている場合じゃないぜ。年増女たちが復活しやがったぞ」

後ろの方ではルビー達の足音が迫っていた。


そして、暴言を吐いていた。

「クソ、煙幕だ。ふざけやがって、ゴホゴホ……。てめえらも早く行けぇえーー」

すると、部下2人が拳銃を持って走ってくる。その後ろにルビーもいて、距離は70メートル位だ。私達も全力で走っているので、距離は縮まずに何とか逃げきれそうだ。


教会の中に逃げたら、マリンを教会の外へ逃がそう。おそらく、車で町まで逃げる暇はなさそうだ。だから、ルビー達を教会の中で迎え撃つ。


相手は3人だ。私達なら楽勝に勝てるはずだ。そんな事を考えている内に、なんとか裏口についた。私達は教会の裏口を開けると、すぐ目の前には祭壇があった。


祭壇から表口までの距離は30メートル位だ。何とか逃げられそうだなと思っていたのだが、その考えは甘かったみたいだった。


なぜなら、教会の表口の扉が開いたからである。そして、黒い修道服を着たシスター達が入って来た。その人数は全部で10人だ。もちろん全員が拳銃で武装している。このままだと挟み撃ちだ。


ナツが笑いながら話しかけてきた。

「そう簡単には逃がさないってことだな。ハハハ」

「いや、笑っている場合じゃないだろ。このままだと、挟み撃ちってやつだ……」

表口には10人、裏口には3人か……。合計で13人を倒さないといけないって事だ。


すると、マリンが謝る。

「ごめんなさい。私のせいで……」

「大丈夫だ、心配ない」

そう言いつつも、裏口からはルビーと2人の部下が入って来た。これで、前後で挟み撃ち状態になってしまった。これは敵の方が圧倒的に有利な状況である。


ルビーは勝ち誇った顔をして話しかける。

「このバカども、簡単に逃がす訳がないだろう……。ゴホゴホ……」

しかし、煙幕のダメージがあるのか目が真っ赤だ。


ナツは余裕の顔で返事する。

「ふっ、煙幕でゴホゴホやっていたくせに、何を恰好つけているんだよ? それとも、年を取り過ぎて咳き込んいるのか? なあ、年増女……」


すると、ルビーは教会全体に響き渡るくらい大声を出す。

「黙れぇえー。殺すぞ、ガキが……」

「こ、こわっ……」

「まあいい、追いかけっこはおしまいだ」

しかし、この人数に囲まれても余裕な表情のナツ。度胸があるのか、単なるバカなのか分からない。


ルビーの口元には笑みがこぼれていた。

「3人とも、仲良く海外に売り飛ばしてやるよ。マリン、お前は友達と一緒と同じように、臓器をバラバラにして売ってやるよ」


マリンは怒りを露わにする。

「ふざけた事を言わないで!」


マリンに構わず、ルビーは会話を続ける。

「日本人は綺麗な顔しているから、相当高く売れるな。変態の買手は腐る程いるだろうな。

赤毛女は可愛い顔しているが、品がないので高くは売れそうもないかな……。まあ、売春宿で買ってくれるだろう」


ナツが笑いながら言い返す。

「お前は年増女だから、需要がなさそうだな。キャハハハ、可愛そうな人生だなあ」

ルビーが顔を真っ赤にして怒る。

「私は、まだ28歳だ。年増ではない」

「なら、怒るなよ。余裕がないように見えるぞ。年増女。年増、年増、年増……」


ナツは人を怒らしたり、煽ったりするのが天才だ。それで相手のペースを崩して、スキを狙うのがナツの戦法だ。


ルビーは怒り声で部下に命令する。

「もういい、赤毛女は殺していいぞ。ガキと日本人は捕まえろ。絶対に殺すなよ」

ルビーの隣にいるシスターの1人が頷く。それから、拳銃を向けて歩いてきた。


私達との距離が3メートル位になった時、突然ナツが走り出した。

それから、拳銃を持ったシスターに目がけて飛び蹴りを放った。滅茶苦茶に早いスピードで風のようだった。


ナツが大声で叫ぶ。

「おりゃぁああー」

シスターは反撃もする暇もなく、ナツの右足の底が顔面にめり込む。

「がっはあっ……」

シスターが大量の鼻血を出しながら、壁に向かって飛んでいく。そして、ルビーのいる裏口まで吹っ飛び、壁に頭をぶつけて動かなくなった。


多分、気絶していると思われる。いや、死んでいるかもしれない。なぜなら、鼻が折れて痙攣して、泡を吹いていたからである。


予想外の反撃にルビー達が一瞬固まる。おそらく、ルビー達は恐怖を感じたのだ。今がチャンスだ、やるしかないな。


私は拳銃を取り出して、表口の方にいるシスター達へ向けて引き金を絞った。3発の銃声が教会に響き、3人の拳銃を持っていたシスターが床に倒れた。


すると、表口にいる残りの7人が拳銃を構えて一斉に撃って来た。その瞬間にマリンを抱えて、身廊の横の机に身を隠した。7人のシスター達は拳銃をひたすらぶっ放している。


数十発の銃声が教会に鳴り響く。7人は罵声を言いながら、闇雲に何発も撃ってきた。

「やりやがったなぁー」

「撃てー撃てー」

「死ね、死ねぇええー」


教会には拳銃の雨が降っており、弾は裏口の方まで飛んでいた。当然、裏口にはルビーと部下の1人がいた。普通なら同士討ちになるから、闇雲に撃ったりはしないのだが、7人はパニックになっていて構わずに打ち続ける。


その結果、ルビーは伏せながら叫ぶ。

「バカどもが、私に当たろうだろうがぁあーー。撃つのをやめろーー」

その時、ルビーの横にいた部下の1人が流れ弾に当たった。その部下は大量の血を頭から噴き出して絶命した。


そして、裏口の敵はルビー1人だけになった。こっちはなんとななりそうだな。

まだ表口は7人残っているが、戦闘に関しては素人だと思った。私の拳銃の速さにビビって闇雲に撃っているだけだ。しかも、パニック状態で錯乱して仲間まで撃ち殺している。


追い込まれたルビーは叫ぶ。

「クソッ、役立たずどもがぁー」

そして、そのまま屈みながら、裏口から逃げようとしていた。


いつのまにか、横にいたナツが話しをかけてきた。

「冬子、ボスキャラは任せろよ。冬子はザコとガキを頼む」

「ああ、分かった。気をつけろよ、ナツ」

「俺は無敵だぜ」

そう言って、ナツは裏口から消えたルビーの後を追った。


さて、こっちもやるか……。ガンスリンガー使いの天王洲冬子の恐ろしさを教えてやる。


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