第23章 賞金首マリンを探せ(メキシコ編)その3
私は提案した。
「子供を食い物にするのは許せないな。ナツ、助けてやろうよ」
「ああ、そうだな。缶詰を貰った恩を返さないとな」
ナツはあっさり返事をした。借りは返さないといけない性格なのだろう。それに自分がストリートチルドレン出身なので、マリンに感情移入をしているかもしれない。私は正直言えば金にならない仕事であるが、目の前の子供を助けたい位の義侠心はある。
すると、反対にナツは本音を話す。
「だけど、ルビーの貯めた財産の少しは貰うぜ。人身売買で稼いだ金が教会にあるはずだろ。おそらく、銀行には預けられない金だしな。まあ、俺もタダ働きはしたくねえし……」
これはナツに同意の意見だ。私達だって、金がないと食べていけないのだ。
「まあ、私達も生活があるしね。だけど、半分は修道院に寄付って事でどう? ストリートチルドレンだから、マリンはナツの後輩だろ。それくらいの義理はあるだろ?」
「おう、それでいいよ。ストリートチルドレンの先輩として半分はくれてやるよ」
「じゃあ、それで決まりだな」
おそらく、人身売買をする組織だから、拳銃などで武装しているはずだ。教会にいる関係者の全員が悪党な可能性が高い。これは教会全体の闇ビジネスだ。
私がぶっ潰してやる。
「おそらく、戦闘になるぞ。覚悟はいいか?」
「まあ、ぶっ潰すだけだぜ。地球の裏まで蹴り飛ばしてやるぜ」
そう言って、ナツは蹴りのポーズをした。
そして、私達は車に乗って教会へ向かって出発した。
冬子が必死に運転している。目指す先は人身売買をしている教会である。俺は助手席で足を組んで座っていた。冬子は正義感の強い所があり、子供や老人には弱いのだ。
なので、マリンを救おうと思ったのであろう。まあ、俺もタダ働きは嫌だから、悪党が稼いだ金はもちろん頂くつもりだ。世の中は綺麗事だけじゃ渡っていけない。金がないと人はダメになるのよ。俺もガキの頃は散々悪い事したしな。
冬子は半分を修道院に寄付したいと言っていたが、今回はその意見に乗っかるつもりだ。
その理由は2つある。
1つ目はマリンには缶詰の借りがあるし、2つ目は冬子にはいつも世話になっているからだ。それと、金も借りたりしているので、迷惑をかけてばかりだからだ。
さらに言うと、俺はワガママな性格だ。なので、コンビを組んでくる奴はいないからだ。冬子とは喧嘩もするけど、一緒にて楽しい友達だからな。だから、困った時はお互いに助け合うつもりだ。それから20分位たった頃だろうか、教会への1本道の入口が見えてきた。
すると、冬子は1度車を停めた。
「ナツ……。戦闘になるかもしれないから、武器の確認をしておけよ」
そう言って、冬子はリボルバー拳銃の動作を確認している。相手も人身売買している奴らだから、拳銃くらいは持っているはずだ。
俺もブーツの確認をして、ポケットの中に煙幕弾を入れた。煙幕弾は冬子と戦った時に役に立ったからな。まあ、何があるから分からないから持って行こう。でも、俺達って凄く強いから大丈夫だろうぜ。
10代の若さで、賞金首を10人以上も、捕まえている奴は中々いないからな。俺達は武器の確認後、冬子は再び車を走らせた。しばらくして、教会が見えて来た。そして、近くの森の中に車を停めた。おいおい、教会の前まで徒歩で行くつもりかよ。
冬子が小声で喋る。
「これから先は徒歩だ。エンジン音で気づかれる可能性がある」
「おお、なるほどね。ここなら、車も隠しておいても分からないだろうぜ」
俺はエンジン音まで気がまわらないぜ。冬子が車から降りながら言う。
「マリンがいた部屋まで行くぞ。場所は覚えているか?」
「ああ、トイレの近くの物置だったぜ。ほら、泊まっていた部屋から近いはずだぜ」
「あの部屋の近くか……。おそらく、ルビーが見つけられないって事は、大人が入れない場所に隠れているはずだ。多分、物置の屋根裏とか地下室に隠れていると思うよ」
冬子の観察力は鋭いと思った。そういえば、マリンは埃まみれだった気がする。たしかに、俺も物置部屋の天井裏と地下室までの発想はなかった。
俺は冬子に聞いた。
「マリンを見つけたら、どうする?」
「そうだね、マリンは安全な場所に隠れてもらおう」
「まあ、ガキは足手まといになるからな」
「それから、私達でルビーを捕まえればいい」
俺達は教会の裏側までコソコソ歩くと、昨日の泊まっていた宿舎が見えた。日頃の行いがいいのか、運がいいのか、宿舎の窓が空いている。これはチャンスだと思った。
まあ、ここから入れば問題なく忍び込める。
「ここの窓が開いているぜ。ルビーの奴も不用心だな」
「じゃあ、ここから行こう」
俺達は窓から廊下に忍び込んで、辺りを警戒してゆっくりと進む。
そして、泊まっていた部屋の前に着いた。そこから、マリンと会った部屋まで移動した。
俺は冬子に伝える。
「あっ、この部屋だわ。ここが物置部屋なはずだ」
「ここか、とりあえず入ってみるか……」
そう言うと、冬子はドアを開けて物置部屋に入った。
昨日は暗かったが、今日は光が差していて、部屋の中が明るく見えた。真ん中にはテーブルとイスがあった。四方の壁には、古びた棚やタンスのような物も置いてあった。
全てに埃が多く、ずっと使ってない印象だ。他にも、ガラクタが転がっており、ゴミ屋敷みたいな印象だ。
冬子が床を叩いて調べている。
「ふう、埃のない場所がところどころあるな。最近に人が歩いた証拠があるって事だ」
「そうなの?」
「ナツ、真実はひとつだけさ……」
そう言って、冬子は探偵小説の主人公のように1人で頷いている。
それから、床以外の埃のない場所を探しているようだった。
「ナツ、ここの棚の上に埃がない。そうなると、あそこの天井が怪しい」
「へぇー」
「多分、棚に登って天井を調べた可能性があるよ」
俺は天井を見ると、変哲のない普通の天井だった。ここに人が隠れられるとは思えないけどな。
「俺は何もないと思うけどね」
「いや、かすかに隙間があるよ。調べてみるね」
冬子は棚の上を器用に登って、屈みながら天井をいじっていた。すると、天井のパネルが外れた。おお、本当に天井裏にいるかもしれないな。
冬子は俺を見下ろして言った。
「ちょっと、天井裏を見てくる。誰か来ないか見張っておいてくれ」
「オッケー」
そして、天井の中に消えていった。しばらくして、マリンと冬子が天井から降りて来た。2人とも埃まみれだったので笑ってしまった。しかし、マリンは無事で生きていたのである。ふう、何とか間に合ったみたいだぜ。




