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第24章 対決、黒いシスター(メキシコ編)その1

昨日の夜に会った女の子がそこいた。少しやつれた感じの印象を受けたが、生意気そうな目つきは変わらない。


俺はマリンに言った。

「そいつは冬子だ。俺の仲間だ」

「知っているわ。さっき、天井裏で説明を受けたわ」

「ディスク見たぜ」


マリンは頬を膨らます。

「ナツ、遅いじゃない。すぐに見てって言ったのに……バカ」

「マリン、大変だったね」

そう言って、冬子がマリンの頭をポンポンすると安心した顔をしていた。


どうやら、冬子に照れているようだった。

「ありがとう、冬子さん」

冬子さんって何だよ。俺にはタメ口なのに……。ああ、マリンの目がハートマークになっている。冬子は背が高くて、カッコいいので女にも人気だ。


そして、マリンが冬子に抱きついた。なんだろう? 胸がモヤモヤする。俺にはよく分からない感情だった。まさか、嫉妬か? そんなバカな……。まあ、今はそんなことはどうでもいい。


冬子は子供をあやすようにマリンに聞いた。

「教会で分かっている事があったら、教えてもらってもいいかい?」

「はい、分かりました」


マリンは素直な返事をした。子供も人によって態度を変えるんだな。そう思うと、俺って舐められやすいかもしれない……トホホ。


マリンは一連の経緯を話してくれた。

「私が教会に来たのは1年前ほどで、私は町でフラフラしている戦争孤児だったの……。まあ良くある話だけど、窃盗や残飯を漁ったりして地獄のような生活ね」


戦後の不景気が生んだストリートチルドレンだ。いわゆる、毎日の食料を確保するのが精一杯の子供達だ。そういう生活を続けると、窃盗の罪悪感などすぐに消えてしまうのだ。


マリンは会話を続ける。

「そんなある日、私はルビーに声を掛けられて、修道院で生活するように誘われたの。

私は親もテロで死んでしまって、毎日の食料を確保するので精一杯だったわ……」


冬子は言葉を挟む。

「それでどうしたの?」

「私に選択肢はなかった。食料確保の為に、修道院で生活する事に決めたの。それからは寝床があって、3食の食事も保証されて安心できる生活を送ったわ。それと、教会には同じ状況の子供達もいたから信用したの……」


まあ、何も知らない子供達はルビーが天使に見えただろうな。食料に困る事はない。食えない事ほど辛いことはないからな。俺は小指で耳を掃除しながら、マリンの話を聞いた。話が長くなりそうだ。


そこで、マリンの声が震える。

「ある日、ルビーが人身売買の話をしていたのを立ち聞きしてしまったの。それからは毎日の生活は恐怖に変わったわ。怖くて、震えて寝られない日もあったわ。でも、私は負けたくないと思った」

それから、俺達はマリンの会話を最後まで聞いた。


内容はこうだった。マリンは警察に動いてもらえる証拠を探し始めた。ある日、ルビーが黄金のマリア像に何か隠している姿を見た。マリア像の底を調べると、人身売買の証拠があり、ディスクと書類が隠してあったらしい。


書類の中身は、人身売買の契約書などの証拠になるものであった。なんとか、それを盗み出すチャンスを伺っていた。それからは、ルビーの行動を常に監視をする日々を送った。すると、3日前にルビーが外出するチャンスに恵まれた。


マリンはルビーが戻る前に、マリア像からデータのディスクを抜き出すことに成功した。だが、ここで予定外の出来事が起きたのである。ルビーは予定より早く、外出先から戻ってきてしまう。マリンはすぐに町に逃げようとしたが、同時に教会から戻ったルビーもディスクがないのに気が付く。


すると、ルビーは教会の人間を集めた。その結果、マリンだけの姿がなかったのである。ルビーは部下達にマリンを探させた。それを見たマリンは外に逃げるのは厳しいと判断した。


たまたま物置部屋に逃げた時に、偶然に天井裏に隠れる場所を見つけて、そこに身を隠すことにした。おそらく、ルビーも焦っていたのであろう。


ディスクを警察に渡される前に、マリンを捕まえないと破滅してしまう。自分でも探すが、見つからないのでマリンを賞金首にした。賞金稼ぎなら警察と違って、依頼以外の事はしないからである。


そして、俺達がその依頼を受けたってわけだ。これが真相って事だろう。まあ、真相は暴かれてしまったのだけどな……。


そして、マリンは青ざめた顔で話し始めた。

「私の……私の友達が売られてしまったの……。臓器売買のブローカーに……」


冬子は聞き返す。

「何だって?」

「表向きは、身寄りのない夫婦に引き取られた事になっているの。でも……それは嘘だわ。本当は心臓移植のために臓器ブローカーに売られたの。だから、海外に売れちゃう前に早く助けないと殺されちゃう」

そう言うと、恐怖のせいかマリンが震えていた。


すると、冬子がギュッとマリンを抱きしめながら言った。

「マリン、友達を助けようとしたんだね。だから、ナツに助けを求めたという事か……」

「うん、賞金稼ぎだから信頼出来ると思ったの。それに、ナツは嘘をつけるほど頭が良さそうな感じでもなかったし……。食い意地も張っていたし……」

「ああ、確かにナツはバカだし……更にクズでダラしない奴なんだ」

「でも、悪い人に見えなかったわ。ディスクが外部に届けば、あとは警察が処理をしてくれるだけでしょ……。ナツでも、警察に行く位は出来そうだし……」

さりげなく、俺の悪口大会になっているな……。ああ、2人とも殴ってやりたいぜ。


冬子は質問する。

「町の人に助けを求める方法とかなかったの?」

「ええ、無理ね。町の人はルビーを心から信用しているわ。孤児の話なんて信用してくれないわ。ルビーを表向きは戦争孤児を育てている心優しいシスターとしか思ってないわ。だから、外部の人間しか頼れなかったの。だから、賞金稼ぎのナツが現れた時はチャンスだと思ったわ」


俺はマリンに聞いた。

「その友達は何時頃に連れていかれたんだ?」

「昨日よ。だから、今なら間に合うと思うの。お願いだから友達を助けて……」

「おう、分かった。とりあえず、このデータを警察に届けるとしようぜ」

「うん。お願い。ありがとう、ナツ」


その時、後ろから声が聞こえて来た。

「その必要はないわ。だって、あなた達はココで死ぬから……」

俺は後ろを振り向くと、そこにはルビーが立っていた。


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